マリの伝統を継ぎ、女性としての声をまっすぐに届けるグリオーの新星、カンク・クヤテの初ソロ・アルバムが国内流通仕様で登場することになりました。 カンク・クヤテは1993年、マリでも屈指のグリオー一家として知られるクヤテ家に生まれました。10歳から本格的に音楽教育を受け始めた彼女の母方には、“老ライオン”の異名で知られた偉大なンゴーニ奏者バズマナ・シソコ(18901987)が、そして父方には祖父ジェリ・ムスタファ・クヤテやその息子バセク・クヤテ(1966 )らが名を連ねています。こうした血筋に裏打ちされた確かな歌唱力を持ちながら、ジャズ、ブルース、ラップ、レゲエなど多様なジャンルのアーティストとの共演経験も豊富で、柔軟な表現力と探究心を併せ持つアーティストとして注目を集めています。そして2013年には、デーモン・アルバーンやブライアン・イーノ率いる〈アフリカ・エクスプレス〉の録音プロジェクト『Maison des Jeunes』に参加し、ソンゴイ・ブルースとともにロンドンでのリリース・ライヴにも出演しました。 本作『ン・ダリラ』は、カンク・クヤテが自身のルーツに立ち返り、哲学的かつ社会的なメッセージを込めた歌詞とともに、マリの音楽遺産を現代に再解釈した意欲作です。歌詞はマンディング文化に根ざした道徳観や人生哲学に基づいており、女性の権利や隣人とのふるまいといった社会的テーマを率直に語りかけています。録音は、バマコでのわずか3日間のセッションで行われ、即興的に生み出された楽曲が多くを占めています。演奏にはカンクが結成したグループ《レ・エトワール・ド・ガラナ》が参加し、バセク・クヤテの息子で《トリオ・ダ・カリ》のメンバーでもあるンゴーニ・バ奏者のマドゥ・クヤテ、伝説的ギタリストであるババ・サラのバンドで活躍したパーカッショニスト、ラシーヌ・クヤテらが名を連ねています。さらに、コート・ジボワール出身でサリフ・ケイタ、ウム・サンガレ、ヴィユー・ファルカ・トゥーレらとも活動してきたドラマー、ティボー・セリ、ゲストとしてバセク・クヤテ本人やギネアのコラ奏者セフディ・クヤテも参加し、深く豊かな音世界を作り上げました。 そしてアルバム・タイトル曲「N'Darila」ほか全12曲を収録した本作では、全編を通してアクースティックな楽器と自然な音色を大切にし、カンクの個性的な声と精神性を最大限に引き出す構成となっています。マリの土壌と精神性、ンゴーニを始めとする弦楽器のブルージーかつスリリングな演奏、そしてカンク・クヤテという新たな才能が響き合う、注目の一枚です。伝統と現代、女性の声と社会の声が重なり合う、魂を揺さぶる音楽の旅を、ぜひ体感してください。
●日本語解説/帯付き
トラックリスト 1. Balla 2. Gnanadje 3. On dit non 4. Deni Koungo 5. Blanko 6. Den Kelen 7. Na fa te Djougouyala 8. Doke 9. Gnani 10. N'Darila 11. Tien Kagni 12. Maria Lulu