即興が挑むモンク! セロニアス・モンク(191782)の名曲を、現代ヨーロッパ・ジャズの俊英トリオが再構築しました。ギターのジェフ・グッドマン(Geoff Goodman)、テナー・サックスのマテュー・ボルドナヴ(Matthieu Bordenave)、バス・クラリネットのルディ・マハル(Rudi Mahall)による作品です。 ベースもドラムも置かない大胆な編成により、音の“余白”がひろがり、3人はその空間を綿密なカウンターポイントと発想豊かなインタープレイで満たしていきます。ギターは低音弦や和音の分散でボトムを支え、テナーはリリカルなラインから鋭利なブロウまで振れ幅広く、バス・クラリネットは豊潤な低域にキイノイズやフラッターなどの拡張奏法を交えて、打楽器的な推進力すら生み出します。つまり“低音も打楽器性も不在ではない”という逆説を、創意と技巧で証明してみせるのです。 レパートリは「Monk’s Dream」「Pannonica」「Four in One」「Off Minor」「Crepescule with Nellie」などの名曲に加え、「Introspection Locomotive」の連結的展開や、スタンダード「I’m Confessin’ That I Love You」の挿入でコントラストを創出。さらに「Pharmaceutical Secrets」「Did Someone Say Grappa?」「Anaesthesia Stage 7」といったオリジナルを織り込み、モンクの“個性的な和声・旋律・リズム概念”と呼応しながら、現在進行形の語法へと接続しています。伝統素材の美しさを損なわず、あえて楽器を外縁まで押し広げるアプローチは、ユーモアとスウィング感を失わない点でもモンクの精神を見事に継承しています。 各人の個性も鮮明です。グッドマンは作曲と即興を自在に往還しながら、ギター1本で和声・低音・パルスを巧みに束ねる職人的手つきが光ります。ボルドナヴは陰影豊かな音色と構築性で、主旋律の“言い換え”を緻密に重ね、マハルは重心の低いトーンから奔放な語り口まで自在に横断。三者三様の語彙が、モンクの奇妙で美しいメロディを新たな角度から照射します。 ドイツの老舗ジャズ誌〈JazzZeitung〉も「この異例のトリオ編成はコンサートのハイライトとなった」と高評価。自由奔放でありながら知的、実験的でありながらもジャズの核心を突く…まさにモンク再解釈の最前線を体感できる1枚です。モンク・ファンはもちろん、管×管×ギターという室内楽的アンサンブルの妙味を求める方、現代ヨーロッパ・ジャズの創造力を知りたい方にも強くおすすめします。
トラックリスト 1. Monk's Dream 2. Introspection/Locomotive 3. Pannonica 4. Pharmaceutical Secrets 5. Four In One 6. I'm Confessin' That I Love You 7. Anaesthesia Stage 7 8. Off Minor 9. Did Someone Say Grappa? 10. Crepescule With Nellie