ア−ティスト
マリア・テレーザ・デ・ノローニャ
タイトル
思い出のファド
オ−ダ−番号
IYR-5167
定価(税込)
2,625円
         

ファドの歴史を飾る重要アイテム その2
アマリアの唯一の好敵手と呼ばれた偉大な女性歌手


 唯一無比のファド歌手といえば故アマリア・ロドリゲス(1920−99)。でも、そんなアマリアにも、ただ一人だけ、ライヴァルと言われた女性歌手がいたことをご存知でしょうか? それがこのマリア・テレーザ・デ・ノローニャでした。
 ノローニャは、アマリアより少し遅れて1950年代にデビュー。そして大きな人気を獲得するようになったのもアマリアより遅く、60年代になってからでした。ただ、それから70年代初頭まではアマリアにも負けないほど数多くの録音をヴァレンティン・デ・カルヴァーリョやムーヴィプレイというレーベルに残しました。
 これはそんなノローニャのアルバムの中でも、彼女の全盛期と言われる65年に録音された傑作中の傑作。まだまだ若かりしころのノローニャの歌声がタップリと堪能できる1枚です。実は本作は数年前にサンビーニャ名義(帯・解説付き輸入盤)で一度限定発売したことがありましたが、あっという間に完売。幻の作品として長らくファンに探し求められてきました。
 ここでの伴奏は、アマリア・ロドリゲスが52年にロンドンのアビーロード・スタジオで録音したときに伴奏を務めていた名手ラウール・ネリの楽団で、彼らは当時様々な有名歌手の伴奏を務めていたほど人気がありました。そしてポルトガル語のタイトルは“究極のサウダーデ”といった意味で、古風な旋律の曲が多く、作者不明の曲もあることから、古い時代のファドを現代的に再構築したものと思われます。ノローニャが残した数多いアルバムの中でも、もっとも伝統的な内容のアルバムの一つと言えます。
 古い時代のファドは、1オクターヴくらい平気でジャンプアップするところに大きな特徴を持っていますが、そんな難曲をサラリと何もなかったかのごとく歌ってしまうのが、歌手ノローニャの素晴らしいところ。そしてその節回しの確かさは、ある意味でアマリア以上でしょう。いまでは聞けないホンモノの実力派の歌声がここに収録されている訳です。
 濃厚なファドをじっくりと楽しみたい本格派ファンに強くお勧めしたい1枚です。

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