ひさしぶりの会心作!
西アフリカ・ギネアを代表する男性ヴォーカリストの伝統ポップ作品
マリやセネガルなどがある西アフリカはアフリカの中で最も多くの才能を輩出してきた地域ですが、この地域の中で最初にフランスから独立して周辺諸国に大きな影響を与えてきたのが、ギネアです。今年2月に発売した“アフリカの声”ソリ・カンジャ・クヤーテはギネアを、いや、それ以上にアフリカを代表する声の持ち主でしたが、さらにこの国には忘れてはいけないグループがあります。それが国立ベンベヤ・ジャズで、このグループもアフリカ音楽を語る際には避けて通れません。先日、ミュージック・マガジン社から発売された『定盤1000』にも同グループのベスト盤が掲載されていました。そしてこのセクバ・バンビーノがキャリアの出発になったグループがこのベンベヤ・ジャズに他ならないのです。
1964年生まれのバンビーノは16歳にしてベンベヤ・ジャズにヴォーカリストとして誘われ、同グループの80年代を若く張りのある声で支えました。そこで大きな人気を獲得した彼は、90年にソロ・デビュー。その後順調にキャリアを築き、ギネアで最も有名なヴォーカリストのひとりと知られるようになりましたが、2002年発表の『シニカン』(写真・左)は有名プロデューサーがついたこともあり、完成度が高く日本のアフリカ音楽ファンのあいだでも大きな評価を得て、さらに2005年には来日も果たしています。
『シニカン』以降もいくつかのアルバムをリリースしていましたが、これぞ、という会心作がついにリリースされました! 近年の作品では打ち込みを入れたり、過剰にポップな楽曲だったりしましたが、本作『ザ・グリオーズ・クラフト』では全編アクースティック編成で、伝統的な音楽を感じさせながら上質なアフリカン・ポップを披露しています。その制作に主眼が置かれたのは彼の声とソングライティングだそうで、その試みは成功していると言っていいでしょう。じっくりと彼の張りと伸びのある声と、哀愁と喜びが混ぜ合わさったような絶妙な旋律を聴かせてくれます。どこかモリ・カンテの名作『サブ』を思い起こさせます。今年リリースされた西アフリカのポップ作品で1番の出来かも。アフリカ音楽ファンは聞き逃し厳禁でお願いします!
公式HPはこちら