6月30日(土)

 今日は休みを返上して自社制作のアルバムの仕事を進める予定だったが、ブラジルでまたぼくのプロデュース作品が発売されることになり、急に解説を書かないといけなくなった。もちろん今回もポルトガル語。なんとか明日中には仕上げないと。

 

6月29日(金)

 いつも通り、その月の最終営業日は支払日。もちろん入金もされるわけだけど、そのお金がその日のうちに支払いで消えてしまうという、とても悲しい日だ。今日もまさしくそんな感じ。この円安では、海外からものを輸入している人が儲けられるわけがない。

 

6月28日(木)

 昨年から何度もけしかけていたエル・スール・レコードの10周年記念企画。独自レーベルの発足に向けて、原田尊志さんがやっと重い腰を上げてくださった。候補作はたくさんあったが、厳選を重ねた末に第一弾はホセー・アントニオ・メンデスの『フィーリンの誕生(仮題)』に決定。8月5日に発売になります。今週のリストのメインはもちろんこのアルバムだ。夏に向けて頑張って、ちゃんとプロモートしなくちゃ。
 
 リストと言えば、先週のリストで取りあげて7月22日に発売されることになっているマトゥーブ・ルネスだが、解説を書いていただく蒲田耕二さんと一緒に調べてゆくうちに、ファースト・ネイムだと思われていたマトゥーブが姓であり、しかもルネスはネにアクセントがあるということがわかってきた。そうなると、表記はルネース(またはルネッス)・マトゥーブが正しいことになる。フランス盤では現実に<マトゥーブ・ルネース>とい書かれたものがたくさんあり、どうして姓がひっくり返ってしまったのかという疑問が残るが(アルジェリア大使館によると、カビール人だからって姓と名がひっくり返ることはないそうだ)、とりあえず当社の表記は以上のような形になりそうだ。

 

6月27日(水)

 事務所に行って雑用を終わらせた後、自宅に戻って再び原稿書きと明日のリストの準備。そして月末恒例の経理仕事も少し。予想したとおり、今週は忙しくて目が回りそうだ。こうなると、ゆっくり日記なんて書いている余裕はない。

 

6月26日(火)

 今日もひたすら自宅作業。せっかく話題になっているマグレブ音楽なので、夏にちょっとしたフェアーをやろうと思っているのだが、そのためのリストをなんとか今日作り上げた。先週あたりからたくさんのサンプルを聞き倒したおかげで、いまではすっかりマグレブ音楽ツウ、という気分。調子に乗ったついでに、20年ほど前に買った古いCDを引っ張り出して聞いているのだが、アラブ音楽と言えばエジプトやレバノンを中心にしたアラブ歌謡の世界を中心に考えてしまっていた時代には気付かなかったことが、いまではたくさんわかってきた。<日の沈む場所>(マグレブとはアラブ語でそういう意味らしい)の音楽は思った以上に幅広くて、面白い。そのうちどこかで研究発表でもやることにしよう。

 

6月25日(月)

 朝5時に起きて、自宅でひたすら原稿書き。ライス盤の解説原稿をなんとか2本書き上げる。

 

6月24日(日)

 昨日、身体を休めたおかげで、今日は少し体調が戻った。もうこれ以上休むわけにはゆかない。いつも通り、朝5時に起きて、ひたすら原稿書き。とにかく仕事に集中した一日だった。

 ぼくの会社で発売されるアルバムの解説原稿は、ご存知のようにほとんどぼくを含めて会社の人間が書く場合が多い。でも、ときどきは外部の人に依頼する。ぼくらにはどうしても手に負えないものもあるし、制作費が許す限りにおいて、専門家の方にお願いしたいとは思っている。
 ただ、いくらこちらが誰かに書いてもらいたいと思っても、いつもお引き受けいただけるわけでない。断られてしまう場合もある。そんなとき、他の会社だったら、すぐに他のライターさんを探すことになるのだろうが、ぼくの会社は違う。断られてしまった原稿は、絶対に他の人には回さない。断られた責任を取って、ぼく自身が書く。これが当社がはじまって以来10年間、ずっと守られてきた鉄則だ。
 なんで他のライターさんを探さないかというと、もしも最初に原稿を依頼してお引き受けいただけなかった方からその経緯が外に伝わり、次にお願いした人の耳に入るようなことがあったら、申し訳ないと思うからだ。解説原稿を書く、というのは、音楽評論をしている者にとって非常に名誉な仕事であり、特に好きな音楽家のそれを書かせてもらえるときの嬉しさといったら、言葉では表現できない。ぼくもライター時代、そういう思いをさせてもらった。でも、それが真っ先に依頼された原稿ではなく、誰かが断ったことによって回ってきた原稿だと知ったら、どう思うだろうか。もちろん物事をわきまえたプロの音楽評論家なら、原稿依頼を断ったなんてことは絶対に口外しない。でも、本人が言わなくても、何かの拍子にそのことが外に漏れてしまう場合がないとは言い切れない。そこまで考えると、ぼくは一度断られた原稿は、誰にも依頼できない。仕方ないから自分で書く。たとえそれが専門分野の音楽じゃなくても、だ。

 原稿依頼を断られて、予想外の事態で急に書かないといけない原稿が出来てしまったときのパニックについて書こうかと思ったが、イントロだけ書いて、続きを書く気がしなくなった。実はいま書いたのとはまったく違った理由で、予定外の解説原稿を書くことになってしまったからで、パニックは遠い過去の記憶ではなく、いまの現実そのもの。なので、面白おかしく書く余裕はとてもないからだ。今週は解説原稿書き以外にも、週の後半に支払いや経理仕事などあり、ムチャクチャ忙しくなりそう。この分だと、自社制作アルバムの制作をしばらくストップせざるをえない。非常に残念だ。

 

6月23日(土)

 今日も休みを返上して原稿書きをしようと思っていたが、どうしてもその気になれなかった。たぶん、もう3週間くらいは休みを取っていない。しかも集中して音楽を聞く毎日を過ごしたおかげで、身体のシンまで疲れてしまったみたいだ。
 そんなわけで、今日はリラックスの一日。ほとんど何もしないで過ごした。いや、何かをやろうと思っても、まったくできなかった。これほど疲れてしまったのも久しぶりだ。

 エル・スールのサイトに、例の<ギネア問題>のお返事が書かれていたことを昨夜になって知った。あまりに小さい字だったのでぼくは気が付かなかったが、ぼくが何の反応もしていないことを気にしていた友人に教えられて知った次第。原田さんには、お忙しいところお手数をおかけして申し訳ないことをしたと思っている。反応が遅くなったこともお詫びしたい。
 その文章に対しての反論は別にないが、いちおう確認しときたいことがひとつ。原田さんの文章だけを読むと、まるでぼくがこの議論を最初にふっかけたように思われそうだが、ぼくが日記に書いたのは、あくまでFB/DJ氏の日記に対する反論であって、そういう意味でこの問題を最初に仕掛けたのは、FB/DJ氏だ。ぼくはもともとこの問題を論争になんかしたくなかった。だから、FB/DJ氏からこの問題について最初にメールをいただいたとき、メールでは返信せず、わざわざ電話でお話した。メールで返信すると、その文章が転用されてそのままサイトで議論を戦わせることになるような気がしたからだ。それだけに電話での会話の一部が彼のサイトに出たと知ったときには、驚いた。これじゃもう表に出さざるを得ない。ぼくがそう思ったのは、そのときだ。
 また、そのFB/DJ氏に対する反論おいて、北中さんと原田さんのお名前を出したのは、別にご両人に文句があったからではない。そうでもしないと、FB/DJ氏が孤立してしまうと考えたからだ。だって、そうでしょう。ぼくのほうは蒲田耕二さんとタッグを組んでやっている。でも、FB/DJ氏のタッグのパートナーが外務省だけというのでは、あまりに気の毒だろう。そこで北中さんや原田さんのお名前をつい出したわけだが、そんなとんでもない成り行きで飛んできた、ほとんど言いがかりに近い話に対してもわざわざお答えくださったのは、ご両人の誠意の表れであり、本当にありがたい話だと思う。ご両人にはお手数をおかけしたことを心からお詫びしたいと思う。
 <Guinea>というスペルをどのように読めば<ギニア>となるのか、というのが、ぼくの素朴な疑問であり、この議論をふっかけてきたFB/DJ氏への返答だったのだが、そんなぼくが提示した論点に対する答えなり反論は、FB/DJ氏からも、北中さんからも原田さんからもいただけなかった。そういう意味で今回の論争は(ほとんどの論争がそうであるように)まったくかみ合っていない。
 ただ、それでも有意義だったと思うのは、少なくともそれぞれがどういう理由で<ギネア>あるいは<ギニア>と書いているかがわかったことだろう。それぞれが重きを置いている基準も明示された。これで何もわからない状態でまったく違ったかな書きがいくつも存在していたときよりも、ちょっとはスッキリしたかもしれない。

 世間では、ぼくらがケンカをしていると勘違いして心配(あるいは大喜び)されていた人もいたようだが、残念ながらぼくらはそれほど子供じゃない。こんな論争で仲が悪くなるような相手には、最初から論争なんてふっかけない。きっとぼくにメールを送りつけてきたFB/DJ氏も同じ気持ちだったのではないか。
 むしろぼくとしては、今回のFB/DJ氏のメールからはじまったギネア問題の論争が、『オタンティシテ』の宣伝になったと思われる点が一番嬉しい。それだけが、ぼくにとっての今回の収穫だとも言える。CDは思ったよりもずっと好調な売れ行きで、この分だと近いうちに初回分を売り切り、再注文することになりそうだ。この調子でアフリカ音楽の復刻シリーズにますます注目が集まってくれたら、さらに嬉しい。そのためには、この論争、もっと続けたほうが良かったのかもしれないが(笑)。

 

6月22日(金)

 ティナリウェンの再来日は、実はずいぶん前に決定していたのだが、招聘元であるプロマックスさん自身がアナウンスする前にこのサイトでお知らせしてしまうのもナンなので、ずっと誰にも言わないできた。そのプロマックスさんのサイトにも来日情報が無事アップされたので、こちらも公表することにした次第だ。10月12日(金)渋谷AX。いまからスケジュールに丸をつけておいてください。間違いなく今年最高のライヴになります。

 

6月21日(木)

 午前中に会社に行って雑務的な仕事を片付けた後、午後は自宅で来月のフェアーのためのリスト作りに精を出す。実はこちらもアラブ系の音楽。ここのところ仕事ではアラブ関係の音楽を聞く機会がすごく多くなってきた。

 

6月20日(水)

 リスト作成。今週のメインは、いまは亡きアルジェリアのプロテスト・シンガー、マトゥーブ・ルネスの最後のコンサートを収録したライヴ・アルバムに決定した。やっと発売元と交渉がまとまったので、7月下旬にはなんとか発売できそうだ。また、ぼくはまだ読んでいないのだが、ちょうど発売されたばかりの『ミュージック・マガジン』の最新号のマグレブ音楽関係の記事で、中村とうようさんがこの人のことを紹介しているのだとか。こういうこともあるんですね。

 

6月19日(火)

 昨日の仕事の続きをやった後、午後から事務所へ。先週手をつけられなかった雑務的な仕事をまとめて片付ける。ここのところしばらく休みが取れないのと、梅雨だというのに暑い日ばかりが続いているせいで、少々疲れがたまってきた。

 

6月18日(月)

 自社制作アルバムだけでなく、同時進行で来月のフェアー商品のセレクションも進めているのだが、その二つの仕事のせいで聞かないといけないサンプルが山積みになってしまった。さらに仕事のために読んでおきたい本も山積み。こんな調子だと、なかなか日記を書く時間を作れない。

 

6月17日(日)

 今日も終日、自宅作業。

 

6月16日(土)

 終日、自宅作業。

 

6月15日(金)

 今日も自宅で自社制作アルバムの仕事に没頭。

 今日から毎年恒例のフェアーがはじまる。いつも通りの全品20%オフ。買い逃してきたアルバムなどありましたら、これを機会にまとめてご注文ください。

 

6月14日(木)

 会社の仕事が一段落ついたので、今日から再び自社制作アルバムの選曲作業。というより、まだその前段階の資料集めをしている状況だ。でも、だんだんとアタマの中にアルバムのイメージが出来上がりはじめた。

 

6月13日(水)

 リスト作成に没頭。サンプルを聞いたりサイトをチェックしたりと、ずっとパソコンに向かって仕事する一日。

 

6月12日(火)

 緊急のお知らせがひとつ。
 サイトのトップ・ページでもお伝えしているのだが、サンビーニャはいま新しいアルバイトを募集している。いちおう現在のところ週3日くらいお願いしたいと思っているのだが、将来的に社員を希望したいという人でもOK。ぼく自身が直接面接をさせていただいて、お話を聞きます。
 ご存知のように、ぼくらの仕事は音楽が好きじゃないと、まず務まらない。何よりもそれが重要です。もしも我こそはと思う人がいたら、メールがお手紙で応募してみてください。なお、電話での応募は固くお断りします。

 

6月11日(月)

 編集盤の制作に没頭できるのは、どうしても週末に限られる。月曜日になるとどうしてもやらないといけない仕事ができてしまって中断、というのが、いつものパターンだ。今日もまったくそんな感じ。打ち合わせとかの雑用仕事をやっているうちに、一日が過ぎてしまった。この調子だと、今週の週末も休みなしで制作作業をやることになりそうだ。

 

6月10日(日)

 アマゾンなどで本を注文。その後は音源をひたすら聞いて、選曲作業に没頭した。資料だけでなく、音源のほうもできたらもう少し欲しいところだが、知っている範囲では誰も持っていそうもない分野なので、誰かにお借りするのは無理かも。

 

6月9日(土)

 今日も洗濯や掃除など最低限のことを終わらせて、その後は編集アルバムの選曲作業に没頭。手持ちの資料を全部引っ張り出してきたのだが、いつも以上に資料不足を痛感。もう少し読んでおかないといけない本もありそうだし・・・。

 

6月8日(金)

 午前中に事務所で雑用を終わらせて、午後は自宅の新作の選曲作業に没頭。こうなると日記を書いている余裕はない。

 

6月7日(木)

 明日からの3日間は自分の仕事に集中したいので、今日は細かい雑用仕事を終わらせることに専念した。まだ整理しないといけない輸入盤のデータはたくさんあるが、こればかりやっていると自分の仕事が進まなくなる。残りはまた来週にやることにしよう。

 話は変わるが、ぼくの会社が入っている建物の下の階に数ヶ月前から民主党の選挙事務所がオープンした。ちょっと前は意気消沈だったこの事務所が、ここのところやたらと元気が良い。人の出入りが多くなった上に、賑やかな声も聞こえるようになった。最近の年金問題と農水大臣の自殺で次の参議院選挙の勝機が見えてきたと感じているのだろう。

 年金のデータを5000万件以上も紛失したなんて、常識では考えられない大ボケぶりだが、それは早急になんとかしてもらうとして、それ以上に重要なのが、今後どうやって年金を払ってゆくのか、という問題だ。払う人は減って、もらう人ばかりが増える。そんな状況で、右肩上がりの時代が続くという安易な想定の元で約束された金額なんか出るわけはない。しかもこれだけ巨大な負債を抱えた国が、将来の年金の財源をしっかり確保できるヴィジョンなんて出せるとは思えない。この状態だと、いま払っている人がソンをするのは明白だし、みんながそう思うようになったら、今後はますます払われなくなってしまうだろう。
 そんな年金なら、いっそのこと、チャラにしちゃえ、なんていうのは暴論なのだろうか。でもぼくは、すでに国なんか信じず、老後の生活費は自分でなんとかしようという気分になっている。もちろん選挙で、年金はチャラにしましょう、将来年金は一切支払われません、なんて言う人は出てくるわけはないが、でもそんな暴論を言う人のほうが、その場しのぎの安易な解決ヴィジョンを提示する人より、ずっと正直なのかもしれない。選挙中の公約なんていい加減なものが多いが、これだけ盛り上がっている年金問題だから、いくら実現不可能なヴィジョンを提示しても、国民は簡単に騙されないだろう。どんな名案が出てくるのか、下の階の民主党の事務所に聞きに行きたい気分だ。

 年金問題が浮上して良かったことがひとつ。次の参議院選挙の争点になりそうだった憲法改正なんて話がどこかに吹っ飛んでしまったことだ。誰もそんなことを重要だと思っていなかったことが、年金問題の盛り上がりぶりで明白になった。憲法改正を争点にしようとしていたソーリには、心からザマーミロと言ってやりたい。

 

6月6日(水)

 終日自宅でリストのための原稿書き。サイトを見ながら新しいアルバムの情報を得るという、毎週やっている作業だ。ただ、最近この仕事がだんだんツラくなってきた。良いアルバムが少ない割に、CDの発売点数がものすごく多くなったように感じられるからだ。

 CDの発売点数が多くなったとは、普通にお店でCDを買われている方は感じられていないかもしれない。景気が良かった時期のほうが多くレコードが作られていたはずだと誰もが思うだろう。でも、実際は違う。最近のほうが圧倒的に多い。それが実感されないのは、発売されたすべてのアルバムが雑誌で紹介されたりお店に並んだりしないからだ。
 以前もこの欄に書いたが、デジタル時代になってプロトゥールズのような安価なスタジオ機材が登場し、レコーディングが格段に安くできるようになった。CDをプレスする工場の数もLP時代の比じゃないくらい多い。プレス料金も安くなったし、小口の注文も受けてもらいやすくなった。自主制作CDの発売点数が飛躍的に増えたのはそのせいだ。
 このように誰もがCDを作れるようになったのは、一見良いことのように思える。アイディアが浮かんだら、レコード会社と交渉なんかしなくても、さっさと自分でCDを作ってしまえばいいからだ。売り込み作業なんてしなくてよい分、以前以上にユニークなアルバムが生まれる可能性が高い…。誰もがそう思うだろう。
 でも実際には、そのようにはなっていない。というより、簡単にCDを作れるという安易さが、悪いほうに作用している場合のほうが圧倒的に多い。誰でも自由に自分のアイディアを発表できるということは、どうってことないつまらないアイディアでも、第三者の評価というフィルターをまったく通ることなく世の中に出てしまうことを意味する。独創的なアイディアが録音される可能性よりも、誰にも評価されなかったつまらない音楽がレコードになってしまう可能性のほうが、ずっと多くなっているように思えるのだ。
 アナログ時代はスタジオが高価だったし、誰でも持っているわけではなかったから、何人もの第三者によって選ばれ、実力が認められた人しかレコーディングができなかった。むしろ、いま必要とされているのは、そんな第三者の評価なのかもしれない。以前も例に出した記憶があるが、ギネアのシリフォンなんて、20年ほどの間に発売したアルバムはたったの80枚ほど。年に4枚、4つのグループしか録音を残せなかった。そんな難関を突破してレコードを作れたときは、本当に嬉しかったことだろう。先にライスから出たシリフォン音源の編集盤『オタンティシテ』を聞いて、もっとも感動的な部分はそこだ。逆にいまはそんな喜びを感じさせる音楽がほとんどなくなってしまっている。
 今後、音楽はどうなってしまうのだろうか。たくさんの新譜情報をチェックしながら、ため息ばかりをついている今日この頃です。

 

6月5日(火)

 ぼくの会社は、ライスとかサンビーニャとかの解説付きシリーズのほうが知られているかもしれないが、それ以外の輸入盤も数多く扱っている。特に多いのがブラジル盤で、いまでも主力商品のひとつだ。実は一時期ライスで地味な復刻盤アルバムをたくさん作ることが出来たのも、同じ頃にブラジル盤をたくさんお店に卸していたからだった。そうして儲けたお金を還元していたわけだ。でも、いまではブラジル盤はそれほど売れない。競合業社が多くなったせいもあるが、それ以前にブラジル盤そのものが売れなくなってしまっているようだ。
 ただ、そうは言っても、ブラジル音楽全体がつまらないわけではない。すばらしい音源はいっぱいあるし、それらを全部聞こうと思ったら、一生掛かっても終わらないほどだ。その中でも、せめてカタログに残っているタイトルは、大事に扱ってゆきたい。その思って、ブラジルのすべての会社のカタログを見直すことにした。今日は、ほとんどそれに掛かりっきり。チェックしながら、これまでこんなに多くのアルバムを輸入してきたのかと、ビックリさせられた。
 やってみたら大変な仕事だったが、でもこうして細かくチェックしていると、忘れていたアルバムがこっそりいまもカタログに残っていたりと、嬉しい発見も多い。以前もこの欄に書いたが、ぼくは最近のブラジル音楽にほとんど興味を持っていない。でも、その歴史すべてを考えれば、この国の音楽は、例えばアフリカ音楽のすべてを足したよりも多くの聞くべき音楽があると思う。カタログをチェックしながら、改めてそのことを実感させられた。
 ライスから出るブラジル関係の復刻盤は、いまのところ年に1枚のペース。でも、少し余裕が出来たら、せめて2枚くらいのアルバムを作るべきなのかもしれない。もしもこんなアルバムが聞きたい、というリクエストがありましたら、どうぞお気軽に連絡してください。

 夜は早めに帰宅して、日本代表とコロンビア代表のサッカーの試合をテレビ観戦。これがすばらしい試合だった。0対0で、ゴールはひとつも生まれなかったけど、これほど高いレヴェルで緊張感溢れる試合を日本で見れるのは珍しい。中1日で戦ったコロンビア代表が、まったく手を抜かず、力の入った動きをしてくれたのは敬意に値する。
 日本代表で特に目立ったのが、FW高原の成長ぶりだ。今日はワン・トップなので、マークは当然キツくなる。強烈なヒジ打ちも喰らっていた。それでもふてぶてしい笑みを浮かべながらピッチに戻ってきたときの彼の表情に、ドイツのフランクフルトで1年間レギュラーを張ってきた自信を感じた。フォワードは何をしでかすかわからないくらい危険性たっぷりの人ほど面白い。今日の高原には、それがあった。世界26位のコロンビア代表からヒジ打ちを喰らったのは、むしろ勲章だ。

 

6月4日(月)

 昨日の日記でアカリの『ショーロ・カリオカ』を10枚組と書いたが、実際は9枚組だった。分厚いブックレットがひとつ入っているのをCDだと思って数えてしまったようだ。1905年までに生まれた74人のショーロ作曲家たちが残した作品から132曲を選び出して新たに録音したアルバムで、ブックレットにはそれぞれの作曲家のバイオもつけられている。ぼくはリラックスして楽しんでいるが、すばらしく手が掛かった労作だといっていいだろう。ちなみにアカリは以前、1870年から1920年までに残されたショーロ作品を3枚組5セット(計15枚)で発表したことがあった(このときの発売はビスコイト・フィノ)が、これはそれに続く大作ということになる。
 そんなアカリの新作が早くも発表された。主宰者のひとりであるギタリスト、マウリシオ・カリーリョの新作『ショーロ・インパル』だ。これがなんと奇数拍子のショーロばかりを集めた意欲作。しかも、すべてマウリシオ自身による新曲だから恐れ入る。奇数拍子と言ってもワルツだけではない。8分の9拍子なんて、まるでバルカン半島を思わせる曲もあり、演奏するほうは相当に苦労したことだろう。いつも通りの意欲と緊張感溢れるアカリらしいアルバムで、ボックスほど聞き返すとは思えないが、それにしてもショーロばかりでよくもこれほどたくさんのアイディアが湧き出るものだと感心させられる。

 実は今日はブラジル盤の入荷日。さっそく入ってきたアルバムをあれこれチェックしたりと、久しぶりにブラジル音楽にドップリ漬かった一日だった。トニーニョ・オルタが自身のレーベルから発表した2枚組ライヴとかも入ってきたが、これも豪華なブックレットが付いて、けっこう意欲的な作り。ファンならぜひ手に入れたいところだろう。この日記がアップされる頃には大きなお店には出ているかも。ぜひチェックしてみてください。

 

6月3日(日)

 朝早く起きて天気が良いことを確認。まずは洗濯。そして掃除を終わらせた。本当は昨日中にやっておきたかったのだが、税理士さんと打ち合わせがあったおかげでできなかった。もうすぐ梅雨がやってくるので、これからは洗濯物をためるわけにはゆかないし、掃除もしにくくなる。そう思って今日はまとめて洗濯。そして大掃除になってしまった。

 午後は昨日の続きで、ライスの新作リリース日程表を作成。プレス・リリースの原稿なども含めて、夕方までにいちおうの予定表を作成することができた。ここのところヨーロッパでは、目立った新人アーティストはいないが、ベテランたちは堅実に充実した作品を発表しているし、リイシュー盤は以前よりしっかりした作品が多くなっている。6月のライスの新譜もそんないまの状況を反映したラインナップになりそうだ。月末に発売予定のターラブの戦前録音のリイシュー・アルバムなんて、個人的にもじっくり聞くことになりそう・・・。
 個人的に、といえば、ここのところ食事をしたり新聞を読んだりするときによく聞いているのが、ブラジルのアカリ・レコードからリリースされたショーロの10枚組アルバム『ショーロ・カリオカ』。値段も高いので誰にもお勧めというわけにはゆかないけど、ぼくはけっこう気に入っている。ショーロ・ファン以外には知られていないと思うが、アカリはブラジルで唯一のショーロ専門レーベル。でもショーロに対する思い入れが強いせいか、アルバムは力の入った内容のものが多くて、すばらしいとは思いつつも、あまり何度も聞き返せなかった。でもこれは10枚組のせいか、すっかり肩の力が抜けた演奏。リラックスして毎日楽しめる。今日4枚めの封を切ったので、今週の朝ごはんは毎日これを聞きながら食べることになりそうだ。

 

6月2日(土)

 朝から税理士さんと打ち合わせ。昨日の帳簿整理に続いて、今月から来月にかけて支払う税金などについても計算も終えることができたし、これで来月の下旬まで、経理関係の仕事からは解放される。そう思うと、少し嬉しい。

 夜は自宅でヨーロッパの取引先の新作アルバムを整理。今月ライスから発売されるアルバムの予定表をこの週末中に作るためだ。これが出来てしまえば、後は解説原稿を書くだけ。残りの時間は自分の仕事に集中できる。『ジョアン・ジルベルトが愛したサンバ』も手間がかかったが、今度作ろうとしているアルバムも同じくらい時間がかかりそうなので、少しでもそれに集中できる時間を作っておかないと。
 ちなみに内容については、まだまだ秘密です。選曲が固まったあたりでご報告します。

 

6月1日(金)

 今日から6月がスタート。その最初の仕事は経理仕事になってしまった。というのも、今月はできるだけ余計な仕事をせず、自分の仕事に時間を割きたいと考えている(もちろん新しい編集盤の制作です)のだが、そのためにもその前に手間のかかる雑用はさっさと終わらせてしまおうと思ったわけだ。いつも通り、1ヶ月分の帳簿を一日で整理するので、<さっさと>は終わらなかったが、朝から頑張って、夕方にはなんとか終了。


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