個性豊かな歌声と、ファドやフォークといった様々な音楽を自然に内包してきた小暮はなの軌跡が、ひとつの光へと結晶します。静けさの中に宿る強さと、言葉にならない感情をすくい上げる歌。そのすべてが、この一枚に結実しました。 小暮はなは、ギターを手に自身の言葉と旋律を紡いできたシンガー・ソングライター。これまで関島岳郎(栗コーダーカルテット)のプロデュースによる『鳥になる日』(2004年)、ポルトガル・ギター奏者の月本一史が手がけた『ジャカランダ』(ライス/2023年)などの作品を通じて、独自の音楽世界を深めてきました。本作では、2017年の『アズール』(ライスより2024年再発)を手がけた永田雅代が再びプロデュースを担当。上々颱風の紅龍やアイリッシュの奈加靖子、ラッパーの鬼など幅広いアーティストを手がけてきた彼女との音楽的な対話はさらに深化し、その響きはより自由に、よりしなやかに広がっています。 本作『LUZ〜ヒカリノバラード』には、長く歌い続けられてきた小暮スタンダード「初恋」をはじめ、ポルトガルでの日々の記憶を映し出した「Carioca de limao」、老いた母との時間を静かに見つめた「サネカズラ」、日常のかけがえのない瞬間を刻む「畦道」などが収録されています。いずれの楽曲も、時間や場所を越えて、聴く者の内面にそっと触れてきます。 さらに、ファドのクラシック「Julia Florista」や永田雅代が辣腕をふるい古典ファドを大胆にアレンジした「きみの家まで」、そして「Tudo isto e fado」に宿る記憶と自由の精神を、自らの声で新たに息づかせている点も本作の大きな聴きどころです。伝統への深い敬意と、自身の表現としての再解釈とが自然に結びついています。 伴奏には、プロデューサーの永田雅代が鍵盤奏者として全面的に参加。さらに複数の管楽器を操る関島岳郎、様々なシーンで長年活躍してきたヴァイオリニストの向島ゆり子、渋さ知らズでの活動でも知られる打楽器奏者の関根真理、そして古典ファドの啓蒙活動にも尽力する月本一史など、豪華な面々が名を連ねています。アクースティックを基調としながらも豊かな広がりを持つサウンドが幾層にも重なり、その中で小暮はなの歌は、ささやくように、しかし確かな存在感をもって響きます。恋、郷愁、喪失、そして祈り。さまざまな感情が静かに重なり合い、聴く者の心に余韻を残していきます。 やがてその歌は、“LUZ=光”となって広がっていきます。静けさの中に宿る強さを丁寧にすくい上げた本作は、小暮はなの現在地を示すと同時に、その歩みのひとつの到達点を感じさせる作品と言えるでしょう。 2026年、ライス・レコードが特に力を入れて紹介していきたい一枚が本作です。その魅力は、繰り返し聴くほどに、静かに、しかし確かに広がっていきます。