マヌーシュ・スウィング・ファン必聴！　偉大なるジャンゴを世界中の音楽家たちがトリビュート！

　歴代のジャズ・ギタリストの中でも、マヌーシュ（ジプシー）・スウィングという独自のスタイルを作り上げ、唯一無比の個性を聞かせてくれたのがジャンゴ・ラインハルト。これまでに多くのフォロワーを生んできた偉大なギタリストをトリビュートした作品は数多くありましたが、これはちょっとほかに類似品のない新機軸の追悼作品といえるものです。
　ジャンゴ・ラインハルトは1910年生まれなので、今年がちょうど生誕100周年にあたります。ベルギーやフランスを放浪するマヌーシュの子供として育った彼がプロとして活動を開始したのは1920年代前半でした。その後火災による怪我のため左手の薬指と小指が不自由になってしまった彼でしたが、独自の奏法を編みだして見事復帰を果たしました。そんな彼の全盛期と言われるのは1930年代。ヴァイオリン奏者ステファーヌ（ステファン）・グラッペリと活動を共にしていた時期でした。その後1940年代後半にはビ・バップの影響を受けた作品も残すようになった彼でしたが、1953年に43歳という若さで亡くなってしまいました。
　このアルバムは、そんな太くて短い人生だったジャンゴの音楽に多大なる影響を受けた世界中のアーティストたちの作品を収録した、これまでで最も間口の広いトリビュート・コンピレイションといえるものです。制作はドイツの最も古いインディー・レーベルのTRIKONT。
　収録されているのは、ジャンゴ名義のトラックや、グラッペリとのグループ“ＱＨＣＦ”などの歴史的音源のほか、ジャンゴの遠縁にあたるというドイツの若手女性歌手ドッチー・ラインハルトや、ジャンゴ直系の仏人ギタリスト、ビレリ・ラグレーンといったマヌーシュ・スウィング系が中心。しかし本作が凄いのはそれだけで終わらず、マヌーシュ文化と直接関係のない地域の音楽家の作品や、ヒップホップ、フュージョン、ガレージ・ソウル、エレクトロ・スウィング、ザディコ、さらにはハワイアン・スタイルによるジャンゴ・ナンバーまで取り上げている点です。そこには何と大阪で活躍する日本人アーティスト“ZaZa avec Cafe Manouche”の曲も収録するなど、これまでにはなかった幅広さ、そして自由な発想による編集がなされてる所が、このコンピレイションの最大のセールス・ポイントといえるでしょう。
　生誕100年を機に、ジャンゴの音楽的広がり、そしてその影響力の強さを改めて再認識させてくれる１枚。これは要注目です！

トラックリスト
01 Bouncin' Around(Rhythm In G Minor) / DJANGO REINHARDT
02 Mr. Soft /KORMAC
03 Hold Tight / TONY MURENA & SON ENSEMBLE
04 Swing 39 / G. Rag Y Los Hermanos Patchekos
05 Je suis seul ce soir /CAFE ROYAL SALONORCHESTER
06 Girls Like Me-Django's Theme /DOTSCHY REINHARDT
07 Les yeux noirs / Bireli Lagrene
08 Appel Direct(Appel Indirect) /QUINTETTE DU HOT CLUB DE FRANCE
09 Multin /GIPSY.CZ
10 Tschorn kellil pro bollipen / Titi Winterstein Quintett
11 Caravane /ZaZa avec CefeManouche
12 Droujba / Lida Goulesco
13 La recherche de Django Reinhardt /HOO DOO GIRL
14 J'vas t'voir au fond d'mes reves/MAMA ROSIN'S FRERES SOUCHET
15 Greek Swing/DEAD BROTHERS
16 The C-Jam Blues/MANO RENA
17 Helmi's Bebop Nr. 3/ Coco Schumann
18 Moon Blue/ DAVID REINHARDT TRIO
19 Manoir de mes reves/TIKI DADDY
20 Rumba de Django/ Pierre Barouh &Dominique Cravic