2025年に生誕100年を迎えるポルトガル音楽の巨匠カルロス・パレーデス(19252004)。ギターラ・ポルトゥゲーザ(ポルトガル・ギター)の名手として知られた彼の音楽に、あえてクラシック・ギターという別の楽器で挑んだのが、本作『ヴィジータ〜カルロス・パレーデスとの対話』(原題:Visita: Dilogos com Carlos Paredes)です。演奏するのは、ジョゼー・ペイショート(1960年リスボン生まれ)とヌーノ・シントローン(1980年生まれ)のふたり。世代を超えてポルトガル音楽を支えるギタリストたちです。 ペイショートはクラシック・ギターの素養を基に、ジャズや即興のエッセンスを取り込みながら、ポルトガル音楽の表現領域を広げてきました。1980年代にはマドレデウスの初期メンバーとして活動し、透明感と詩情に満ちたアンサンブルで国際的な成功を収めています。近年はリスボン・ストリング・トリオを率い、現代音楽と民俗音楽の橋渡しを続け、作曲家・プロデューサーとしても高く評価されています。 一方のシントローンは、ギタリストとしての卓越した技術に加え、舞台や映像作品のための音楽を数多く手がける多才な作曲家です。これまでに50本以上のサウンドトラックを制作し、ロック、ジャズ、伝統音楽を自在に融合させてきました。テレーザ・サルゲイロ(元マドレデウス)のツアーにも参加し、創造的でダイナミックなパフォーマンスによって高い評価を得ています。 ペイショートとシントローンはデュオ《Combinatorium》として活動を始め、2023年に共作アルバム『Fragmentos Imaginarios』を発表しました。本作はその延長線上にあり、パレーデスの音楽世界をクラシック・ギターとエレクトリック・ギターの響きで再解釈しています。アルバムは「VISITAS(訪問)」と「DILOGOS(対話)」の二部構成で、前半では「Verdes Anos」「Canto de Embalar」などパレーデスの代表曲を、原曲の旋律美を尊重しながら緻密な和声と独自のリズム感で再構築。後半では彼の創造性に触発されたオリジナル曲を展開し、静謐と躍動が交差する音響空間を描き出しています。 ギターラの響きを直接なぞるのではなく、その精神をクラシック・ギターの表現力で受け継ぐこと。それが本作の核心です。パレーデスの詩的で革新的な作品群を21世紀の感性で照らし出したこのアルバムは、ファドの伝統を超え、ポルトガル音楽の未来を見据える渾身のオマージュといえるでしょう。
●日本語解説/帯付き
トラックリスト 1. Verdes Anos 2. Marionetas 3. Canto de Embalar 4. Sede e Morte 5. Mudar de Vida-Musica de Fundo 6. Canto de Alcipe 7. Pela Noite 8. Heranca Palaciana 9. Amanhecer 10. Variacoes-Visitas
2025年11月23日発売 JOSE PEIXOTO / NUNO CINTRAO / VISITA - DIALOGOS COM CARLOS PAREDES