イングランド南西部コーンウォールを拠点に活動する女性フォーク・シンガー／ソングライター／マルチインストゥルメンタリスト／学者のアンジェリーン・モリスンが、英国の名門フォーク・レーベルTopic Recordsより新作を発表することになりました。アフリカ系の出自であり学者でもある彼女は、英国の歴史において長らく無視されてきた“英国における黒人のアンデンティティの問題”を大学在学時代より研究。その成果を元に制作されたのが本作となります。プロデュースは“ＵＫフォークのプリンセス”ことイライザ・カーシーが担当し、さらにイライザの父で英国伝統フォーク界を代表するギタリスト／シンガーのマーティン・カーシーが１曲で参加。是非ご注目ください。
本作の主役であるアンジェリーン・モリスンはイギリス第二の大都市とも言われるバーミンガム出身。しかし16歳の時にノース・コンウォール海岸沿いの町：パドストゥで行われている民俗行事〈’オビー’・オス・フェスティバル〉に参加したことにより同地の伝統文化に魅せられ、やがてコンウォールへと転居しています。その後は同地芸術教育の名門ファルマス大学に進学。音楽／視覚芸術／文学を研究し、博士号を修得しました。そして現在も、20世紀の批判理論や20世紀の芸術運動の歴史、50年代から60年代における英米ポピュラー音楽の研究などに日々勤しんでいるとのこと。中でも〈人種とアイデンティティの問題〉、〈英国の民間伝承における有色人種の位置づけ〉については学術論文を多く残しており、それが今回の作品制作へと繋がりました。
学術的な研究のほか、アーティストとしては60年代のブラック・ミュージック（ソウル／ドゥーワップなど）とフォークを融合させたソウル・デュオ：The Mighty Sceptresのメンバーとして活動。2012年にはスティーヴン・ソダーバーグ監督映画作品のサウンドトラックや、英国TVドラマ・シリーズの音楽を担当しています。また、2013年にはソロ・アルバム“Are You Ready Cat?”もリリース。同作品はiTunes Jazz チャートで14位を記録し、iTunesアルバム・オヴ・ザ・ウィークにも選出されました。ソロ活動における音楽性としては、サイケデリックとフォークロア要素の強いダークな作風がメインとなっていましたが、今回は英国の伝統的なフォーク・サウンドをベースに、英国の過去における〈秘された黒人たちの歴史物語〉をじっくりと聴かせてくれます。
オートハープ、ダブル・ベースを奏でつつ、美しい声を聴かせるアンジェリーン。そんな彼女を支える今回のメンバーは、コーエン・ブレイスウェイト・キルコイン（アングロ・コンサーティーナ／メロディオン／ヴォーカル）、クラーク・カミッレーリ（ギター／バンジョウ／ヴォーカル）、ハミルトン・グロス（ヴァイオリン／ヴォーカル）、ロージー・クロウ（ピアノ／ヴォーカル）、アレックス・ニールソン（ドラムズ／ヴォーカル）、そして皆様お馴染みのイライザ・カーシー（ヴァイオリン／フィドルスティック／ヴォーカル）。オートハープの煌びやかで繊細な音色や流れるようなヴァイオリン演奏にのせて、歌手／声楽教師のフランキー・アームストロングが提唱する〈人間の自然な声の美しさ〉よりインスパイアを受けた、非常に美しい歌声を聴かせてくれます。また、クロージング・トラックにはマーティン・カーシーが参加。終盤に心に深く響く言葉を、その味わい深い声で残しています。UKフォーク・ファンの方は是非こちらの方もお楽しみに！
●日本語解説／帯付き
トラックリスト
1. Interlude - Some Terrible Habits
2. Unknown African Boy (d.1830)
3. Black John
4. Interlude - These Little Ones
5. The Beautiful Spotted Black Boy
6. Mad-Haired Moll O'Bedlam
7. Interlude - Nobody Round Here Likes It
8. The Hand Of Fanny Johnson
9. Cinnamon Water
10. Hide Yourself
11. Cruel Mother Country
12. Interlude - In The Village
13. The Flames They Do Grow High
14. Interlude - Need Not Apply
15. Go Home
16. Slave No More
2022年10月9日発売
ANGELINE MORRISON / THE SORROW SONGS (FOLK SONGS OF BLACK BRITISH EXPERIENCE)
