瑞々しい感性とサウンドでよみがえったモンゴリアン・ミュージック
世界の知られざる音楽を紹介する英ネットワーク社の<イントロデューシング>シリーズ。過去にはケニアのミニマル・ダンス・ミュージック・グループ<ケンゲ・ケンゲ>や、砂漠のブルースのニュー・カマー<エトラン・フィナタワ>などをリリースし、ワールド・ミュージック・ファンを喜ばせています。そして今回も新鮮な驚きを与えてくれるグループを紹介してくれました。
杭盖(ハンガイ)は中国・北京で活動するグループ。中国には55以上もの少数民族が存在すると言われていますが、彼らもそれに属するモンゴル系民族です。メンバー全員が中国の内モンゴル自治区出身。中心人物となる伊立奇(イイチ)は現在26歳になる若手のミュージシャンですが、このグループ結成以前はロック・バンドのレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(!)に影響を受けた人気パンク・バンドのフロントマンだったと言うから驚きです。そんな反権力的なバンドに疲れた彼は、幼いころに聞いていたモンゴルの音楽を<発見>します。
その後、伊立奇は2年にわたって帰郷して本格的にモンゴル音楽を学習。モンゴル音楽を代表する歌唱スタイルであるホーミー(ホーメイ)のテクニックの他、モンゴル独特の楽器演奏も修得します。満を持して北京に戻り、杭盖を結成するとたちまち話題になり<北京で最もソウルフルなバンド>とメディアで評価されるようになり、中国国内やドイツなどでツアーを行っています。
そんな中でリリースされたのがこちらのアルバム。メンバーはそれぞれにモンゴルの楽器を操りますが、それ以外にも曲によってギターやベース、パーカッションが加わります。彼らがパフォームするのは伝承曲が多くを占めますが、そのアレンジは現在の感性が息づいた洗練されたもの。といってもエレキギターがたっぷりとか、打ち込みのダンス・ビートを取り入れたなどの類いではないことは言わずもがな。アクースティックの瑞々しいサウンドでモンゴルのフォーク・ミュージックを生きかえらせています。
モンゴルの民俗音楽のCDはたくさんありますが、このような<現役>のフレッシュなバンドのCDなどもちろんこの他には存在しません。アジア音楽に興味を持つすべての方に強力プッシュ!