これはティナリウェン以来の衝撃だ!
エジプト・カイロで秘かに息づいていたスーダンの伝統音楽を現代化!
アラブ音楽の中心地として知られるエジプトのカイロ。ただ、その地には様々な出自の人々が暮らし、その表面下ではイスラームとは異なる文化も存在しています。特にエジプト南部からスーダン北部に横たわるヌビアと呼ばれる地域からはかなりの数の人々が移り住んでいて、そこで独自の文化を形成していることはよく知られています。そしてそんなヌビア〜スーダンの文化と非常に関わりの深い音楽を演奏するが、このランゴというグループです。
本来ランゴ(Rango)とは、スーダンがエジプトに征服された19世紀前半に誕生したという土着のシロフォン(木琴)の事。これはスーダン式の結婚式や屋外パーティなどにおいて盛んに演奏されていた楽器で、20世紀の前半ごろまではとてもポピュラーなものでしたが、その後廃れてしまい70年代の終わりには絶滅してしまったと考えられていました。しかし90年代になって、そのランゴの演奏家の生き残りがカイロにいるとテレビのドキュメンタリー番組で紹介され話題になりました。そしてそのランゴ奏者の生き残りこそが、このグループの中心人物ハッサン・ベルガモンその人でした。
そんなハッサンを中心に、その幻の楽器ランゴをグループ名に冠して結成された彼らのデビュー・アルバムがこちらです。ここで彼らが取り上げているのは、スーダン北部をはじめ、エチオピアやイランなど、アフリカ北部〜中東各地に広く分布している“ザール”と呼ばれる精霊や儀式を中心とした民間信仰から生まれた古い伝承曲やヌビアの婚礼ソングなど。そしてハッサンによるランゴの演奏や歌をメインに、シムシミヤ(小型の琴)やタンブーラ、さらにスプレー缶をリサイクルして作ったシェイカーなどのパーカッション類を交えた祝祭色豊かなサウンドなどを、ファンキーに聞かせてくれます。
多くの曲でメイン・ヴォーカルとコーラスとのコール&リスポンスがフィーチャーされるなど、アフリカ音楽的な要素も感じられますが、スーダンやエジプトの歌謡で聞かれるような、ほのかなアジア風味も時折顔をのぞかせます。また曲によってはプログラミング・サウンドも加わりますが、この音楽が本来持っている伝統風味を大きく崩すものではなく、そんなテクノロジーがさりげない程度に使われている点に、センスの良さを感じさせます。
ワールド・ミュージック・シーンに届いた久々の新鮮なニュースと言えるこのグループに、この夏注目が集まりそうです。
試聴はこちら(youtube)