4月30日(日)

 3月中旬のフランス出張から帰ってから、40日ぶりの完全休養日。やっとゆっくり身体を休めることができた。本当は掃除とか洗濯などを今日中に済ます予定だったが、さすが疲れがたまっていて、身体が動かない。仕方ないので食材だけ買い込んで、ひたすら休養に徹することにした。夕方になって少し元気になったので、じゃがいもスープやイチゴ・ジャムを作ってみる。あまり重いものを食べたいと思わないのも疲れている証拠だろう。今朝は9時まで寝たのに、夜9時になるともう眠たくて仕方がない。

 

4月29日(土)

 昨日、やるべきことを終わらせたことで、すっかり気が抜けてしまったようだ。今日は10時まで起きられなかった。こんなにまとめて寝たのはいつ以来だろうか。

 ただ、今日も休んでいられない。フランスの取り引き先の担当者が来日したので、銀座のホテルで打ち合わせ。その後、銀座から渋谷、新宿と、一緒にCDショップめぐり。当社がどんな仕事をしているのか、見たかったようだ。そして途中でお寿司屋さんに寄って、遅い昼食。夜は浅草をちょっと歩いて散会。

 これでゴールデン・ウィーク前の仕事は本当に終了。夜は浅草に戻って、以前よく通ったもつ焼き屋さんに久しぶりに顔を出して少し飲みながら夕食を取った。お疲れさんという気分です。

 

4月28日(金)

 朝早く起きて、解説原稿2本を脱稿。午後は月末の支払い。その後は事務所で経理の仕事を済ませて、自宅で残りの雑務仕事…。やっと今月の仕事が終わった…。

 

4月27日(木)

 悲しい知らせがひとつ。ぼくがかつてレコードをプロデュースしたブラジルのサンバ音楽家ギリェルミ・ジ・ブリートが、現地時間の4月26日、亡くなられたそうだ。友人のベト・カゼスくんが今晩(こちらは日本時間)になってメールでそのことを知らせてくれた。
 思えばギリェルミと最後に会ったのは昨年。久しぶりに自宅を訪れて、お酒を飲みながらお昼ご飯をご馳走になった。ギリェルミから、次のアルバムはどうするんだい、なんて聞かれて、来年にでもゆっくり考えましょうと答えたのが最後の会話だった。残念ながらその約束は果たせなかったが、でもギリェルミさんは、同世代のサンバ音楽家の中では、自分の音楽、自分でしかできない音楽を、しっかり表現できた人じゃないかと思う。ぼくがアルバムをプロデュースしたからこんなことを言うわけではない。ぼくが作った作品以外でも、例えば当社で配給した晩年の2枚の作品だって、老境の彼にしかできない音楽をしっかりやっていた。音楽家としては幸せな人生だったと思う。
 きっといまごろは天国で共作者だったネルソン・カヴァキーニョと久しぶりに酒を酌み交わしていることだろう。ギリェルミさん、お疲れ様でした。合掌。

 きょうはリスト作成日。実はそのギリェルミの近作2枚を1600円(税抜)シリーズで再発することを決めたのが、今日の午後(ベトくんからメールを受け取る直前)。そんなことを思いついたのは、何かの知らせだったのだろうか。

 そんな今週のリストのメインは、シティ・ヌールハリザタルカンの新譜。シティのほうは今日になって現物が届いたのでさっそく聞いてみたら、バックにマック・チュウとジェニー・チンが入っていて、これまでとは違った都会的な作りになっていた。どうもシティはイメチェンを図っているようだ。でも内容はこれまでと同様、すばらしい。またタルカンは、なんとはじめての英語アルバム。でも、だからこそなのか、逆にトルコらしさを強調した曲もあったりして、ぼくは楽しめた。シティは来月21日、タルカンは28日の発売です。どうぞよろしくお願いいたします。

 

4月26日(水)

 今日も一日原稿書き。でも、いちおう予定通りに進んだので、ちょっと安心の一日だった。
 実は今日まで書いていたのは、当社が新しく配給させていただいているドイツのネットワーク社のアルバムの解説原稿。ネットワークは以前から親しみのあるレーベルだったが、こうして改めてその多彩な音源を聞きながら、やっぱりスゴいレーベルだと実感させられた。何がスゴいって、いわゆる売れ筋みたいなアルバムがまったくないことだ。ほとんどが(少なくとも彼らがアルバムを作った時点では)無名の音楽家。しかもお洒落な音楽、スカした音楽なんてのはひとつもなくて、どれもアクがビンビンに強い、独特の趣向を持ったものばかり。こんなアルバムばかりを出してきて、よくぞまあ26年もレーベルを続けられたと、感心させられる。いや、実は感心を通り越して、ぼくなどは同業者として尊敬させられてしまっているのが、ネットワークだ。
 そんなアルバムが数タイトル、このゴールデンウィーク中には店頭にたくさん並ぶ予定。とっつきにくいと思う人もいるかもしれないけど、どれでもいいからひとつ聞いてみてください。きっとやみつきになりますよ。

 

4月25日(火)

 今日も終日、仕事のみの生活。ただ、二人から回ってきた手間がかかるアルバムの解説原稿はいちおう区切りがついたので、少しだけリラックス気分だ。お昼に文房具を買いに出たついでに、ついワインを1本買ってしまいました。

 ちょっと余裕が出たので、今日は仕事を早く終わらせた。何をしようと思ったかというと、台所を大掃除だ。毎日自分で食事を作っているのは、単に食費節減のためだが(貧乏人は大変です)、おかげで台所がすぐに汚れて仕方がない。そこで目立つところだけも掃除しようと思ったわけだが、はじめてみると、汚いところがどんどん見つかってしまう。ぼくはO型で、本来は几帳面などではないはずなのだが、A型の母親が几帳面を絵に描いたような人だったせいか、こういうことは気になって仕方がない。近いうちに換気扇も含めて、本格的に掃除をすることにしよう。

 そんなわけで、ゴールデンウィークは、やらないといけない仕事は少し後回しにして、3日くらいは完全休養することに決めた。身体も休めたいけど、それ以上に家の片づけをしたい。そんなわけで、4月30日から5月2日まではお休み。絶対に仕事をしません。電話にも出ません。メールも見ません。ここに宣言します。

 

4月24日(月)

 今日もひたすら解説原稿書き。そして夕方からはサンプル盤のチェック。気がついたら、もう夜9時のニュースをやっていた。早寝早起きは身体にいいんだろうけど、起きている間が全部仕事(通勤時間すらない)というのが困りものだ。というか、仕事そのものは嫌いじゃないけど、せめて仕事以外の音楽を聞く時間が少しでもないと、新しい企画が思いつかない。

 

4月23日(日)

 昨日に続いて、今日も6時起き。ひたすら解説原稿を書いた。自分で選んだアイテムだと、少なくとも原稿を書く前に音は聞いているし、原稿のアイディアもすでにある場合が多いが、いま書いているのは昌くんや伊東くんが選んだものなので、ぼくはアタマから聞き直して、原稿のアイディアを練らないといけない。だから、普段の解説解説原稿の倍くらい時間がかかってしまう。思ったよりずっと大変な仕事になりそうだ。

 

4月22日(土)

 今日も朝6時に起きて原稿書き。土曜日恒例のスタジオ作業もお休みにして、ひたすら机に向かった。今日の分が終わったのは、やっと夜7時。なので、食事をしながらサッカーだけは楽しむことができたのが唯一の救い…だったはずだが、こんな日に限って浦和が今季初の敗戦。ガッカリして床に就くことに。

 

4月21日(金)

 1月に宮川くんが辞めた後、アルバイトを採用したのだが、その彼もすぐに辞めてしまって、いま非常に困っている。新しいアルバイトを募集しているのだが、3月ならともかく、4月になってからでは仕事も決まってしまっているのか、なかなか応募が来ない。だから当社はいま深刻な人員不足だ。
 そんなわけで昌くんと伊東くんが出荷作業で大忙し。おかげで彼らが書くはずだった解説原稿がゴッソリたまってしまい、ぼくのところに回ってきた。ぼく自身も今月中に書かないといけない原稿がたくさんあるのだが、ここでさらに9タイトルも増えてしまったので大騒ぎだ。もう休みどころではない。来週の金曜日まで、仕事でびっしり埋まることになるだろう。
 そんなわけで、今日はひたすら原稿書き。きっと、明日も明後日も明々後日もそうだろう。これじゃ、悠長に日記なんて書いている余裕なんてありません。

 

4月20日(木)

 木曜日は毎週恒例のリスト作成日。今週のイチオシは、ジャンゴ・ラインハルトの全盛期録音を集めた2枚組『クレイジー・リズム』(ライス HMR-714)になった。ジャンゴが<ジプシー・スウィング>を完成させた直後であり、もっとも熱い演奏を聞かせた時代でもあった36年から37年の録音を集めた極上ものだ。しかも2枚組で2700円(税抜)! 発売は5月14日です。

 当社がこのところジプシー・スウィングに力を入れているのは、ぼくがこの音楽に目覚めたからではない。フランスのイリスというレーベルから日本での配給を依頼されたからだ。イリスはブラジル音楽なども多く出しているが、ジプシー・スウィングものにもっとも力を入れている会社で、だからこの分野にはすばらしいアルバムが多い。でも、ぼくは自分で配給するとなったら、ただ売れそうなアイテムを選んで、専門家に解説をお願いして一丁上がり、みたいな仕事はできないタイプだ。自分なりにその音楽を研究しようという気になってしまう。おかげでここのところ、ジプシー・スウィング、マヌーシュ・ジャズなる音楽はずいぶん勉強させられることになったが、それもあって『ジプシー・ジャズ・スクール』(ライス HMR-712)の解説は自分で書いてみた。ジプシーたちの音楽については、差別の問題もあって非常に書きにくかったが、内容的にはこれあまで誰も書いたことがないジプシー・スウィング論になったと思う。今週末には店頭に並ぶので、手にとっていただけたら幸いだ。

 昨日届いた『ミュージック・マガジン』を見ていたら、ピシンギーニャの『ブラジル音楽の父』(ライス BSR-5007 )が原田さんの<アルバム・レビュー>で10点満点(エル・スールのサイトに続いて)、さらに中村とうようさんが<ピックアップ>で1ページまるまる使って評されていた。ぼくが編集したアルバムが『マガジン』で1ページを使って紹介されたのは、会社創立9年めにして今回がはじめて。以前はレビューすらされなかったこともあったくらいだから、当社の仕事も認められてきたということだろうか。

 ピシンギーニャのこのアルバムを原田さんは<力作>と評してくれたけど、ぼく自身はそうは思っていない。ピシンギーニャの音楽をはじめて聞いてから、もう30年近く。その間に知ったこと、考えたことの<ほんの一部>を書いただけでも、解説原稿は20000字くらい、すぐ使ってしまう。書き残したことはたくさんあったし、紹介できなかった曲もたくさんあった。ライスの復刻シリーズを作った後は、いつもそんなやり残した仕事のことばかりがアタマに残って、切ない思いをしている。死ぬ前にいつか、これまで原稿で書いてきたこと、そして書き残してきたことを、本にまとめてみたいと思うのは、こんなときだ。

 

4月19日(水)

 忙しいとか、疲れた、なんてことばかり書くのは、ブラジル音楽的に言うと、ボッサがない。だから本来はイヤなのだが、それでも書いてしまうのは、本当に身体が悲鳴をあげているから。これほど疲れを感じたことは最近ちょっとない。いま思えば、ボッサの代名詞ともいえるあの名歌手シロ・モンテイロでさえ、体調が悪かった時期の録音はボッサが希薄だった(50年代のRGE録音)。ボッサのあるなしが体調と密接な関わりがあったことを、いましみじみと感じています。

 なんてことを書いているのも、パリ〜リスボン出張から帰国したのが3月19日以来、1ヶ月というもの、まったく休みなしで働いてきたからだ。たまには休まないと仕事の効率が悪いことはわかっている。でも、会社の状況を考えると、そんなことは言っていられない。いっそ新庄みたいに、今年いっぱいでやめます宣言でもしてしまえば気が楽になるのだろうが、サンビーニャがやめると言っても、ちっともセンセーショナルじゃないし、引き止めてくれる人もいない。でも、今年も昨年や一昨年と同じような状況が続いたら、本当にもう終わりかも、なんてことは、正直思いはじめています。別に同情を引こうと思っているわけでなく、これは本当の話。
 というわけで、以前も書いた格言を。いつまでもあると思うな、親とサンビーニャ。聞きたいと思ったCDは、後回しにしないで早く買っておきましょう。

 あまり意味のわからないことばかりを書いていると、本当にバカになったんじゃないかと思われそうなので、今日はもうおしまい。こういう日もあります、人生には。

 

4月18日(火)

 今日も早朝から仕事。解説原稿でややこしいものを1本脱稿。残りの原稿も完成が見えてきた。そこで午後は打ち合わせを1本。新宿に出かけたついでにタワー・レコードにも寄って、少しだけ営業も。タワーさんがピシンギーニャを視聴機展開してくれているのは嬉しかった。SP時代の音源が視聴機に入ることは珍しいので、知らないで聞いた人はビックリしたかもしれないけど。

 夕方6時過ぎに帰宅。それから12時まで再びパソコンに向かって仕事。取り引き先とのメールのやり取りに加えて、次のシャルレス・ガヴィンの復刻プロジェクトのお手伝いとか、ウォーメックスのコンファレンスの手続きとか(どうも次は何かスピーチをしないといけないことになったらしい)、ライスUK関係の仕事とか、原稿書き以上にややこしい仕事が迷い込んでくる。全部ぼく以外にはできない仕事だから、誰かに頼むわけにはゆかない。会社のほうも商品化〜出荷作業に忙しいようで、アルバイトを募集しているのだが、なかなか応募がないので、そちらもぼくが手助けしないといけなくなった。今週の木曜日に久しぶりに休みを取ろうと思っていたけど、これじゃ無理だ。ゴールデン・ウィークは次の自社制作アルバムのために全部仕事の予定だし、いったいいつになったら休めるのだろう…。

 

4月17日(月)

 今日も朝から自宅で解説原稿書きと、来月のリリースの準備。それだけで一日が終わってしまった。ここのところぼくが解説を担当するアルバムが多いので、どうしても自宅作業が増えてしまう。ただ、こんなに良い天気の日に、家にこもりっきりというのは、さすがにちょっと辛い。お昼過ぎに暖かくなってきた頃には、仕事なんてほっぱらかしてどこかに散歩に出たい衝動にかられた。

 そんな気分を鎮めてくれたのが、レユニオンのマロヤだ。相変わらず、仕事が進まないときとかにはこれをかけて、気分を高揚させている。今月発売したサルム・トラディシオンは、おかげさまで好評のようで、友人たちからも面白かったというメールをいただいた。そんな声に励まされて、来月はもう2タイトル、この分野の大御所たちのアルバムをリリースしようと思っている。
 マロヤはパーカッションと歌だけというシンプルな音楽だが、複数の打楽器が絶妙に絡み合うそのアンサンブルは、聞き込むと独特のコクがあって、クセになる。野卑に見えて、すごく繊細な音楽だ。あまりに繊細すぎて、わからない人にはチンプンカンプンかもしれないけど、例えば当社から出たチローロ『バトゥカーダ・ファンタスチカ』を気に入ってくださったファンにはお勧めできると思う。まずは今月出た2枚をお見逃しなく。来月の発売は詳細が決まり次第お知らせします。

 

4月16日(日)

 最近は日曜日もほとんど休むことなく働いている。ただ、困るのは、日曜日は掃除とか洗濯とか食料買出しとか、身の回りのこともやらないといけないことだ。おかげで日曜日はいつも忙しい。今日も朝早く起きて、午前中に掃除や洗濯をすべてを終わらせて、午後からやっと仕事。それが夜までだから、休日という気が全然しない。

 それでも日曜の仕事はゆったりして感じられるのは、会社からも外国の取り引き先からも連絡が入らないからだろう。電話を受けたりメールをチェックしたりする必要がない分、仕事に集中できるし、おかげで進み具合も早い。そういう意味で、毎日が日曜日だったらいいのにと、ぼくも思います。

 今日は、解説原稿も書いたし、夜には次の復刻ものプロジェクトも選曲も進められた。選曲のほうはまだ前半しかできていないが、あと2週間くらいの間に選曲をすべて終わらせて、ゴールデンウィークには解説原稿に取り組みたいと思っている。そして6月に発売する新録ものの仕事に手をつけて、これも来月中に完パケできれば、7月からはまた新しい仕事をスタートすることができる。夏はどこか涼しいところでレコーディング、なんて考えてみたのだが、はたしてそれほどうまく行くものかどうか。

 

4月15日(土)

 土曜日は基本的に制作日。ウィークデイは会社仕事に追われてしまうので、自社制作のアルバムに時間を割けるのは週末に限られてしまう。特にスタジオ仕事ができるのは土曜日だけだ。そんなわけで、今日も原稿書きは朝のうちに終わらせて、午後はスタジオでミックス作業。6月に発売予定のアルバムのミックスを、今日でやっと半分ほど終わらせることができた。

 そんなスタジオ作業の後、夕方に帰宅して、7時からJリーグ観戦というのも、最近の土曜日のお決まりのパターンだ。いつも夕方は外国からのメールの返事に追われるのが、土曜日の夜は取引先からのメールがないので、ゆっくりすることができる。今日見たのは、ガンバ大阪と横浜マリノスの試合。手に汗握るすばらしい熱戦で、サッカーの醍醐味を堪能させてもらった。

 それを放送していたのはNHKだが、昨日だったかの新聞によると、NHKが値下げをする代わりに、視聴料を払わない人に罰則をつける方向で話を進めているのだとか。これを知って、改めてあきれてしまった。どうしてあの人たちは、こうも視聴者たちに嫌われることばかりを思いつくのだろう。以前もこの欄で書いたけど、いまだってNHK料金は別に高いわけではない(払っていない人の多くは、高いからではない)。なのに、なんで払わないのか。その理由をしっかり考えようともせず、値下げをするから払わない奴は罰則だ、罰金だとエラそうな態度を取られたら、ますます払う気が失せてゆく。こんなこと、素人だってわかりそうなものだ。税金もそうだけど、もっと気持ちよく払える状況を作ってゆくことがまず必要じゃないだろうか。国に対してはいちおう選挙権なるものがあるが、NHKにはたとえお金を払っても、その運営に関して何の権利もないのがぼくたちだ。その状況をまったく変えようとせず、ただ払わないと罰金だぞとスゴまれても、それじゃヤクザの脅しと同レヴェル。ますます払うものかと頑なになりますよ。

 

4月14日(金)

 この仕事をやっていて、ぼくがもっともイヤなのが発売予定日の変更だ。でも残念ながら、今月は2つも予定変更をせざるをえなくなってしまった。もちろん、ぼくらの問題ではない。すべてを準備して予定通り待っているのに、製品がちゃんと予定通りに届かないことになった。これじゃ、ぼくらはどうしょうもない。

 多くの取り引き先は、新作を発売する場合、発売前にまずサンプルをMP3かCDRで送ってくる。当社は、ここの時点で発売するかどうかを決める。そして製品が完成する(と彼らが言う)2週間後くらいに、日本での発売日をセットする。予定通りにゆけば、これで十分のはずだ。でも、先方が予定通りに製品を作ってくれないと、どうしょうもなくなってしまう。当社が発売日を変更するほとんどすべてが、この理由だ。
 それなら製品が完全に出来上がってから発売日を決めればいいじゃないかと言われるかもしれないが、そんな簡単な話ではない。ノロノロしていると他のディストリビューターを経由してそのアルバムが日本に入ってきてしまうからだ。いくら独占配給の契約をしていても、他の国のディストリビューターから入ってくるものまではストップできない。そんな海賊ディストリビューターなんて、ヨーロッパにはウジャウジャいるし、日本のお店も、他よりも早く売りたいこともあって、どうしてもそんなところから注文してしまう。
 さらにもうひとつ、そうして輸入盤で一度入ってきてしまったアイテムをディストリビュートするのは、すごくやりにくい。これも大きな問題だ。ハダカの輸入盤なんて、いまどきそうは売れるものではない。だから、そうして海賊輸入されてしまったアイテムは、その時点で売れなかったアイテムというレッテルが貼られてしまう可能性が高い。そうなると、今度はいくらぼくらが発売してプロモートしても、お店のほうでは大きな注文はしてくれない。だから当社としては、そんなレッテルが貼られるまえに発売してしまわないといけないわけだ。

 ワールド・ミュージックのアルバムなんて、そうはたくさん売れるものではないのに、それでもこんな問題が起きる。ほんとうに世知辛い世の中だと思います。もっとおおらかに仕事ができる環境が生まれないものだろうか。

 

4月13日(木)

 恒例のリスト作成日。今週のメインは、ルカ・ムンダーカという女性歌手のデビュー作と、ケレティギ・ジャバテやジェリマディ・トゥンカラ、ハビブ・コワテらが参加したマリ音楽のライヴ・アルバム『マリ音楽の夕べ(仮題)』。両方とも5月14日発売です。よろしくお願いいたします。

 この2枚で、ユニークなのがルカさんのほう。南米チリ生まれ。5歳のときに家族とともにブラジルのサンパウロ州の田舎町に移り住み、そこで音楽に目覚め、ギターを手に取り、作曲も開始。でもそれからサンパウロやリオではなく、ニューヨークにやってきてしまったというから面白い人だ。自分がやろうとしているブラジル音楽は、ニューヨークのほうがやりやすいと考えたのだろう。今回のアルバムはリオ録音(しかもセルフ・プロデュース)だけど、ボサ・ノーヴァの感覚を残しながら良質のMPBに仕上がっていて、確かにこういう大人がじっくり聞けるアルバムは、ブラジルではビスコイト・フィノくらいしか作らない。

 60年代の後半から70年代にかけて、ボサ・ノーヴァの音楽家たちの多くが外国に飛び出してしまった。ジョビンはアメリカ、バーデン・パウエルはフランスに渡っている。バーデンなんて、その後20年近くもフランスを拠点に活動していたらしく、ときどきブラジルに戻っても、リオには家もなかったようで、コパカバーナにあるアパ・ホテルというところに泊まっていたのだそうだ(実はここ、ぼくがリオにいるときの定宿。支配人さんと仲良くなって、バーデンの宿泊者カードを見せてもらった)。
 なんで外国暮らしが長くなったのか。それは単純な理由だ。自国にいては、ロクな仕事にありつけなかったからだ。ボサ・ノーヴァはブラジルでは非常に短い間しか受け入れられなかった。あれほど洗練された音楽を当時楽しんだのは、ブラジル人のごく一部。マーケットが巨大化していった60年代後半からは、ますます小さな存在になった。その後はいわゆるロック世代の時代。ボサ・ノーヴァはトロピカリア世代に追い出されてしまったとも言えるかもしれない。
 いまのブラジルだって、状況はほとんど変わらない。ファンキだ、アシェーだと言っている時に、ブラジル独特の洗練された音楽性なんて、受け入れられるわけがない。ショーロがいまでも生き延びているのは奇跡的らくらいだ。ブラジルに行って、レコード店を覗いてみるとそのことがよくわかる。ぼくらが普段紹介している本来のブラジル音楽なんて、ブラジルではなかなかみつからない。日本のお店のブラジル盤コーナーとのあまりの違いに愕然とされる方がほとんどだろう。
 ルカさんがそんなブラジルをあきらめて、アメリカに渡ったのも、だからわかる気がする。しかもルカさんが偉いのは、ニューヨークを拠点に活動しているからって、ジャズ・フュージョンなんかに染まらず、ちゃんとブラジル音楽をやっていることだ。今回は録音もブラジルだが、腕達者なセッション・ミュージシャンたちを従えて、自分のやりたい音楽をとことん追求している。こんなアルバムをセルフ・プロデュースしてしまう歌手なんて、ブラジル本国にはまずいないだろう。
 いま書いたように、発売は5月14日。発売されたら、ぜひチェックしてみてください。女性ヴォーカル好きにも楽しんでもらえそうな内容ですよ。

 この10月に開かれるフェスティヴァル・コンダ・ロータの日程と出演アーティストが決定したようだ。詳しい情報なども含めて、来週にでも別ページでご紹介します。

 

4月12日(水)

 今日は外出しないで終日自宅作業。集中して仕事ができたおかげで、来月リリースの新譜をだいたい決めることができた。ちなみに今日だけでも聞いたサンプル盤は15枚近く。最近一ヶ月を合計すると、100枚以上になるかもしれない。おかげで自由時間に聞くために買ったCDやレコードはほとんど聞けず…。ポルトガルで買ったコンパクト盤、まだホコリをかぶったままです…。

 先に発売したレユニオンのマロヤのアルバム2枚(ナタリー・ナティエンベサルム・トラディシオン)は、おかげさまでご好評いただいているようだ。まったく無名のアーティストということで、売れ行きはまだまだ全然ダメ。でも、せっかくの新しい音楽の動きだから、大事にプロモートしてゆきたいと思っている。
 とは言ったものの、こういうときにいつも困ってしまうのが、こんな知られざる音楽をわざわざ取り上げてくれるメディアがあまりに少ないことだ。ワールドのレコードばかり取り上げたって、雑誌の売り上げに貢献できるわけはないし、それを知りながら無理に頼むというのも申し訳なく思ってしまう。かと言って、当社のサイトでぼくがいくら宣伝したって、効果はたかが知れている。結局、こちらからは強く言えず、ただ材料をお送りして、取り上げてくださるという知らせを待つだけ、というのが現状だ。ライターをやっていた時代、忙しいさなかにレコード会社から<今度の新譜、お願いします>みたいな電話がかかってきて、すごくうるさく感じたことが多々あった。それだけに、それと同じ思いを他のライターさんや雑誌編集者さんにさせてしまう気には、なれないんですね…。こんな弱腰じゃいけないとは、いつも思っているのだが…。

 

4月11日(火)

 朝から会社に行って、サンプル盤のチェック。今後のプロジェクトのために、ドイツのネットワーク・レコードが90年代に発売したアルバムをアレコレと再チェックしてみた。熱心なファンの皆さんならご存知のように、ネットワークは膨大なカタログを持つ会社だが、その多くが独自制作。だから他では手に入らない貴重音源がたくさん存在する。しかも、最近のアルバムはともかく、10年以上前の音源はこのところほとんど入荷していない。よほど古くからワールド・ミュージックを熱心に聞いているファン以外は、存在すら知らないアルバムがほとんどじゃないかと思うのだ。なので、若いファンにはまさに宝の山。だから当社としてはじっくり紹介してゆこうと思っているわけだ。

 どのレーベルと仕事をするときもそうだが、当社は単に新作をプッシュしたりするだけの付き合い方はしたくない。せっかくレーベル契約をしているのだから、そのレーベルが持っている音源の本当に良い部分を、古いものも含めて大事に取り扱ってゆきたいと思っている。それは面倒な作業だが、でもコツコツとやってゆけば必ず見返りがあると思うからだ。例えばワールド・ミュージック・ネットワークの<ラフ・ガイド>シリーズを全部紹介するのに3年かかったが、いまでは各店から毎月バック注文をもらっているし、ラスやスターンズも、古い貴重盤はできるだけ長い間カタログに残して、コツコツと売っている。サリフ・ケイタの『ソロ』シェブ・ハレドの『クッシェ』マラヴォワの『ジュ・ウヴェ』カリの『ラシーヌ』…。こんなアルバムが、いま爆発的に売れることは考えられないが、でもカタログに残しておけば、少しずつは動くものなのだ。結果的にそんな当社の地道な姿勢が評価されて、ヨーロッパの新しい取引先が増えているのだと、ぼくは思っている。

 

4月10日(月)

 朝からひたすらライス盤の解説原稿書き。ただそれも午後にはいちおう終わり、その後は来月の新作リリースの予定表を作ることに。これがどうしても思った通りに行かなそうなので、少々困ってしまった。
 以前この欄で書いたように、来月も自社制作盤を予定しているのだが、ゴールデン・ウィークで動きがストップしてしまう(ぼく自身が休むからでなく、会社や印刷所、デザイナーさんたちが休みに入ってしまう)ため、入稿はどうしても連休後になってしまう。でもそうなると発売は早くても5月の最終日曜日あたり。当社は6月にも新録アルバムの発売も考えているので、その間のスケジュールは少しタイトになってしまいそうなのが困りものなのだ。
 なんでそんなにあわてているのかというと、7月になると、普段はワールドのアルバムなんて出さないメイジャー各社が、どうでもいいアルバムを大量発売するからだ。いくらどうでもいいアルバムでも、お店はどうしてもそれの対応に追われてしまうので、こちらはいつも以上に営業がしにくくなってしまう。だからプッシュ商品は、できるだけその前に発売しておきたいと思っているわけだ。いっそ、今年はメイジャー各社が夏にワールドものを出さないと決めてくれるとありがたいのだが…。

 

4月9日(日)

 イラクの状況が厳しいことはしばしば伝えられるが、今日の朝刊を読むと、とうとう内務大臣までが内戦状態にあることを認めたようだ。ぼくらが新聞やニュースで知るよりも、状況はもっともっと厳しいということだろう。本当に痛ましい話だ。
 そんな状況を取り仕切るためにはもっと強力な政権が必要だというのが内務大臣の発言のようだが、これはアメリカにいま以上の強い援助を求めているということだろう。でも、こうなったらもうアメリカなんて役に立たない。いっそサダム・フセインにもう一度戻ってきてもらうしかないのかも、なんて思ってしまう。理由はひとつ。アメリカの軍事力を持っても鎮圧できない内戦を、サダム・フセインの経験をもってすれば鎮められるかもしれないと思うからだ。
 彼はその長い在任期間にこの国を取り仕切っていたわけだが、それは多民族(多宗教および多宗派)を共存させるための、なんからの伝統的な手法を知っていたからに違いない。スンニ派とシーア派がどうして争うのか、なんてことは、論理では理解できても、それを防ぐための有効な手段を見つけるのは難しい。それを長い期間に渡って達成していたのがサダム・フセインだ。そんな彼が持っているはずの伝統的なノウハウをわからずに、(アメリカの言う)民主的な選挙なんかをやっても、国なんてまとまるわけはない。
 誰もが思っているように、そうでもしないと、イラクは間違いなくベトナムと同じ状況になる。それでホー・チ・ミンのような指導者が登場してイラクが本当の意味での独立を果たせばいいじゃないかと言う人がいるかもしれないが、ぼくはそうは思わない。そうなる前にたくさんの人々の血が流れることがわかっているからだ。人間は過去に学ばないといけない。できるだけ人が死なないで済む方法を考えるのが、人間だろう。無意味にたくさんの人間が殺されることが良いわけがない。本当に痛ましい。
 幸い、サダム・フセインはまだ生きている。彼の裁判を進めるより、もっと有効な使い道を考えたほうがいいのではないか。

 話題はガラリと変わって、音楽の話。今日、探し物があったので新宿と池袋に行ったので、ついでにタワー・レコードに寄ってCDを少し買ってきた。そこで入手したのがエレーナ・ブルケのトリビュート盤。ご存知、アオラさんの自社制作アルバムだ。解説を読むと、どうも当初はエレーナ自身のアルバムを作るつもりだったようだが、彼女が亡くなってしまったことで、トリビュート盤に変更したのだとか。でもエレーナが亡くなったのが2002年だから、そうなると3年か4年ごしのプロジェクトだったことになる。なんとしてもアルバムを完成させようという熱意には、本当に頭が下がる思いだ。
 アオラさんは、日本では珍しいオリジナル音源を作るワールド・ミュージックのインディ・レーベルだ。というより、日本でこんなことをやっているのは、アオラさんと当社だけ。他は誰もやっていない。だからこそ、アオラさんの自社制作盤はいつも購入しているし、応援したいと思っている。アオラさん、これからも一緒に頑張ってゆきましょう。

 

4月8日(土)

 朝早く起きて帳簿整理の続き。それが終わった頃に税理士さんがやってきて、月例の打ち合わせ。午後は昌くんと一緒に自社制作アルバムのミキシング。自社制作のミックスは、週に一日しか時間が取れないので、なかなか進まないが、これでやっと半分くらい片付いた感じだ。この分だとなんとか今月中に全曲終わるだろう。ゴールデン・ウィーク中にマスタリングや解説原稿を終わらせられれば、6月には発売できるかもしれない。
 そんな新録もの前に、復刻もののアルバムももう一枚作らないといけないし、他にも今月はまだまだやることがたくさんある。この調子だとゴールデン・ウィーク明けまで、休みを取れないかも。1泊でも2泊でもいいから、温泉とかに行ってゆっくり体を休めてみたいものです。

 

4月7日(金)

 早朝から金曜恒例の雑務整理。そして午後は事務所で帳簿整理。さらに夕方には打ち合わせが2本。帰宅は10時過ぎになってしまった。もう疲れすぎて、日記を書く余裕がありません。

 

4月6日(木)

 今日はリスト作成日。新譜ニュースを作って各店に送らせていただくわけだが、これがライスや解説付きシリーズだけではなく、普通の輸入盤なども含むので、けっこうな分量になる。なので木曜日のサンビーニャはとても忙しい。
 そんな中で、今週のメインはメルジャン・デデの新作。ご存知、トルコのダブルムーンの看板アーティストのひとりだ。ダブルムーン関係になると、いくらぼくでも解説原稿は書けない。サラーム海上さんの得意分野なので、彼に解説をお願いした(4月30日発売予定)。
 そしてもう一枚のライス盤は、エトラン・フィナンタワという、ニジェール出身のバンドのデビュー・アルバム。こちらはぼくが解説を書かせてもらう。一言で言うと、ティナリウェンをさらにもっと野生的にしたようなデザート・ブルース。ティナリウェンを最初に聞いたときも、エラく野暮っいバンドが出てきたなと驚かされたが、こちらはもっとスゴい。当然、ぼくはかなり気に入っている(こちらも4月30日発売)。
 そしてもう一枚の隠れプッシュ・アルバムが、オレンジ・ブロッサムというアラブ系移民たちのグループ。きっと移民第3世代あたりに当たるのだろう。ハードでナマナマしいロック・サウンドが眩しい。若いワールド・ミュージック・ファンなら、まず飛びつくのがこちらだろう。

 さて、話はエトラン・フィナンタワに戻る。実はこのグループのことを知ったのは1年半くらい前。一昨年のウォーメックスでのことだった。あれは初日だっただろうか、会場まで向かうバスで偶然となりに座ったサンドラさんというドイツ人女性が、いまニジェールに住んでいて、そこのバンドが気に入ったのでプロモートしたいと思ってウォーメックスに来たんだけど、いったい誰に売り込んだらいいのか見当もつかない、なんて質問してくるものだから、相談に乗ってあげたことがあった。とりあえず、手元にあるという音の方を聞かせてもらったら、これがいままで聞いたことがないほどヒドい録音(でも、内容はすばらしいものがあった)。これじゃ、もう一度レコーディングしなおさないといけない。そうなると、ディストリビューターではなく、レコーディングから一手に引き受けてくれる会社じゃないとダメだということで、ちょうど新しい録音プロジェクトを探していたワールド・ミュージック・ネットワークのフィル・スタントン社長に紹介したのだった。
 それがこうして製品になってくれたのだから、ぼくも非常に嬉しい。サンドラさんは、いまはコンゴに住んでいて、ときどきメールをくれるのだが、きっと彼女も喜んでいることだろう。さっそく感想をお知らせすることにしよう。

 ウォーメックスというのは基本的にはレーベルやディストリビューターたちの交渉の場だが、ぼく自身はそんな交渉などより、こういった出会いを楽しむ場だとも考えている。サンドラさんだけでなく、ウォーメックスに来たもののどうしていいのかわからずに困っている人はたくさんいる。そういう人たちに対して、ウォーメックスの人たちは基本的にすごく優しい。自分の仕事とは関係ない話でも、けっこう親身になって相談に乗ってくれる。もちろん全員が全員そんな親切なわけではないが、親切な人がいる比率がミデムなどよりずっと高い。そんな家族的な雰囲気がウォーメックスの良さなのだ。そしてそんな交流の中から友情が生まれ、それがキッカケになって意外な仕事が迷い込んでくるときもある。いま思えば、ティナリウェンを当社が配給できたのは、正式な交渉などではなく、まったく個人的な出会いがキッカケだった。

 しかしそれにしても、サンドラさんのような人に知り合うと、女性というのは本当に行動的だとつくづく思う。実はサンドラさんは、旦那さんの仕事の関係でアフリカに住むことになっただけで、アフリカ音楽のことなんて、ぜんぜん詳しくない。サニー・アデのことも知らなかったくらいだ。それでも、地元のクラブで見たそのバンドを気に入り、そのバンドが世界に通用するのかなんてまるで考えず、自分から進んでウォーメックスにやってきてプロモート活動をしていたのだ。もちろん経費は自腹。男でこんな無謀なことをする人が、はたしているのだろうか。
 実は同じエッセンでのウォーメックスで出会った女性にホープさんという人がいたが、その人もまったく同じタイプだった。バックパッカーとしてインドネシアのスマトラに行き、そこで偶然見たマルサダというバンドを気に入って、自費でレコードまで作ってしまったというから、驚きだ。彼女もまた、エルフィ・スカエシロマ・イラマも知らなかった。それどころか、マルサダというバンドが海外で受け入れられるのか、なんてこともまるで考えず、とりあえず先に行動に移してしまったのだ。そのアルバムは当社から配給させていただいているが、そうなったのは音楽の内容以上に、彼女の強烈な熱意に打たれてしまったからだと思う。それくらい、彼女は熱心だった(単にぼくが女性の売り込みに弱いからという説もあるが)。
 ぼくもこれまで何度も自費でレコードを作ってきたが、ホープさんやサンドラさんほど直感的な行動を取ったことはない。だから、彼女たちをうらやましく思うときもある。良い音楽が生み出すには、ときにはそんな思い切りの良さも必要なのかもしれないと思うからだ。行動の迅速さから生まれた勢いは、ときには音楽にも乗り移って、何物にも変えがたい効果を生み出す可能性がある。じっくり考えて作ったレコードなんて、案外つまらないものが多かったりするものなのだ。
 そんなことを一昨年のウォーメックスで考えたことを、いま思い出した。

 

4月5日(水)

 午前中のうちに昨日書いた原稿を見直して入稿。午後も自宅で作業を続け、もう1本の解説原稿と、たまっていた会社仕事をやっつける。まだ疲れが抜けないようで、仕事が思ったように進まないのがもどかしい。

 

4月4日(火)

 昨日は一日中歩き回り、しかも遅い便で帰京。おかげですっかり疲れてしまったようだ。こんな日はなかなか仕事が進まない。いちおう解説原稿を1本書き上げたのだが、内容はいまいち。明日の朝にもう一度見直したほうが良さそうだ。

 ちなみに今日書いていたのは、今週末に発売になるレユニオンの若手グループ、サルム・トラディシオンの『ファンム』(ライス HMR-5009)の解説。書くのに時間がかかっているのは、聞けば聞くほどすばらしい内容で、このすばらしさをどう伝えるべきかと悩んでしまっているからだ。どのように面白いかは解説でたくさん書いたので、ここでは触れない。とにかく、今週末にお店でぜひチェックしてください。いまどき、パーカッションと歌とコーラスだけでこれほど聞かせてくれる音楽なんて、そうはあるわけがない。キューバのルンバ・グァグァンコーをお好きな人には特にお勧めの一枚です。

 今週は入荷が少なめ。でも、解説を書いて出荷しないといけないアルバムはたくさんあるので、明日くらいまでは自宅作業が続きそうだ。早く疲れを癒して、仕事を頑張らないと…。

 

4月3日(月)

 夕方まで徳島に滞在。所用を済ませる。そして夜の最終便で帰京。

 

4月2日(日)

 今日も朝から原稿書き。そして今月から来月にかけてのライス盤のリリース予定の作成。ただ、さすがに休んでないので、疲れがたまっているのか、仕事がまったくはかどらない。結局、原稿書きは途中であきらめて、リリース予定と、それぞれの取り引き先への連絡などで仕事を終わらせた。5月中旬まですでに予定がビッシリ。自社制作盤もあるので、忙しくなりそうだ。

 午後遅い時間の便で徳島へ。

 

4月1日(土)

 土曜日でこんなに天気が良くて、しかも桜が満開。仕事をする気分にはどうしてもならない一日だ。ただ、たまっている仕事がこうも多いと、ゆっくりお花見というわけにはゆかない。そんなわけで、午前中はいつものように自宅作業。来月発売予定の自社制作盤の選曲作業をはじめる。そして午後は会社に行って、また別の自社制作アルバムのミックス作業。夜も打ち合わせの予定が入っていたのだが、先方の都合でキャンセルになったので、仕方ないから自宅に戻って、朝やっていた自社制作アルバムの選曲作業の続きをやった。復刻アルバムのほうは、ほぼベーシックなアイディアがまとまってきた感じ。

 自社制作ものが2枚同時進行なんて、サンビーニャでは滅多にないことだが、本当のことを言うと、実はもう1枚、音のほうはほぼ出来上がっているのに、ジャケットの都合でペンディング状態になっているアルバムがある。だから合計3枚が同時進行…。でも、それぞれ音楽のタイプが違うせいか、ぼく自身はあまり苦にならない。逆に、ぼくにとっては、毎日同じような音楽ばかりを作らないといけないほうが、かえって耐えられないだろう。

 違う種類の音楽と言えば、解説原稿のほうも、ここのところ毎日違ったジャンルのものを書いている。しかも、ほとんどが専門分野じゃないものなので、調べるための時間がどうしてもかかってしまうが、でも反面、調べることが多いということは、新しい発見も多いわけで、けっこう楽しい。反対に、すでに何度も書いてきたようなアーティストの原稿は、早く終わるけど、ちっとも楽しくない。原稿としての出来はどっちが良いのかわからないけど、仕事をするほうとしては、楽しいほうがいい。

 そうそう、深夜にエル・スールのサイトを見ていたら、ピシンギーニャの『ブラジル音楽の父』(ライス BSR-5007)に、最近では珍しく10点満点がついていた。なのに順位が10位なのが不思議なところだが、いずれにしても励ましになります。原田さん、どうもありがとうございました。

 

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