9月30日(金)

 末日の今日は、いつもの通り、支払いなど、経理仕事に追われる一日。せっかく入金があっても、支払いを済ませてしまったら口座がカラッポになってしまうのは、いつも通り。一ヶ月で一番ブルーな気分になるのがこの日です。しかし、なんでこんなに儲からないんだろう…。

 夜は音楽評論家の蒲田耕二さんと会食。というか、飲み会。いつも通り、楽しく飲ませてもらった。蒲田さん、何か意欲的な計画があるようで…。これについては決定してからご報告することにしよう。

 

9月29日(木)

 今日はリスト原稿。今週のメインはアルジェリア出身の若手女性シンガー・ソングライター、スアド・マシの新作と、トラーマから出るナソーン・ズンビーの新作だ。ナソーン・ズンビーはぼくはまだ聞いていないが、スアド・マシのほうは英ラスから送られてきたサンプル盤を何度か聞いた。けっこう面白い内容で、ぼくは気に入っている。アラブ音楽ファンはもちろん、はじめてアラブ音楽を聞く人にも楽しんでもらえそうな一枚。さらに汎地中海音楽ファンにも興味深い内容かも。11月6日には店頭に並ぶ予定なので、ぜひチェックしていただきたい。

 そんなスアド・マシの新作とともに、今日じっくり楽しませてもらったのが、テレサ・テンのライフ・レコード時代の音源だ。ライフ・レコードはテレサが同レーベルに残したオリジナル・アルバム全35枚を、なんとオリジナルのスタイルのままリリースする予定のようで、とりあえず最初の11枚が送られてきたからだ。オリジナルのLPと比べると、ジャケットが微妙に違っていたり、ボーナス・トラックが加えられていたりと、完全にオリジナルと同じではない。でも、リストを見ると、ぼくなんか見たことのないアルバムがあるし、全部発売されたら新しい発見がかなりありそうだ。
 テレサがライフ専属になったのは18歳のとき。だから歌声はまだまだウイウイしい。それがだんだんと成熟して、大人の歌手としてのスケールの大きな歌声を完成させるのが、ライフ時代のテレサだ。そんな変遷を追いながら、今日だけで最初の11枚を、全部聞いてしまった。テレサの歌声がどの時代のものも耳に優しく、全然疲れないからだ。こんなにたくさんのアルバムを続けて聞けるのは、テレサ・テンの音楽だけだと思う。
 この11枚も来月には店頭に並ぶ予定。残りが登場したときには、またお知らせしよう。楽しみにしていてください。

 

9月28日(水)

 今日も昼間は原稿書き。短い解説を2本書きあげ、さらにあと2枚分の解説を途中まで書いた。残りは明日と明後日で仕上げるようにしよう。月末はいつも入荷が多いので、書かないといけない解説原稿も当然多くなる。今月もあと2日。忙しくなりそうだ。

 夜はタワー・レコードの小樋山さんと篠原さんに久しぶりに会って、韓国料理を食べながら打ち合わせ。最近のワールドの売り場状況について、いろいろと情報交換した。ワールドに限らず、爆発的に売れている洋楽のアルバムは少ない。新しいスターが登場していない点は、どれも同じだ。そんな中でどうやってワールドをプロモートしてゆくか。難しい作業だけど、コツコツやってゆくしかないのだろう。
 そんなミーティングの途中から、メタ・カンパニーの内山さんが加わって、後半は楽しい飲み会に。内山さんには、いつも仕事でお世話になっているのに、最近はあまり会う機会がない。たまにはこうして会って交流を深めるのもいいものだ。

 

9月27日(火)

 今日こそ、朝から原稿書きに集中。午後3時までに短い原稿を3本書きあげた。その後は、昨日の続きの打ち合わせを少し。でも、こちらはなんとか早急に解決。これで雑用仕事は本当におしまいになりそうだ。

 ブラジルからメールがあって、10月中旬にパリでショーロのフェスティヴァルがあることを知る。リオの実力派が集まった、豪華メンバーによる公演になるようだ。パリにおけるショーロと言うと、まず思い出すのがピシンギーニャも参加したオス・オイト・バトゥータスのパリ公演だが(1922年!!)、今回の公演はそんなバトゥータスの再来と言われているとか(フランス人がそんなことを覚えているわけないので、きっと出演するブラジル人たちが言っているのだろう)。そんなことを言われると、ぼくだって見てみたくなる。ちょうどポルトガルを訪れる直前なので、少し早めに出発すれば、見ることができるかも。なんとかスケジュールを調整してみよう。

 

9月26日(月)

 今日こそ解説原稿に集中するはずだったが、朝に電話があって、銀行関係の打ち合わせが入ってしまうことに。これが思った以上にややこしくて、慌しい一日になってしまった。せっかく本格的な仕事に没頭するつもりで気合が入っていたのに…。こんな風に予定が変わってしまうと、どうしてもフラストレーションがたまる。スポーツ・ジムで汗をかいて忘れようとしたが、そんな日に限ってジムはお休み。なんもとツイてない一日だ。

 

9月25日(日)

 さすがに疲れが出たので、今日は完全休養。ゆっくり体を休めて、明日からの仕事に備えることにした。午前中は掃除や洗濯、そして食料の買出し。午後はサッカーと相撲、夜にはマラソンをテレビで楽しむ。お昼にはスポーツ・ジムまで行っちゃって、優雅な休みの一日だ。

 またマラソンの話で恐縮だが、野口選手の成長ぶりは本当にすばらしかった。気温が20度まで上がったのに2時間19分12秒はスゴい。もし例年通り10度くらいだったら、タイムは1分半くらい早かっただろう。だとしたら、ヌデレバを抜いて世界歴代2位だ。いや、20度にまで気温が上がったら、あのラドクリフだって19分台で走れなかったかもしれない。
 ラドクリフは強い。でも、それは気候などの条件が揃って、しかも終始自分のペースで走れたときだけだ。条件が揃わなかったときのモロさは、オリンピックで実証されている。きっと今日みたいな暑さだったら、記録なんて狙わなかった可能性が高い。でも、野口選手は違う。予想外の暑さと、しかも外国のマラソンでは異例のテレビ放送まである中(映し出されているのは野口選手だけ!)、絶対に記録を出さないと、というプレッシャーに耐えて勝ち取った日本新だから、価値がある。試合前の調整に最低4ヶ月かかるマラソン選手の場合、勝ち負けを度外視して、記録の狙うために走れる機会なんて、そうはない。それをしっかりモノにできた野口選手は、すばらしい。

 

9月24日(土)

 今日も調べものの続き。とにかく集中して、その音楽のことだけを考えて一日を過ごした。音楽なんて、アレコレ分散して聞いたくらいのほうがわかるときもあるのだが、ライスの復刻シリーズの仕事だけはそうはゆかない。集中して聞きまくり、調べまくることでしか出来ない仕事も、やっぱりある。そんな仕事をしているときは、とても楽しい。

 

9月23日(金)

 書かないといけない細かい解説原稿はたまっているのだが、そんな仕事は来週に回して、この連休は調べ物に徹することにした。内容はいまのところ秘密。近いうちに登場するライスの復刻シリーズの仕事ですとだけ、いまはお伝えしておこう。とにかく資料を読み漁って、音を聞きまくる一日。こういう仕事に集中できるなんて、本当に久しぶりだ。

 

9月22日(木)

 明日からまた連休。というわけで、普段は金曜日にやる雑務仕事を今日やることになった。相変わらずメールのやり取りは多いし、細かい仕事も多い。午前中と夜には1本ずつ打ち合わせも。でも、明日から3連休だ。こういう雑務仕事からは解放される。

 

9月21日(水)

 今朝の新聞でNHKの件、じっくり読んでいたら、ますますイヤな気分になってきた。これはやっぱり、かなりの末期症状のようだ。だいたい、大切なお客様に向かって簡易裁判所を通じて督促状を送るなんて、マトモなアタマの持つ主が考えることじゃない。きっと受信料というのは、大事なお客様からいただくお金ではなく、税金と同次元のものとして考えているということだろう。そんなイバッた態度を取られたら、支払い拒否の人たちは、ますます支払う気がなくなるに違いない。二週間以内に異議申し立てを出来るらしいらしいし、それで折り合いがつかなければ裁判もOKのはずだ。それなら法廷でとことん争おうじゃないかという気分になってしまった人も多いのではないだろうか。

 今日も午後から税理関係の打ち合わせ。終ったら夕方になってしまった。でも、明日の朝にもう一度打ち合わせをしたら、この仕事はだいたい片がつく感じになってきたから、少し嬉しい。そしたら、たまっている本格的な仕事に取り組めそうだ。週末は、頑張って自分の仕事を進めることにしよう。

 

9月20日(火)

 朝から書きはじめた解説原稿が仕上がったのが、やっと午後3時。普通なら午前中には仕上がっていないとおかしい原稿だったが、やっぱりまだ仕事のペースを取り戻していないようだ。こういうときは焦っても仕方がない。毎日毎日、コツコツと継続して原稿書きの仕事をして、勘を取り戻すしかない。

 経理仕事は全部片付いたつもりだったが、いくつか問題が合ったようで、夕方は税理士さんと打ち合わせ。すっかり疲れてしまった。しかも終ったところであまりに空腹を感じたので、珍しくひとりで外食することに。
 誰かと一緒ならともかく、ぼくがひとりで外食するのは非常に珍しい。だいたい、ひとりで食堂やレストランに入るのが大の苦手。テーブル席にひとりで座る勇気がないくらいだ。しかもファースト・フードのチェーン店なんかでは絶対に食べる気がしない。そんなぼくが入れるのは、カウンターのある居酒屋さんやお寿司屋さんくらいだ。そうなると当然、飲み物も頼むことになる。飲んでしまうと、なかなか止まらない。つい飲みすぎてしまうのが目に見えているから、外では出来るだけ食事をしない。
 今日も結局、7時にお店に入って、出たのが9時過ぎ。食事だけのはずが、2時間も飲んだくれてしまった。この後、2件目に行かなかっただけ、まだマシとも言えるが…。

 帰宅してニュースを見ていたら、NHKの<新生プラン>というのを紹介していたので、興味を持ってしまった。なんでも、受信料不払いの人に簡易裁判所を通じて督促状を出すというお話だ。しかし、こんなこと、本当にするのだろうか。
 NHKの受信料なんて、それほど高いものではない。なのに不払いしている人がたくさんいるのは、NHKの番組に対してなんらか不満があり、その不満をNHKにいくら言っても聞いてくれないから、仕方なく不払いという行動に出ている人も多いのだと思われる。それを、裁判所を通じて督促状なんてことになったら、裁判で支払いの是非を争うということも、可能になってしまうのだろうか。だとしたら、面白いことになったものだ。やっとNHKに対して、ちゃんと文句を言える場ができるわけだから。
 郵便局を民営化しようといういまの時代に、NHKが特殊法人のままでいる必要がどこまであるのか、というのが、もっとも根本的な問題だろうが、もしもその必要があると言うなら、NHKはどうような立場で放送を作ってゆくべきなのか、見る人たちの意見をしっかり聞かないといけない。何があっても金を取ろうというのであれば、なおさらだ。
 金を払っている人間の意見のすべてを聞くことは不可能だろうが、せめて番組の制作に口出しした政治家と、それを聞いてしまった制作者には、なんらかの実刑が下るような法律でも作っておかないと、<自主自律>なんて言葉もむなしく響いてしまう。

 

9月19日(月)

 雑務仕事も最終段階。午前中にやっとメドがたったので、午後は本格的な仕事に取り組む前に部屋の掃除をすることにした。8月末のシンガポール旅行以来、自宅の掃除はまったくやっていない。これじゃフレッシュな気分で仕事に取り組めない。特に風呂場と台所の汚れが気になったので、今日はかなり入念に掃除をした。

 掃除をしながら気になったのが、未整理のCDや本がたくさんたまっていること。棚から引っ張り出したら、ちゃんと戻せばいいのだが、こうも次々と色々な仕事をしていると、出したままになってしまった本やCDがどうしても増えてしまう。そうじゃなくても、書庫はまだちゃんと整理がついておらず、多くの本が棚からはみ出してままになっているのに…。冷房もない書庫をクソ暑い夏に整理するのはタイヘンなので、涼しくなってからまとめてやろうなんて思っていたら、この大混乱だ。この秋は、絶対に片づけを徹底することにしよう。

 本格的な仕事にほとんど手をつけられない状態で連休が終ってしまったが、雑用はなんとか終らせたし、身の回りも少しはキレイになったので、仕事をする環境だけは整えることができた。さあ、明日からは本格的な仕事がスタートする。まずは早起きして、解説原稿だ。

 

9月18日(日)

 今日も事務処理仕事がたんまり。本当は書かないといけない解説原稿もたまっているのだが、そっちまでなかなか手が回らない。なんとかこの連休中に雑用を全部終らせて、スッキリした気分で来週を迎えたいところだが…。

 夕方、そんな事務処理仕事に疲れたので、気分転換のために、近くのスポーツ・ジムに行ってきた。20分ほど走った後、ストレッチとサウナで汗をたっぷり流す。こんな気持ちよさは久しぶりだ。そして夜は中秋の名月を堪能。すばらしくマン丸のお月様を眺めながら飲むビールは、やっぱりウマい。やっと連休らしい、ゆったりした気分を満喫できた。

 なんて思っていたら、鳩山が民主党の幹事長に就任したとニュースで知ってビックリ。さらに前原さんは、小沢一郎に代表代行を依頼しているのだかとか…。一方の菅さんは、国対委員長を打診されたけど断ったらしい。旧民社党や社会党は中核には入れなかったようだけど、なんだかスッキリしない人事。これで本当に小泉さんに勝てると思っているのだろうか。

 

9月17日(土)

 昨日に続いて、今日も朝から経理仕事。税理士さんに2か月分の帳簿をチェックしてもらった。それが終った後も、やらないといけない経理の雑用がたんまり。午後いっぱい、自宅で作業を続ける。ちなみに今日わかったことだが、今年は昨年より少しはマシかと思っていたのに、上半期の業績は昨年とほぼ同じなんだとか…。これにはがっかり。もう少し頑張らないと…。

 民主党の新代表が前原誠司に決まった。43歳と、ぼくより若い党首が登場したのははじめてだ。確かに選挙の惨敗の後、党を一新させるのには若手の力が必要だ。自民党以上に改革を訴えないといけない民主党は、小泉さんが自民党をぶち壊してしまった以上に、党内をシェイプアップしてゆかないといけない。菅さんにそこまで求めるのは無理があるだろう。
 ただ、そんなときに、もし負けたら自身が切り捨てられる可能性があるにも関わらず選挙に出た菅さんは、勇気があると思う。鳩山と小沢が高みの見物を決め込んだのは、自分が改革の矢面に立たされるのがイヤだったからだ。前原さんが民主党を改造するに当たってどの人間を切るべきか、この選挙を見ただけでもわかる。

 前から書こうと思いつつ忘れていたことがひとつ。一部で話題になっているセネガルのベテラン男性歌手チョーン・セックの新作だが、ぼく自身は4〜5ヶ月前からサンプル盤を聞いていて、とても気に入っているのだけど、当社での配給は残念ながらできそうもない。というのも、このアルバムをイギリスで発売したスターンズ社が持っているのは、アメリカとイギリスにおける配給の権利だけ。他の国は仏カントスが持っていて、こちらの日本配給権を持っているのは当社ではなく、オルターポップさんだからだ。だから、オルターさんが出さない限り、日本盤は出ません。日本盤が出ないのが当社のせいだと思われると困るので、いちおうお伝えしておきます。

 

9月16日(金)

 朝は金曜恒例の雑用仕事。そして午後は事務所で帳簿整理を終らせた。先月から今月にかけて、外国旅行やティナリウェンの来日などもあって、経理仕事や多くの雑用を後回しにしてきたのだが、それを全部やろうと思うと、やっぱりタイヘンなことになる。この連休はその処理に追われそうだ。こちらのほうも早くペースを戻さないと。

 深夜、リラックスしようと思って、スブラクシュミのアルバムを引っ張り出す。来月当社で配給することになった『ライヴ・アット・カーネギー・ホール』(ライス SIR-3803)などを、久しぶりにゆっくり楽しんだ。ライヴ盤2枚組は、LP時代から聞いていたが、まさか自分の会社でリリースできることになるなんて。感無量だ。彼女の簡単な伝記本もお借りできたので、今月末から来月にかけて、南インドの音楽をゆっくり勉強させてもらうことにしよう。

 

9月15日(木)

 午前中に書きもの仕事を少しやった後、午後は久しぶりに打ち合わせで外出。夜は、ティナリウェンの仕事で知り合ったアトスの渡辺さんといきつけのやきとり屋さんで焼酎を楽しんだ。

 途中、タワー・レコード新宿店を覗いたら、ちょうどフェラ・クティの初期録音3枚組が並んでいたので、さっそく購入。他にも買っておきたいアルバムがあったが、残念ながら今月はお金がなく、諦めることに。まあ、フェラの3枚組だけでも、かなり聞きである。週末にゆっくり楽しませてもらうことにしよう。

 帰宅してメールをチェック。ヨーロッパの各社から大量のメールが入っていたのだが、そろそろ出はじめたのが<今年のウォーメックスはどうするのか>という問い合わせだ。多くの取引先とは、ウォーメックスくらいしか直接会える機会がない。普段からメールでやり取りしているので、会ったからといって新しい進展があるわけではないが、それでもたまには顔を合わせたいという気持ちはぼくにもわかる。ウォーメックスは彼らにとって、忘年会か新年会みたいなものなのだろう。そんなわけで、来月末はニューキャッスルに行くことになった。ヨーロッパの人たちとは違って、遠い日本からわざわざ行くのはタイヘンだが、これも仕事だから仕方がない。

 

9月14日(水)

 今日も一日中自宅にこもって書きもの仕事。取引先とのやり取りを片づけた後、モアシール・ルスの弾き語りアルバムの解説を執筆。さらに午後からは、エマニュエル・ジャルとアブドゥル=ガディル・サリムの『シーズファイア(停戦)』(ライス WNR-587)の解説に取り組んだ。

 以前、当社に問い合わせをしてくれた方から、愛知の万博でアンゴーラのグループの公演を見たというメールをいただいた。それがなんと、当社で配給しているパウロ・フローレスを中心としたキンタール・ド・センバのメンメンだったのだとか。公演の写真も送っていただいたので、間違いない。せっかくの来日なのに、見逃してしまって、とても残念だ。
 先にベリーズのアンディ・パラシオが万博のために来日していたという話をこの欄で書いたが、インドネシアに行ったときにも、クロンチョン歌手のトゥティ・マルヤティさんから、つい最近万博で公演したとい話を聞いた。どうも、ぼくらの知らないところでかなりたくさんの音楽家がこの万博のために来日していたようだ。もし来日情報を事前から知っていれば、ついでに東京公演を、という話もできたかもしれない。でも、招聘に関わっている人たちですら、どんな人たちが来るのかをちゃんと知らない状況だったとか。プログラムにもちゃんと載っていない場合がほとんどだったそうだから、どうしょうもない。こういうことになるんだったら、万博がはじまる前に各国の大使館の人たちと仲良くなって、来日の情報を教えてもらえる状況を作っておくんだった。
 いま、もうひとつ考えているのが、ひょっとして各国のパビリオンにはその国でしか買えないCDやカセットが売られているんじゃないかということ。大阪万博のときのキューバ館がそうだったらしいし、さらに大阪のときには、万博が終わった後、展示していた楽器などを格安で販売した国もあったのだとか。今回もそんなことがあるとしたら、楽しみだ。いずれにしても、東京にいても何のニュースも入ってこない可能性が高い。一度、愛知に行くしかないのかも。もう遅いかもしれないが…。

 

9月13日(火)

 一日中自宅にこもって書きもの仕事とメールのやり取り。ヨーロッパの会社はどこも夏休みが終ったと書いたが、しっかり休んだせいか、どこも元気いっぱい。新しいアイテムを、毎日のようにどんどんセールスしてくる。問題は、みんながいっせいにそんなことをしてくること。こちらは返事を書くだけでもタイヘンになってしまう。だいたい、そんなにたくさんのアイテムを同じ時期に発売できるわけはない。でも、あまり迷っていると、せっかくの注目作が平行輸入されてしまう。そのあたりの兼ね合いが難しいところで、アタマを悩ませているわけです。まあ、ヨーロッパの友人たちの元気いっぱいぶりは嬉しいところだが…。

 今週末あたりに『ビートルズ・イン・ショーロ 第4集』(サンビーニャ TS-24064)が店頭に並ぶ。今日はその解説を書いていたのだが、朝からCDを聞きながら、ショーロらしい円やかなサウンドにすっかり和んでしまった。ビートルズ作品をショーロのスタイルで演奏するというこのシリーズがはじまったのは2002年。それから1年に1作ずつ新作が発売されているところを見ると、ブラジルでも安定した売り上げを記録しているのだろう。プロデュースを務めるのはエンリッキ・カゼス。彼もこのシリーズのおかげで、ずいぶん成長することができたようだ。
 この企画の面白いところは、ビートルズ・ナンバーを演奏しても、ショーロ音楽家たちはあくまで坦々とショーロのスタイルでやっているということだ。そしてそのことが、ビートルズ・ナンバーに新鮮な輝きを与えている。聞いていて、とにかく和んでしまうビートルズ作品集なのだ。
 例えば、一回り目までは妙なアドリヴをしないというのが、ショーロの鉄則だが、これは彼らが作曲家を尊敬しているからに他ならない。それは、ピシンギーニャ作品だろうが、ビートルズ作品だろうが、まったく変わらない。さらに、コード進行は当然ショーロ的なものに変わるが、これもオリジナルの旋律を変えてしまうものではない。むしろ、オリジナル以上に円やかなコード進行になったと言えるだろうか。そしてリズム。このシリーズではポルカや北東部のリズムが使われることが多いが、これはロックとショーロの接点を探る作業に違いない。ロックに一番影響を与えたリズムはポルカだが、それはショーロにとっても同じだ。そんな不思議な両者の共通点が、このシリーズでは浮き彫りにされる。
 ビートルズ作品集なんて、世界に山ほどあるので、もう注目する人は少なくなっているかもしれないが、これだけは聞いておいたほうがいいと思う。はじめて聞く人には、第1集がお勧め。さらに深い融合を楽しみたい人は、2集以後、どれを聞いてもOKだ。秋の夜長にこれを聞いて、ゆっくり和んでください。

 実はこのシリーズ(というか、ショーロのアルバム全般に言えることだが)、いわゆるワールド系のお店よりも、銀座の山野楽器さんとか、駅前の新星堂さんとか、フツーのお店で親しまれている。数日前の日記で、クロンチョンのように誰が聞いても気持ちよい音楽は、ワールドではなかなか売れないと書いたが、こういった音楽を素直に聞いてくれているのは、意外にも普通のお店でCDを買う普通の音楽ファンのようだ。

 

9月12日(月)  

 それにしても、自民党の圧勝ぶりはビックリだ。与党だけで議席の3分の2も取ってしまうなんて、小泉さん自身も思ってもみなかったはず。こんなことになってしまって大丈夫なのだろうかと、心配の声もあがってきそうだ。
 でも、中途半端な勝ち方ではなく、これほどまでに大勝してしまったことは、日本にとって良かったような気もする。なにしろ、あれだけ郵政民営化の是非を問うための選挙だと明言しての大勝だ。これで<白紙委任状>ということにはなりにくい。いきなり憲法を改正するなんてバカなことは、かえってやりにくくなったはずだ。さらに良かったのは、これで自民党はもう元の派閥政治には完全に戻れなくなったこと。また地盤を固めて利権を誘導するようなやり方も、小選挙区制ではいきなり登場する落下傘候補に粉砕されてしまう可能性があることが証明されたのも良かった。
 人気投票のような選挙だったのは事実。でも、密室政治が当たり前で、誰もが政治や選挙なんてものに無関心になってしまった時代に比べたら、人気投票のほうがずっとマシじゃないだろうか。それに、注目が集まった分だけに、責任も問われる。政治家は常に注目を集め、監視されている状態にしておかないと、何をしでかすかわからない人種だ。そういう意味で、投票率が高かった今回は、今後の監視が厳しくなる分、良かったのだと思う。

 そんな選挙とは関係なく、会社の仕事は続く。朝から銀行で支払い。午後は資金繰りのために、また別の銀行へ。景気が良くなることはないと諦めてはいるのだが、それでもこうも業績があがらないとイヤになってしまう。自民党だけでなく、サンビーニャにも神風が吹いてくれたら、なんてバカなことを考えてしまった。

 

9月11日(日)

 まだ昨日の疲れを引きずっている。今日はやらないといけないこともたくさんあるのだが、どうにも体力がついてゆかない。もう一日、身体を休めるしかなさそうだ。

 ただ、衆議院選挙の投票にだけは行ってきた。選択肢が少ない選挙であることは事実。完全に満足できる候補者なんて、ぼくが住んでいる地区にはいなかった。でも、無投票で済ませてしまう気にもなれない。こんなにいろいろ考えながら投票した選挙もはじめてだ。

 前回の選挙は民主党に投票した。でも、今回は単純にそうする気にはなれなかった。保守の自民党が改革を訴える中で民主党は、確固たる立場を表現することができなかったからだ。
 反対に、自民党は実にわかりやすい。自民党をぶっ潰すと言った小泉さんは、今度の解散で本当に自民党の派閥体制をぶっ壊してしまった。古い自民党の体質を引きずった政治家たちは、どんどん排除される。もし今度の選挙で勝ったら、これはさらに進むことだろう。小泉さんにはまったく迷いがない。こんな小泉さんに対抗するには、わかりにくいマニフェストなんていくら掲げても無意味だ。自民党以上に先を見た、しかもわかりやすい改革案を提示するしかない。自民党も民主党もさまざまな意見を持つ人が集まった政党である点は同じだが、そうなると強引にひとつにまとめてしまったほうが強いに決まっている。

 そんな選挙の後、夜の選挙報道をけっこう遅くまで見入ってしまう。久米さんと筑紫さんのタッグを組んだことが話題になっていたようだが、ぼくは古館さんが健闘したと感じた。「報道ステーション」がはじまった頃はどうなることかと思わせた古館さんだが、最近は違う。大人の久米さんとは違って、アタマにきたときにはそれがストレイトに表情に出てしまう古館さんの子供っぽさが、ひとつのスタイルになってきた感じだ。今日はホリエモンあたりと言いあったり、ちょっと熱くなりすぎたところがあったけど、あまりに大人っぽい対応の筑紫さんなんかよりぼくはずっと親しみを感じる。古館、頑張れ、とテレビに向かって叫んでしまいまった。

 

9月10日(土)

 本当は片づけたい仕事がいくつかあったのだが、あまりに疲れを感じたので休みを取ることにした。どうにも身体が動かないという感じ。本当はこの週末にティナリウェンの来日ルポでも書こうと思っていたのだが…。

 

9月9日(金)

 午前中にガル・コスタの解説原稿を入稿。午後は打ち合わせが2本。その後自宅に戻って、雑務整理を夜遅くまで。終ったらドッと疲れてしまった。今日はもう何もできないという感じ。ティナリウェン来日のときの疲れがまだ残っているようだ。

 

9月8日(木)

 今日はリスト作成日。今週のメインは、昨日の日記で書いたエマヌエル・ジャルとアブデル・ガディール・サリムの『シースファイア』(ライスWNR-587)になった。それと、ぼくが紹介したのが、久しぶりのクロンチョンの新録アルバムであるベテラン女性歌手のトゥティ・マルヤティさんの新作。こちらは『クロンチョン・アスリ』というタイトルで、サンビーニャ印のシリーズから発売される。インドネシアでクロンチョンをいまも熱心にプロモートする唯一のレーベル、グマ・ナダ・プルティウィからの発売だ。
 かつてはインドネシアの<国民音楽>とまで言われたクロンチョンだが、最近は新録アルバムが登場することがメッタになくなってしまった。ぼくがワルジーナさんのアルバムを作ったときに一緒に仕事をしたマントースが病に倒れてしまったせいで、意欲的にクロンチョンを作ろうという人がいなくなってしまったからだ。でも、クロンチョン楽団自体がインドネシアから消えてなくなってしまったわけではない。今回のトゥティさんのアルバムでは、アチェップ・ジャマルディンが率いるオルケス・プサカ・キラナという楽団が伴奏を務めている。
 実はこのアチェップさんは、かつてマントースが在籍してクロンチョンのイロハを学んだ名楽団オルケス・ビンタン・ジャカルタのギタリストだった人だ。当時のビンタン・ジャカルタは本当にスゴいバンドで、リーダーがヴァイオリンのブディマン・BJ、ギターにアチェップ、チェロにマントース、チュックにヌヌンと、すばらしいメンバーが揃っていた。彼らほど完成度の高い演奏をしたバンドは以前には存在せず、歴代最高のクロンチョン・バンドと言ってしまってもいいだろう。マントースによると、リーダーのブディマンはクロンチョン音楽家としての誇りを最後まで捨てなかった人物で、だからバンドの練習も厳しかったらしい。また後輩の育成にも熱心で、もともとポップ歌手だったヘティ・クース・エンダンを一人前のクロンチョン歌手に仕立て上げたのも、このブディマンだったのだそうだ。
 そんな楽団出身のアチェップさんだから、マントースが活動できなくなってしまったいま、クロンチョンの魂を受けつぐ最後のひとりと言っていいだろう。アチェップさんはすごく温厚な人物で、ブディマンやマントースほど強力なリーダーシップを発揮するタイプではない。でも、さすがにその楽団のサウンドは、素朴ながらにクロンチョンの心を感じさせる。
 実はぼくにとっても、このCDは久しぶりに聞くクロンチョン・アルバムだった。それもあって、その独特の温かみのあるサウンドは、すごく新鮮に感じられた。衝撃的、というのとは対極にあるクロンチョンのような音楽を、いまの若い世代に聞かせるのはたしかに難しい。それでも熱心にクロンチョンの新作を出し続けるグマ・ナダ・プルティウィという会社も、偉いなあと思ってしまう。

 クロンチョンをどうやって世界に広めるべきか、これまでも何度も考えてみたが、いまだに結論が出ていない。とりあえずぼくがプロデュースしたワルジーナさんのクロンチョン・アルバムをイギリスでリリースしようと思ったが、誰に聞いても、そんなものは売れないと言う。ヨーロッパでは、クロンチョンどころか、ブラジルのショーロもまだちゃんと受け入れられているように思えない。混血音楽のまろやかな味わいより、文化衝突から生まれる衝撃性を面白がるワールド・ミュージック・ファンがほとんどのいま、クロンチョンやショーロの円熟した味わいはなかなかわかってもらえないということだ。
 でも、ワールド・ミュージックのファンが聞いてくれないのでは、いったいどんな音楽ファンにお勧めすればいいのだろうか。誰が聞いても、クロンチョンは気持ちの良い音楽だ。少なくともぼくはそう思う。でも誰かに聞いてもらうキッカケを作ろうと思ったとき、クロンチョンやショーロのほうが、誰が聞いても気持ち悪い音楽より、ずっと難しい。これが現実なのだ。この調子だと、本当に円熟した、ボケッと聞いていても心が和むようなタイプの音楽は、世界からどんどんなくなってしまうのかもしれない。もっと普通に音楽を聞いてくれるファンが育ってくれることを、切に願ってしまいます。

 

9月7日(水)

 ティナリウェンの仕事が終ってから、久しぶりに新しいアルバムをたくさん聞いている。取引先から送られてくるサンプル盤だけでなく、インドネシアやシンガポールで入手したアルバムや、旅行前に日本で買ったものなど、未聴盤がかなりたまってしまったからだ。今日は朝から書き物の仕事をしながら、それらをとっかえひっかえ聞いてみた。
 その中でもっとも驚かされたのが、スーダン音楽の一枚。エマヌエル・ジャルとアブデル・ガディール・サリムによる『シースファイア』(ライス WNR-587)だ。先にNHKの番組でスーダンの厳しい現状が伝えられていたが、エマヌエル・ジャルはそんなスーダンの<少年戦士>だった人。そんないまのスーダンを象徴するような新世代歌手と、古くからワールド・ミュージックを聞いている人たちにはなじみが深いベテラン、アブデル・ガディール・サリムが共演したのが、このアルバムで、中でもエマヌエル・ジャルの出現は、いまヨーロッパのワールド・ファンの間でかなり話題になっているらしい。
 ぼくが聞いたのは、当社にも強力な売込みが来たからだが、たしかに聞いてみると話題になっているのはわかる。アブデル・ガディール・サリムが歌う曲は基本的に懐かしいスーダン演歌だが、エマヌエル・ジャルのほうは、ぼくらが知っているスーダン音楽とはまったく違う次元に来てしまっているからだ。こんなに短期間で音楽が変わってしまうのか、という感じ。ブラジル北東部からナソーン・ズンビが登場したときのショックに近い、なんて書けば、わかってもらえるだろうか。いや、ジャルくんだけでなく、サリムさんもそんな新世代の登場に刺激を受けて、以前以上に緊張感のある歌声になっている気もする。
 詳しい内容については、サイトの別ページをチェックしてください。今月28日は店頭に並ぶ予定なので、ぜひご注目願いたい。

 旅行やティナリウェン来日のせいで、しばらく通常仕事をしていなかったので、なかなかペースがつかめない。同じ仕事をしていても、いつもより余計に時間がかかっているような気がする。ここはひとつ、気合を入れなおさないと…。

 

9月6日(火)

 久しぶりに自宅にこもって書き物の仕事に集中した。しばらく往信をしていなかった取引先にまとめてメールを送ったり、ティナリウェンでお世話になった皆さんにお礼のメールを送ったり、解説原稿にも手をつけたり…。そろそろ来月のリリースを決定しないといけないこともあって、サンプルや新作インフォもチェックしないといけなかったりと、思った以上に仕事がたまっている。まあ、焦っても仕方がない。ひとつひとつ、大事に片付けてゆくことにしよう。

 夜は社員のみんなと久しぶりに飲み会。ティナリウェンの公演ではみんなにも忙しい思いをさせてしまったので、その慰労会という感じだ。思い出してみれば、会社の飲み会は昨年の忘年会以来。一緒に仕事をしていても、普段はあまりゆっくり話し合う時間もないので、こういう機会に言いたいことを少し発散してもらうのもいいだろう。飲んだ席なので、話し合った内容のすべてを細かく覚えていないが、それくらいでかえって良いのかもしれない。

 ヨーロッパの取引先は、夏休みも終えて正常に動きはじめたようだが、1ヶ月近く休んでしまうとどうしても仕事にしわ寄せがくるようで、予定通りにことを進めてくれない会社が多い。ここのところ当社の発売予定日がしょっちゅう変更になってしまうのはそのせいだ。10月くらいになれば、どの会社も落ち着くはず。そうなれば予定変更はなくなると思う。どうぞ、ご勘弁ください。

 

9月5日(月)

 ティナリウェンの来日に追われた1ヶ月間が終って、やっと今日から通常のペース。久しぶりに本来のレーベル/ディストリビューターの仕事に集中できる状態になった。この1ヶ月で後回しにしてきた仕事は多い。特に経理仕事は、まだ7月分も終っていないし、書かないと原稿も山積み状態。さらにミックス作業や編集盤の制作など、独自企画アルバムの進行も大幅に遅れている。慌てても仕方がないが、なんとか今月いっぱいくらいには遅れた分を取り戻したいところだ。

 帰国してから移動のときにウォークマンで頻繁に聞いてきたのがガル・コスタザラの新作。ともに今月当社から配給されるアルバムだが、思った以上にすばらしい内容で、個人的にもけっこう楽しんでいる。ガルは新世代たちとのコラボレーションですっかり若さを取り戻してくれたし、トルコのザラは前作以上に多彩なアレンジで新しい時代のトルコ伝統音楽に挑戦してくれた。ともにかなりの意欲作だ。なによりも良いのが、しつこくない、サラリとした歌声が楽しめるところで、特にザラの歌声は、濃い目の歌が多いトルコでは完全に異端だろうけど、日本人にはこれくらいのほうが親しみやすい。先に出たファドの新しい歌姫ジョアナ・アメンドエイラの新作とともに、発売されたら秋の夜長にじっくり楽しんでいただきたいところだ。

 

9月4日(日)

 久しぶりに自宅で過ごす一日。昨晩は午後8時に寝たのに、今朝は6時まで熟睡。10時間も寝てしまった。余程疲れていたのだろう。目覚めはスッキリだったが、身体はまだかなり疲れている。さすがに今日は仕事をする気になれない。

 仕事はしなくても、やるべきことはたくさんある。まずは食料の調達。そして部屋の片づけだ。シンガポールに出発した日から冷蔵庫はカラッポだし、帰国してからまだ旅行カバンも開けていない。それに洗濯や掃除もしないといけない。外国旅行の後はいつもこんな感じ。ましてや今回はティナリウェンの公演があったので、部屋の中は大混乱だ。

 ただ、久しぶりにテレビをつけっぱなしで掃除などをしていたせいで、選挙関係の番組はけっこう見ることができた。党首会談が午前中だけで3本。さらに赤羽に買い物に言ったら、ちょうど小泉さんの街頭演説に出くわした。すごい人盛りだった。
 小泉さんは、テロに対する強硬姿勢を訴えたブッシュの前回の選挙を思い出させるような、郵政一本やりの強行突破型の選挙。一方の民主党のほうは、それから視線をそらせようとしているが、実態はかつての自民党を受け継いだような勢力固めの旧式選挙をしているようだ。例えば、民主党の年金問題の取り上げ方を見ても、郵政一本の選挙から目をそらせるための手段というのがミエミエ。とても本気とは思えない。これじゃ、結果は目に見えている。余程のことが起きない限り、あと一週間で形勢が逆転されることはないだろう。

 

9月3日(土)

 昨晩はティナリウェンと同じホテルに宿泊。朝8時にジャジャに電話で起こしてもらう。2時間ちょっとの睡眠だ。プロマックスの三好さんとともに、ティナリウェンのメンバーを成田に見送りすることになっていたので、8時半にホテルを出発。バスで成田に向かった。
 イブラヒムとジャジャとアンディーはまったく眠っていない。アブダラも朝方までどこかで遊んでいたようだ。そんなわけで、バスの中ではほとんどのメンバーが寝ている。ぼくも途中でウトウトしてしまった。

 10時過ぎに成田に到着。チェックインを済ませて、ゲートに向かった。メンバー全員と握手。来年の再会を約束する。そして一番仲良くなれたイブラヒムとは、熱く抱擁。ちかいうちに彼らの本拠地キダルを訪れることを約束して別れた。イブラヒムにはまだまだ聞きたいことが山ほどある。これからもしばらく付き合いが続くことになりそうだ。

 やっとひと仕事を終えた充実感。こういうときは、まっすぐ家に帰る気がしない。とりあえず浦和まで戻って、サウナで人汗流して休息することにした。昼間から飲むビールは実に美味しい。こんな気持ちでお酒を飲むのは久しぶりだ。

 夕方に自宅に戻って、冷麦で軽い夕食。午後7時を過ぎたら、強烈な睡魔が襲ってきた。電話をすべてサイレントにセットして、布団にもぐりこむ。今日はゆっくり眠れそうだ。

 

9月2日(金)

 さあ、今日はいよいよコンサート当日だ。
 イブラヒムの体調が心配だったのでホテルに電話したら、外出しているとのこと。昨日早く寝たのが良かったのか、すっかり体調を戻して、午前中には浅草まで遊びに行ったらしい。
 ぼくのほうは、たまっている会社仕事を朝のうちに終らせて、午後1時にホテルへ。アンディーと今晩の曲目について話し合うことにした。ヨーロッパのツアーは、フェスティヴァル出演が多かったため、50分くらいの公演がほとんどだったが、今回は2時間近く演奏してもらわないといけない。そこでぼくも加わって、2時間用のレパートリーを考えることになった。
 そこで思い出したのが、『アマサクル』に入っていた「アスル」という曲だ。この曲では笛の音が聞こえるが、実はイブラヒムがギターなどを持つ前に、最初に演奏した楽器がこの笛だった。そこでイブラヒムに、この笛を持ってきたかどうか聞いたら、持っていないけど、すぐに作れるとか。それなら演奏してもらおうということで、レパートリーに加えることにした。
 曲目は、最近の2枚のアルバムに収録された曲以外にも、もっと古い時代の曲や新曲も加えた。『アマサクル』が発売されたのが昨年だが、録音は一昨年。それからバンドのレパートリーはどんどん増えて、40〜50曲くらいはいつでも演奏できる状態になっている。だから2枚のアルバムに収録されていない曲が多くなるのも当然だ。

 3時過ぎに会場の渋谷AXに到着。さっそくイブラヒムはプラスティック製の笛の製作に取り掛かる。他のメンバーは、若い順にサウンド・チェック。エンジニアのジャジャは、昨年70回、今年も60回以上の公演をこなしているので、仕事はすごく速い。わずか40分くらいで、全員のサウンド・チェックを終らせてしまった。そしてその後に、照明スタッフのために、数曲だけリハーサル。ここでイブラヒムは手製の笛を演奏する。わずか20分ほどで作った笛とは思えない、すばらしいサウンドだった(ちなみにこの笛は、ぼくがいただくことになった)。
 午後6時過ぎには、楽屋で取材を少し。ここではアブダラのギターを伴奏に、トゥアレグ人の伝統音楽を聞かせる。これがウォーミング・アップ代わりという感じ。そして7時10分から公演がスタート。さあ、いよいよ本番だ。

 コンサートについては、近いうちに別のページでご報告するつもり。ここではただひとつ、ぼくがこれまでに見たティナリウェンの公演の中でも最高の出来だったとだけ、お伝えしておくことにしよう。メンバーたちも、お客さんたちの温かい対応のおかげで、すばらしい公演になったと、とても満足そうだった。
 客席は、2回の椅子席を別にして、ほぼ一杯になり、ひと安心。いらしてくださった皆さん、本当にどうもありがとうございました。

なお、今日演奏された曲目は以下の通り。

1 AMASSALOUL
2 ASSOUL
3 TAMATANT
4 CHATMA
5 ASSOUF
6 OUALAHIYA AR TESNINAM
7 ASSWT ‘N’CHET TAMACHEK
8 CHET BOGHASSA
9 TENERE BUS
10 EH MASSINA SINTADOBEN
11 ALDHECHEN MANIN
12 AMIDIWAN WINAKALIN
13 AYMANA
14 TENERE DAFEO NICHCHAN
15 ARAWAN
16 CLER ACHIN
17 ARAN MANIN
18 IMIDIWAN MATENEN
19 AMASSAKOUL
ーアンコール
1 MATARADJEN ANEXAN
2 SIDI LE MAIRE



 コンサート終了後、ホテルの近くのお蕎麦屋さんで打ち上げ。コンサートがすばらしかったので、メンバーのみんなも機嫌がすごぶる良い。普段は無口なイブラヒムも、今日はけっこうよく喋る。ぼくの隣に座ってもらったのだが、彼にとって生まれてはじめての日本食のはずなのに、はじめて使う箸を使って、おいしそうに食べていた。

 打ち上げの後は、イブラヒムとアンディーとジャジャと一緒に今日のコンサートの反省会。普段は公演の後、こんな会が開かれることはないのだそうだが、今日はぼくの意見を聞くためにこんな会を開くことにしたらしい。ただ、話しているうちに、今日の公演がどうとかより、今後ティナリウェンがどうなるべきなのか、という方向に話が進んでいった。彼らは来年早々に次のアルバムを録音することになっている。イブラヒムは『アマサクル』に満足しているわけではなく、もっとすばらしいアルバムを作りたいと熱心に語っていた。そのためにはどうするべきか、熱を込めて話し合う3人。すべてフランス語での会話なのだが、彼らと一週間も行動をともにするうちに、ぼくもだいたい意味がわかるようになってしまったようだ。特にイブラヒムが話すアフリカ・スタイルのフランス語はほとんど完璧に理解できる。会話の中で、ぼくがそんな覚えたてのフランス語で意見を言ったら、みんながビックリしていた。

 途中、イブラヒムと二人きりでベランダに出て、ゆっくりと時間を過ごす。無口でちょっと気難しそうなイブラヒムだが、この一週間ですっかり仲良くなることができた。いまの打ち合わせで、彼がどんな音楽を求めているかは、だいたい理解できた。ぼくの音楽に対する考え方も、彼はだいたい理解してくれたようだ。これからはぼくも少しは彼らを協力できることになるかもしれない。そのためにも、一度彼らの本拠地であるキダルを訪れるべきなのだろう。イブラヒムは、ぼくがキダルに行ったら、観光客なんかは誰も知らない砂漠の一番良い場所を教えてくれると言う。そこでギターを爪弾くのが最高なんだと、とても嬉しそうに話してくれた。

 

9月1日(木)

 昨日の嫌な予感が的中。一日で時差ぼけを治そうとしたせいで、今日はメンバーのほとんどが疲れた表情をしている。中でも重症なのがイブラヒム。表情がさえない。頭痛がヒドいとかで、朝食も取らなかった。

 午後から、そんなイブラヒムとアブダラがふたりでインタビューに出席。アンディーも加わって、4誌の取材をこなした。イブラヒムは相変わらず調子が良くないようで、そうじゃなくても無口なのに、今日はますます口数が少なかったようだ。おかげでインタビュアーの方々にはご迷惑をおかけしてしまったかもしれない。深くお詫び申し上げます。

 インタビューの後は、イブラヒムをホテルで休ませて、一部のメンバーで居酒屋へ。もちろん彼らはイスラム教徒なので、アルコールは口にしない。ただ、幅広い日本食を味わってもらうには、専門店より居酒屋のほうが良いと思ったので、ここに連れてきた。今日は若いメンバーばかりだったので、すばらしい食欲を披露。アップル・ジュースを飲みながら、どんどんお皿をあけてくれた。

 さあ、明日はコンサート本番だ。みんなには頑張ってもらわないと。

 

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