いまは亡きアリー・ファルカ・トゥーレが残した2枚の極上共演盤!!
いまは亡きアリー・ファルカ・トゥーレ(1939−2006)は、ワールド・サーキットがもっとも力を入れてきたアフリカのアーティストでした。同レーベルで発表されたアルバムは、なんと計8枚。今回はその中でも幅広いファンにご注目いただけそうな2枚のアルバムをご紹介することにします。
一枚めは、ご存知ライ・クーダーと共演した1994年作品。翌95年のグラミー賞受賞作品です。
アリー・ファルカ・トゥーレは西アフリカのマリ出身。70年代にはすでにブルースの影響を受けた独自のサウンドを生み出し、西アフリカでもっとも早い時期に洗練された音楽性を持っていた音楽家のひとりでした。そんなアリーに共演を申し込んだのはライ・クーダー自身で、プロデュースもライが務め、ジム・ケルトナーのほか、ブルースのクラレンス・ゲイトマウス・ブラウンなども参加して、このアルバムは作られました。
収録されているのは全曲アリー・ファルカ・トゥーレの作品。ライは全編でギターなどで共演し、アリー・ファルカとブルースとの共通のルーツを探るべく、ゆったりした弦楽器同士の絡みを演出します。そのあたりの、ライならではと言えそうな独自のゆるやかサウンドがこのアルバムの魅力でしょう。
アフリカ音楽ファンのみならず、ブルース・ファン、そしてもちろんライ・クーダーのファンにも強力にお勧めしたい一枚です。
そしてもう一枚は、いまの西アフリカでもっとも注目すべきミュージシャン、コラの名手トゥマニ・ジャバテとの共演盤です。2005年発売で、これまた翌2006年のグラミー賞を受賞しました。
録音場所は地元マリのバマコにあるマンデ・ホテル。そこに移動式スタジオを持ち込み、静かな月夜の元で録音したのがこの作品です。音楽のほうでも、そんなゆったりした気分がたっぷり。ライ・クーダーとの共演盤では歌入りの曲ばかりを取り上げていたアリー・ファルカ・トゥーレですが、こちらはほぼ全編がインスト作品。トゥマニ・ジャバテが爪弾くソロをギターのアリー・ファルカが優しく見守る、という、まさに大人同士の共演が全編で繰り広げられます。
トゥマニ・ジャバテの『独立大通り』とは対極にあるような、アフリカ音楽の穏やかな部分を象徴したのがこの作品。夜に一人でじっくり聞くには最高な、大人のためのアフリカ音楽です。