ナポリとロンドンを拠点に活動するユニット、ドライヴィング・ミセス・サタン(Driving Mrs. Satan)。2012年の結成以来、メタリカやアイアン・メイデン、スレイヤー、AC/DCといったヘヴィ・メタルの名曲を、アクースティックで親密なサウンドへと大胆に再構築するスタイルで注目を集めてきました。ヴォーカルのクラウディア・ソルヴィッロ(Claudia Sorvillo)を中心に、ジャズやフォークなど幅広いバックグラウンドを持つ音楽家たちによって結成されたこのユニットは、“メタルを静かに演奏する”という逆説的なアイディアを、単なる企画ものではない独自の表現へと昇華。繊細かつ芯のある歌声と、ジャコモ・ペディチーニ(Giacomo Pedicini)による緻密なプロダクションが生み出す独特の空気感は、ヨーロッパを中心に高い評価を獲得してきました。テレビ番組『TTT(Titel, Thesen, Temperamente)』への出演をきっかけに国際的な注目を集め、ヨーロッパ・ツアーも成功。さらにはモトリー・クルーのラジオ番組で取り上げられるなど、メタル側からも支持を集めています。なお日本ではライス・レコードより、2014年に『ポップスコッチ〜アクースティック・ヘヴィーメタル!』(PPR-23121)、2016年に『ディド・ユー・ミセス・ミー?〜アクースティック・ヘヴィーメタル2』(PPR-7093)をリリースし、そのユニークなコンセプトと洗練されたサウンドで確かな支持を得てきました。 本作『レイト・エヴァー・アフター』は、約10年の歳月を経て発表される3作目。タイトルが示すのは“遅れて訪れる幸福な結末”。過去の達成、現在の再構築、そして未来への予感が交錯する中で、バンドの歩みそのものを映し出した作品となっています。サウンドの核にあるのは、クラウディアの静謐で感情豊かなヴォーカルと、アコースティックを基調に多彩な楽器を重ねた緻密なアレンジ。怒りと脆さが共存し、かつての衝動はより深く成熟した表現へと姿を変えていきます。 収録曲はすべてカヴァーで構成されており、オジー・オズボーン「Breaking All the Rules」を皮切りに、モーターヘッド「Ace of Spades」、メタリカ「Creeping Death」「Motorbreath」、アイアン・メイデン「The Trooper」「Only the Good Die Young」、AC/DC「Let There Be Rock」、ブラック・サバス「Heaven and Hell」など、ヘヴィ・メタル/ハード・ロックを代表する名曲が並びます。モーターヘッドの荒々しい疾走感、メタリカ初期作品の張り詰めた緊張感、アイアン・メイデン特有の劇的な旋律美、ブラック・サバスの重厚なダークネスまで、それぞれ異なる個性を持つ楽曲群を、彼らはアクースティック主体のサウンドへと大胆に置き換えています。とりわけ「Ace of Spades」の乾いた疾走感や、「The Trooper」に漂う哀愁、「Heaven and Hell」の陰影に富んだ空気感などは、原曲とは異なる角度からその魅力を浮かび上がらせることに成功。原曲の攻撃性やスピード感を単に弱めるのではなく、構造を解体し、静謐で内省的な響きへと変換することで、楽曲そのものが持つ感情の核を丁寧に掘り起こしています。アクースティック・ギターやコントラバス、ピアノ、アコーディオン、管楽器などを用いたアレンジも秀逸で、ヘヴィ・メタルの楽曲に潜んでいた旋律美や叙情性を改めて浮かび上がらせています。 長い沈黙を経て辿り着いた新たな境地。再解釈という枠を越え、バンドのアイデンティティそのものを深化させた一枚です。
トラックリスト 1. Breaking All The Rules 2. Ace Of Spades 3. Creeping Death 4. The Trooper 5. Motorbreath 6. Let There Be Rock 7. Heaven And Hell 8. Only The Good Die Young