ファドのイメージが強いポルトガル音楽ですが、実際に多くの国民に親しまれているのは、よりポピュラーで日常に寄り添う音楽だったりします。今回は、そんな同国を代表するも昨年惜しくも亡くなってしまった大歌手マルコ・パウロの追悼盤をご紹介します。 マルコ・パウロ(本名:Joo Simo da Silva 19452024)は、1970年代から2020年代まで、ポルトガルの音楽界とテレビ界で広く親しまれてきた国民的スターのひとり。1978年に「Ningum, Ningum/Cano Proibida」で初のゴールドディスクを獲得すると、1980年には代表曲「Eu Tenho Dois Amores」が15万枚超のセールスを記録し、トリプル・ゴールドに輝きました。その後も「Anita」「Morena, Morenita」など多数のヒット曲を生み出し、1984年のアルバム『Romance』ではプラチナディスクを受賞しています。1990年代には、ブラジルのエリマール・サントスのカヴァー「Taras e Manias」で再び人気を博し、自身の名曲を冠したテレビ番組『Eu Tenho Dois Amores』では司会も務め、視聴率面でも大きな成功を収めました。1996年には癌の手術を受けつつも復帰を果たし、以降も精力的に活動を続けました。2014年には〈International Portuguese Music Awards〉にて功労賞を受賞。2024年10月、肝臓と肺の癌により79歳で逝去するまで、その存在は常にポルトガル大衆の心とともにありました。 本作『マラヴィリョーゾ・コラソーン』は、そんな彼が遺した愛と人生の歌の数々を味わえる追悼ベスト盤です。アルバムの冒頭を飾るのは、表題曲であり彼の名を広く知らしめた1991年の大ヒット曲「Maravilhoso Corao」。スペインの歌手ラファエルの楽曲をベースに、ポルトガル語で情熱的に歌い上げたこの曲は、彼の代表作として長く愛されてきました。そのほか、往年の名曲「Eu Tenho Dois Amores」や「Cano Proibida」などディスコ・ブームの影響を色濃く感じさせるナンバーも収録。彼ならではの温かくもドラマティックな歌声が、アルバム全体を彩ります。 印象的なヘアスタイルや整えられた眉、聖母ファティマへの篤い信仰など、個性的なパーソナリティでも知られたマルコ・パウロ。私生活について語ることは少なかったものの、母親や親しい男性友人たちとの絆を大切にしていたと伝えられています。彼の音楽と人生が詰まったこのアルバムを通じて、ポルトガル大衆歌謡の魅力とその深い情感を改めて感じていただけるはずです。
トラックリスト 1. Maravilhoso Corao 2. Eu Tenho Dois Amores 3. Cano Proibida 4. Anita 5. Sempre Que Brilha O Sol 6. Taras E Manias 7. Joana 8. Morena, Morenita 9. Mulher Sentimental 10. Balada A Minha Me 11. Mais E Mais Amor 12. Ningum, Ningum 13. O Fim Do Mundo 14. Nina 15. O Comboio Da Meia Noite 16. Na Hora Do Adeus (No Digas Nada) 17. Quem Vier Por Bem 18. Sou To Feliz 19. To Amantes Que Ns Fomos 20. Nossa Senhora