フランス出身の超実力派ジプシー・バンド:ブラッチ(1972〜2015)は、ジャンゴ・ラインハルトやロックなどから影響を受けたフランス育ちのアルメニア人ギター/ブズーキ奏者:ダンとフリージャズ・シーンで活躍していたヴァイオリニスト:ブルーノの2名を中心に、アコーディオン、クラリネット、ベースを加えた5人によって1972年に結成。デビュー以降はベスト盤やライヴ盤なども含めた約20作ほどのアルバムをリリースし、フランスを中心とするヨーロッパ地域でパフォーマンスを展開していました。今回はそんな彼らが豪華ゲストを迎えて1998年にリリースした、バンド結成20周年を記念する名作『ポケットの中には何もない(Rien Dans Les Poches)』をご紹介いたします。 活動開始当初は、アラブ音楽や南アフリカの音楽の要素を取り入れたグローバルなミクスチャー・サウンドをその持ち味としていたブラッチ。しかし90年代中盤あたりからは、ヨーロッパ周辺の音楽に焦点をあて、その方向性を大幅に変更しました。そんなスタイル変更後にリリースされた本作では、ハンガリーのウェディング・ソングやウクライナのイディッシュ・ソング、ギリシャのチフテテリ、モルドバのダンス音楽、ジプシー・スウィング・ジャズなど様々なタイプの要素を含んだジプシー音楽を披露しています。 本作はバンド結成20周年記念アルバムという事で、ゲストの方も超豪華な顔ぶれ。フランス・サン・ドニ生まれのマヌーシュ・スウィング・ギターの名手:アンジェロ・ドゥバール(1962- )や、イランの伝統楽器トンバクのマスター:ケイヴァン・チェミラニ、ヴォーカルのミツウが持つ強烈な個性が人気のハンガリー・ジプシー・バンド:アンド・ドローム、ブルガリアに伝わる擦弦楽器ガドゥルカを演奏するスタニスラフなど、ヴァラエティ豊かな面々が顔を揃えました。また、ゴラン・ブレゴヴィッチが音楽を担当したことでも話題になった1995年公開映画『アンダーグラウンド』でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞したエミール・クストリッツァ監督の88年作品『ジプシーの時』(こちらもブレゴヴィッチが音楽を担当)の主題歌として人気を博した「エデルレズィ」のカヴァーも収録しています。 リリースから26年が経った今日でも陳腐化することなく、強烈な魅力を放ち続ける不朽の名作。ジプシー・ミュージック・ファンの方のみならず、全てのワールド・ミュージック・ファンの方に自信を持ってオススメできる一枚です!
●簡易日本語解説付き
トラックリスト 1. Neda 2. Yossik 3. Hassapo Servico 4. Brunosaure 5. Rien Dans Les Poches 6. Johnny 7. Major to Minor 8. Eghnatios Tetrakossi Exi 9. Victors Doina 10. Ederlezi 11. Hanane 12. Neuf Brouille 13. Tekez/Skopos Tis Gaidas 14. Choubi