偉大なる父を持ちつつ独自のスタイルを確立した人気二世歌手の最新作
アメリカのカントリー・ミュージックの歴史において、もっとも大きな影響を与えた音楽家のひとりがハンク・ウィリアムズ（1923−1953）。なんと29歳という若さで亡くなってしまった彼ですが、生前に35枚ものトップ10シングル（内11枚がナンバーワン）を残すなど、その存在はいまやカントリー・シーン最大の伝説となっています。そんな彼が残した遺産のひとつが1949年に生まれた息子のランドールで、それがすなわち本作の主人公ハンク・ウィリアムズ・ジュニアです。
若い頃のランドールは偉大な父から生まれた息子ということでその物真似をやらされるなど、本人的には不本意で不遇な時代を過ごしていましたが、80年代になるとロックやブルースといったジャンルの要素を加えてオリジナリティ溢れるサウンドを追求するようになると、父親とは違う個性を確立し大きな人気を獲得するまでになりました。
そんな彼が３年ぶりに発表したフル・アルバムが本作で、ホンキートンクやサザンロックなどの要素を加えた独自のカントリー・ナンバーを全12曲収録しています。ここでは彼の自作曲のほか、父のカヴァー曲や、アウトローなイメージを売りにしているカントリー歌手マール・ハガードのカヴァー曲をマール本人をゲストに招いて聞かせてくれます。さらに中堅カントリー歌手ブラッド・ペイズリーもデュエット歌手としてクレディットされています。
そしてフィドル、バンジョウなどカントリーらしい楽器を加え、さらにはブルージーなスライド・ギターもフィーチャーするなど、アメリカ南部の様々な音楽が交錯するあたりは、ハンク・ウィリアムズ・ジュニアならではのクロスオーヴァー感覚といえそう。まさにタイトル通り、古き良きスタイルの中から新しいサウンドを見つけてゆこうという気概が伝わってくる意欲作となりました。
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