アルジェリアの都市型民衆歌謡〈シャアビ〉最高の編集盤!
今年2012年は、アルジェリア独立50周年。7月の独立記念日には当地では大きな祭典が行なわれましたが、この国の独立はおいそれとなされたわけではなく、長く複雑な闘争(戦争)の上に勝ち取ったものでした。その闘争のなかではユダヤ人とアラブ人の関係が悪化し、独立の際には多くのユダヤ系アーティストが亡命しました。そんなアルジェリアのユダヤ系アーティストを追っかけたのが『アルジェリア〜ユダヤ人歌手たちの遺産』(ライス
BDR-640)。その編集盤には、15世紀以前のイベリア半島(現在のスペイン、ポルトガル)で生まれ、その後、北アフリカで育まれたアラブ・アンダルース音楽を受け継ぐアーティストで構成されていました。
その古典音楽としてのアラブ・アンダルース音楽は、現在のアルジェリアの首都であるアルジェの旧市街のカスバで民衆の音楽として1920年代に生まれ変わります。それを成し遂げたのが本作の最後に収録されているモハメッド・エル=アンカでした。単独名義で国内盤もリリースされているおなじみのアーティストですが、彼が創始した音楽こそ、このシャアビ(「民衆の」という意味)だったのです。それまで古雅なアラビア語でうたわれていたアラブ・アンダルース音楽を下町らしいベランメエ調でうたい、また主要楽器だったウードをより民衆的な弦楽器であるマンドーラやバンジョウに持ち替え、当時の若者を熱狂させたのでした。
そんなエル・アンカがおこしたシャアビ革命の余波は途方もないインパクトを持ち、現在までも受け継がれています。その革命の正統的後継者で、パリのコミュニティにおいてシャアビを真に“民衆の”ものにしたダハマーン・エル=ハラッシ(こちらも単独名義の国内盤あり)を筆頭に、戦後活躍したシャアビ歌手を揃えました。そのそこはかとなく哀愁がただよいながら都会的に洗練された音楽は、一度ハマるとなかなか抜けだせない味わい深さがあります。アルジェリア独立50周年に聴くべきアルバムの1枚。そして20世紀に花開いた都市音楽を愛するすべての人におすすめいたします!
トラック・リスト
CD 1
1. DAHMANE EL HARRACHI/YA DZAIR
2. GUEROUABI/MEGUANI SAHRANE
3. BOUDJEMAA EL ANKIS/RAH EL GHALI
4. ABDELKADER CHAOU/KOUANI OU RAH
5. AMAR EL ACHAB/YA KHIR EL ANAM
6. KAMEL MESSAOUDI/TAB SROUR
7. DAHMANE EL HARRACHI/YA L'HEIJLA
8. AMAR EL ACHAB/ELLAH YALDIQ (ANA OU EL GOURMRI)
9. AMAR EZZAHI/YA DI ALLAH
CD 2
1. DAHMANE EL HARRACHI/KIFEHE RAH
2. GEUROUABI/YA SOURA JMILA
3. KAMEL MESSAOUDI/KOLLI YA BADR EL MOUNIR
4. BOUDJEMAA EL ANKIS/YOUM EL DJEMAA
5. GUEROUABI/SIR ANAKER LEHSSANE
6. GUEROUABI/KIFACHE HILTI
7. DAHMANE EL HARRACHI/YA LE GHALET
8. GUEROUABI/TEFKIRA
9. HADJ M'HAMED EL ANKA/SOBHANE ALLAH YA L'TIF