1月31日(土)

 土曜日だけど、もちろん朝から仕事。残務処理というか、今月忙しくてできなかったことをアレコレ片付ける。1月も今日で終わり。思えば今月は、禁煙にはじまり、決算、そしてノエール・ローザで一月が終わってしまった感じだ。おかげで残りの仕事はすべて中途半端な状態のままになってしまった。それをこれから1週間くらいですべて片付けないといけない。

 1月に仕事が進まなかったのはぼくだけではなく、いくつかの取り引き先も同じだったようだ。今週届くはずだったトルコの荷物は、結局来週に順延。1月中旬頃のイスタンブールは雪で交通が遮断され、予定通り荷物を集められなかったのだそうだ。またブラジル盤も今月は思い切り不調。新作アルバムが出ていないこともあるが、結局2回しか入荷しなかった。来月末にはカーニヴァルもあるので、その時はまた入荷がストップしてしまう。せめて2月の前半くらいは予定通り仕事を進めてもらいたいところだ。
 おまけに今週はヨーロッパではミデムという音楽見本市が開かれている。おかげで取り引き先の担当はほとんどそっちに行ってしまって、メールを送っても返事が来ない。スターンズとかには重要な用件もあったのだけど、困ったものだ。まあ、これは来週になったら解消されると思うけど。

 みんなが休んでいる土曜日なので、夜はさすがに仕事をする気にならず、ワインを飲みながらファドの新作アルバムをあれこれ楽しむことに。マリア・テレーザやミシアは日本でも評判になっているけど、実はまったく入荷していないそれ以外のファドの新作アルバムはけっこうあって、それらのサンプル盤を今回まとめて注文してみたのだ。そららをじっくり聞いていると、無名の新人なのに良い味を出してくれているものもけっこうある。このあたりは来月か再来月に、ライス盤として紹介することになるかもしれない。
 今日は続いてSP時代のファドもたっぷり聞いたし、ファドの歴史を語った洋書も引っ張り出してみた。心はすっかりポルトガル。いよいよアマリア・ロドリゲスの復刻盤を制作するモードに入ってきた感じだ。残務処理が終わったら、この仕事、本格化させることにしよう。

 

1月30日(金)

 月末の最終営業日は会計の締め日。支払いや伝票整理に追われてしまうこの日は、毎月他の仕事がまったく手につかない。今日もそんな感じ。朝から伝票の整理。そして銀行支払い。今月は決算だったせいで、ずっとお金の計算ばかりをしている気分だ。でも、そんな仕事も今日で最後。不得意な仕事からやっと解放される。
 ここしばらく仕事を一日も休んでないので、少し休みたい気分だけど、目の前にはやるべきことがドッサリ。しばらく休めそうもない感じだ。そんなことを思ったら、夜は仕事をする気にはなれず、思わず夜の街に繰り出しすことに…。なんて書いても、結局居酒屋さんで寒ブリを肴にちょっと飲んだだけで眠たくなってしまったのですが…。

 

1月29日(木)

 今日はリスト作成日。いつも通り、ポルトガル語とか英語とかのインフォを斜め読みしつつ、サンプルを耳にしながら完成させる。年のはじめはどこもあまり大きなリリースはないから、リスト作りも大変だが、でもよくよく調べてみると、売れ筋アルバムが出ていないこの隙間を狙って実力派がこっそり自主制作を出したりするから、侮れない。ブラジルでは新年からカーニヴァルまではほとんど新作らしい新作が出ない時期。でもカーニヴァル向け商品に混じって、そういった意欲作を見つけると嬉しくなってしまう。
 また、こういう新作が少ない時は、過去に発売されながら何の対処もできなかった作品をもう一度聞き直すには良い時期だ。取り引き先のカタログをじっくり見て、注文し忘れていたアイテムを探し出し、サンプル盤を注文してじっくり聞き返す。そんな地道な作業はこういう時じゃないとできない。これから2月いっぱいは、そうやって良質のアルバムを探し出さないといけないだろう。

 なんてことを考えつつも、ぼくの方は今日も大忙し。取り引き先のカタログなんて見ているヒマはない。リスト作成の後は、ひたすら原稿書き。今日も仕事が終わるのは遅くなりそうだ。好きなCDを聞けるような自由時間はなさそうです。

 

1月28日(水)

 朝早くからお昼過ぎまでは原稿書き。それから夜までが打ち合わせ。それだけで一日が終わってしまった。電車で移動する時に少しだけ本を読めたのが唯一の憩いの時。今月に入って電車移動の時には小林信彦の文庫本を読んでいるのだが、昨日は渥美清について書いた本を少しだけ読み進めることができた。ただし帰宅した時には疲れ果てて、CDを聞く体力はまったくなし。

 

1月27日(火)

 妙な頭痛も治ったので、朝早く起きてひたすら資料整理と原稿書き。夕方には明後日のリストのためにサンプル盤も少しチェックする。まだ書かないといけない原稿も多いので、夜も仕事になりそう。明日も早く起きて原稿書きをしないといけないから、今日は仕事以外なにも出来そうもない。

 

1月26日(月)

 原稿書きやレコーディングの仕事なら、いくらやってもそうは疲れないけど、帳簿とか決算書類の作成とかとなると、普段使わない筋肉を使った後みたいで、ヘンな疲れ方をする。ただ疲れるだけでなく、脳のどこかにダメージを受けたみたいな感じ。しかもそういう疲れは翌日にも持ち越してしまうからイヤだ。今日は大好きな月曜日だというのに、昨日の疲れを引きずって、朝からお疲れモード。こういう時は仕事が全然はかどらない。最悪の月曜日です。

 今日はもうダメだと、早めに仕事を諦めて、夕方からはリラックス・モードに。先に中村とうようさんからお借りしたCDのうち、キューバの偉大なピアニスト、故フランク・エミーリオのダンサ/ダンソーン集を聞きながら、ソファに寝そべる。アルコールでも飲もうかと思ったけど、ビールを少し口にしただけで頭がジンジンしたのでやめて、スリア・レコードのタン社長からもらった中国のお茶を楽しんだ。フランク・エミーリオのシンプルなピアノ演奏が、そんな疲れた身体とアタマに優しく染み渡る。「アニータ」という曲がすばらしい。今日の一番の(そして唯一の)収穫は、このアルバムをじっくり聞けたことでした。

 

1月25日(日)

 朝からひたすら決算書類の整理。午後いっぱいかけて、やっと90パーセントを終えることができた。あとは来月2日に外国への支払いを済ませて、その数字を買い掛け金に加え、新しい在庫の金額にも加えるだけ。ゴールは完全に見えました。
 毎年のことだけど、決算は本当に疲れる。こういう時だけ、経理を雇いたいなあと真剣に思ってしまいます。
 お疲れさんということで、今晩はささやかなひとり打ち上げ。2000円の白ワインと700円のチーズを買い込んで、竹内まりやを聞きながら楽しんだ。いくら金欠のサンビーニャでも、これくらいなら許されるだろう。

 女子マラソンは坂本直子が優勝。相撲は朝青龍が全勝優勝。ボローニャの中田は相変わらず良いプレイを見せているようだ。日曜なんだからスポーツ番組のひとつくらい見たかったが、結局それもかなわず、ニュース番組で結果を知っただけ。来週あたり、もう少しまともな日曜日を過ごしたいなあ…。

 

1月24日(土)

 資金繰りのための打ち合わせの続き。早い話、お金貸してくださいというお話をあちこちにしに行ったわけです。
 こんな他人に知られたくない話をわざわざ日記に書いているのは、それなら俺が金を貸してやるよ、という太っ腹な人でも現れないかと、かすかな希望を抱いているからだけど、まあ、いま時そんな余裕のある人、いないだろうなあ…。いずれにしても2004年は、英国進出や新しい事務所、新作の制作など、お金がかかる仕事が次々と予定されているので、運転資金はいまのうちに調達ておかないと…。これも社長の仕事。頑張るしかない。

 夕方に帰宅して、久しぶりにゆっくりお風呂に入り、ビールで晩酌。好きなCDをゆっくり楽しんだ。12月に注目作がまとめて出る分、1月は新譜が少ないのものだが、こういう時には無理して新しいのを買わなくても、昔のアルバムを聞き直せばいい。これも毎年の恒例だ。そんなことを思って、今日は久しぶりにライ・クーダーの『ジャズ』を引っ張り出して聞いてみた。
 ファンならご存知のように、ライ・クーダーのターニング・ポイントになった1枚。このアルバムがもう少し売れていれば、いや少なくとも、もう少したくさんのファンに理解されていれば、ライはその後失速することもなく、いまでもブエナ・ビスタなんかよりずっとずっと深い音楽を作っていたに違いない。
 そんな重要作だが、久しぶりに聞いて、やっぱり改めて思うところが多い一枚だった。ジャズのずっと向こう側にある古層のあたりをユラユラと浮遊するライ独自のジャズ。でも、それはあくまである場所にたどり着く道の途中という感じで、確固たる結論は提出されていない。ライはその『ジャズ』の先に、どんな夢を見たのか? その夢のような音楽って、いったいどんなものなのか? どうしたら実現できるか? ポピュラー音楽の古層に興味を持つ人間にとって、このアルバムほどそんな夢への道程を感じさせるものは少ないだろう。
 きっといまでは本人は覚えていないであろうそんな夢を、ぼくは改めて追っかけてみたくなった。

 

1月23日(金)

 今月は本当にピンチ。なにがって、当社の経済状況だ。銀行口座の残高を見たら、ほとんどゼロ。今日支払わないといけない社員2人の給料の分もなかったので、とりあえずぼくの個人口座から会社に貸すことにしたが、貸して支払いを済ませたら、両方の口座とも残高がゼロに近くなってしまったのにはマイッた。支払いが遅れている某店に電話して、早急に入金してもらってこの場はしのげたけど、ホント、綱渡りという感じです。
 もちろん、月末には入金がある。ただ、その時には支払いも多いし、はたして今月は自分の給料が出るのか、という感じだ。英ライス・レコードの方でもお金がかかっているし、事務所の引越し費用も捻出しないといけない。引越ししたら、新しい社員も入ってくる。来月私はいったいどうやって生活してゆけばいいのでしょう…。

 なんて情けない話は、ここで書くのははじめてだけど、当社ではけっこう頻繁に起きている。いや、零細企業だったら、みんなどこも日常茶飯事なのではないだろうか。こうなってしまうのは、サンビーニャが特別に儲かっていないからではない。取り引き先が多くなったおかげで、以前以上に運転資金が必要になっているだけだ。新しい取り引き先だとどうしても最初は前払いにしてくれという場合が多く、たとえ後払いにしてくれても待ってくれる時間は短い。そういう取り引き先が一度に増えると、当然運転資金が底をついてしまう…。
 本当は新しい取り引き先を増やす前に、運転資金を増やさないといけないものだ。そのことはわかっているんだけど、でも目の前に日本発売したくなるような面白いアルバムがあると、どうしても取り引きをすることを先に考えてしまう…。音楽好きが会社をやったら、こんなものです。もう病気みたいなもの…。

 そんなわけで、午後は資金繰りの相談をあちこちで。自宅でやりたい仕事は山ほどあるけど、そんなのは明日に回すしかない。ホント、お金の問題はいつまでたっても苦手です。

 

1月22日(木)

 今朝も早起き。一日遅くなってしまったが、ハムザ・エル・ディンのアルバム解説を仕上げた。その後は木曜恒例のリスト原稿。それを終わらせたら、もう午後3時。今日はお昼ご飯を食べる時間がなくなってしまった。その間に税理士サンからは何度も電話が入るし、なんだか慌しい一日だ。決算の仕事を早く終わらせないことには、どうも落ち着いて仕事が出来そうもない。

 リスト原稿を出した後は、いただいていたメールの返事。そして机の上にたまった雑務書類の整理。さらに、またまた溜まってしまったサンプル盤の整理。やることは際限なくあるのに、時間だけがどんどん過ぎてゆくのに焦ってしまう。気がついたら、もう外は真っ暗。一日が短いせいで、ますます時間がないように感じられるから、冬はイヤだ。明日もかなり早起きしないと、今週の仕事は終わりそうもない。

 

1月21日(水)

 朝早く起きて、雑務仕事をひとつ済ませたところで、久しぶりに外出。久しぶりに中村とうようさんのご自宅にお伺いすることになった。武蔵野線、中央線、モノレールを乗り継いで、ようやく正午に到着。とうようさんが居間の模様替えをしたいとのことなので、テレビなどの移動を少しお手伝いしつつ、食事の後に今年のプロジェクトについてアレコレと打ち合わせ。気がついたら、夕方6時頃まで話し込んでしまった。
 話したことについては、まだまだここでは公表できない話題もたくさんあるけど、そのうちのひとつだけ、南アフリカのダーク・シティ・シスターズについては、もうエル・スールさんあたりでバラされてしまっているので書いておくことにしよう。彼女たちの最高の歌声を集めたアルバムを、できるだけ早く当社で出そうと思っている。イギリスでも同時発売になる予定なので、今後つめる部分はまだまだあるけど、取り合えず貴重なLPをお借りして、こちらでも音源をチェックすることにした。これまであまりCD化されていない初期録音がメインになるはずなので、アフリカ音楽ファンの皆さんは楽しみにしていてください。

 とうようさんからは他にもCDなどをお借りして8時過ぎに帰宅。お借りしたCDのひとつに、20世紀初頭録音のタンゴ集というのがあったが、これを聞いてみたら、タンゴとは似ても似つかない演奏ばかりでビックリ。ブラス・バンドによるタンゴ、なんて書いても、聞かないことにはどんなものだか想像つかないだろうけど、一番似ているのは同時代のショーロかな。だから、ぼくにはすごく面白い音楽だ。このCD、ぼくはお店で見かけたことがなかったが、さっそく当社でも輸入できるかどうか調べてみよう。

 

1月20日(火)

 昨晩に手をつけた決算関係の書類が思いのほか手間取って、午前中はそれだけでつぶれてしまった。昨日書きはじめたハムザさんのアルバム解説を先に仕上げようとしたのだが、やらないといけない仕事が他にある時の原稿は、あまり進まないし、仕上がりが悪い。そんなわけで、とりあえず雑務の方を先に終わらせることにした次第。

 そして午後から解説原稿に取り組んだのだわけけど、そこでハムザさんの自伝本なんかを読みはじめたものだから、タイヘンなことになった。ぼくは音楽関係の本を読んでいると、本だけではすまないことになってしまう時がある。この本でも、ハムザさんのヴァンガードにおける初録音の話が出てくると、ヴァンガード盤を聞きたくなって、レコード棚に手が伸びる。ニューポート・フォーク・フェスティヴァルの話が出てくると、あのライヴ・アルバムもあったよな、なんて、レコード棚を探しはじめる。子供の頃にアスマハーンに世話になった話が出てきた時には、アスマハーンのレコードまで聞きたくなってしまったものから、困ったものだ。そんな調子で、気がついたら仕事部屋はハムザさん関係のアルバムだらけ。昨日ノエール・ローザ関係のSPやLPを片付けてやっと整頓された部屋が、またレコードで埋まってしまった。これじゃ、解説原稿は進むわけはない。
 夜に原稿を書くのは好きではないが、ハムザさんのアルバム解説は明日の朝には出来てないとマズいから、今晩は久しぶりに頑張らないといけないだろう。というわけで、この日記を書いた後も、今日はもうしばらく仕事。珍しく遅くまでパソコンに向かうことになりそうです。

 

1月19日(月)

 さあ、大好きな月曜日。今日は早起きして、あちこちの取り引き先にメールを出す。先週ノエールのアルバム制作に集中していたせいで、連絡しないといけないことがたまっていたから、その量もかなり多い。結局、今朝だけで20本くらいのメールを送った。取り引き先が多くなってきたので、こうして日常の連絡をするだけでもタイヘンな作業になる。

 午後からはハムザ・エル・ディンのアルバム解説を書くために、アルバムを繰り返し聞くことに。オーストリアのロトゥスという会社からリリースされた1995年録音だが、シンプルだけどハムザさんらしさが溢れた内容で、最近のぼくのお気に入りの1枚だ。
 ぼくがこのアルバムの存在を知ったのは、昨年のWOMEXでロトゥスの社長さんと知り合った時。実は彼はオーストリアのワールド・ミュージックで一番のディストリビューターでもあり、ぼくは英ライスがこれから発売する商品をオーストリアで配給してくれないかと打診するために声をかけたのが、商品を買ってくれという話だけでは申し訳ないので、日本で売れそうなものはないかと聞いたら、ハムザがあるというので、ビックリしてしまった。ハムザさんなら、ぼくも個人的に知っているし、音楽も大好きだから、売らせてくださいとお願いして、やっと今月入荷することになったわけだ。
 いまも書いたように、内容はシンプルながら極上。しかも、日本ではこれまでみたことのない1枚だ。こちらも今月中にはお店に並ぶことになるので、チェックしてみてください。

 今週は久しぶりの入荷ラッシュ。クリスマス〜お正月休みでボケていた世界も、やっと正常に動きはじめたようだ。

 

1月18日(日)

 久しぶりにゆっくり起床。と言っても、8時半には目が覚めてしまった。もう少しゆっくり寝ても良かったのだが、洗濯とか掃除とか、身の回りの整理をしないといけないと思って寝たせいか、ゆっくりとはできなかった。こうして仕事が忙しくなると、やりたくてもできないことが山のようにたまっている。実は昨年末にアルセニオのSPなど貴重な音源をCDRに入れて送っていただいたいのだが、そのお礼としてお送りするつもりのCDRをなかなか作れないでいる。本当は昨日、ノエールの音源と一緒に録音しようと思ったのだが、時間が足りなかった。CDRは事務所に行かないとできないので、来週になってしまうのだろうか。

 午後からは、先週送られてきたサンプル盤のチェック。明日中にはメールで返事を書かないといけないので、大急ぎですべてチェックする。面白いものもあったけど、まだ契約ができたわけではないので、内容は秘密。来週、契約がまとまったらお知らせすることにしましょう。

 タワー新宿店の篠原さんから解説原稿をいただく。トップページに掲載されているように、当社では今月、ギネアのクヤーテ・ソリ・カンディアのアルバムを出すことになっているのだが、それにあたってアフリカ音楽に詳しい篠原さんに解説原稿を依頼していたのだ。クヤーテ・ソリ・カンディアは、サリフ・ケイタやユッスー・ンドゥールの大先輩に当たるような人物。グリオ出身の歌手で世界で最初に注目された人で、しかも今回当社から発売されるアルバムは、1970年にシャルル・クロー賞を受賞。クヤーテさんの出世作であるだけでなく、西アフリカのグリオの声が世界に最初に紹介された歴史的アルバムなのだ。そのあたりのことを、篠原さんが解説できっちり書いてくれたので、とてもありがたかった。
 ライス/サンビーニャでは今後もアフリカ音楽の歴史的音源を積極的にリリースしてゆくつもり。アフリカ音楽ファンのみなさんは、どうぞご期待ください。

 ここ2週間ほど忙しかったので疲れが出ているのか、午後8時頃には眠たくなってきた。夜は昨日買ったCDをゆっくり楽しもうと思ったけど、今日はもう無理そうだ。

 

1月17日(土)

 ノエール・ローザ関係の最後の仕事。SPをもう一度全部引っ張り出して、DATテープに録音した。できるだけ良い音で録音したいので、あれこれ試しながらやるから、手間がかかる。朝早くはじめたのに、結局お昼頃までかかってしまった。さあ、これでマスタリングのチェックを終えたら、ノエールはしばらく聞かなくなるのでしょう。

 午後からは久しぶりに外出。レコード店や本屋さんを回る。と言っても、レコード店の方は、個人的な買い物ではなく、現場リサーチみたいなものだ。主にワールド・コーナー以外で、いま何が売れているのか、どんな面白いレコードがあるのか、チェックするのが仕事で、月に一度くらいのペースでやっている。
 この欄ではあまり触れることはないけど、ぼくはワールドだけでなく、ロックやブラック系、J・ポップなどのアルバムも、けっこう毎月たくさん買っている。世間の売れ筋を知りたいという部分もないわけではないけど、それ以上に、仕事とまったく関係のない音楽を求めてこれらをコーナーを漁っているのだと思う。ワールドものだと、いつか仕事に関係してくると思って聞く場合がほとんど。でも、ロックの新作を聞く分にはそういうことは絶対に考えない。だから安心して聞ける。まあ、そうは言っても、ロックの新作でビックリするほど面白いものに出会うことはメッタにないわけだけど。

 夜は久しぶりに外食。近くの家庭料理屋さんでお刺身にありついた。お酒も少しだけ飲んだが、すぐに眠くなってきたので、ほどほどにして帰宅。明日は早起きする必要がないから、目覚ましをセットしなくてもOKだ。久しぶりにゆっくり寝れそうです。

 

1月16日(金)

 朝からノエール・ローザの解説原稿を仕上げて、メールで入稿。結局、ここ1週間、仕事の時間にはノエール・ローザばかりを聞き、ノエール・ローザの音楽についてばかりを考えて過ごしたことになる。朝5時に起きて、最後の仕上げをしたのだけど、これで仕事が一段落だと思ったら、少し寂しくなってきた。こういうアルバムを作り終わってしまうと、しばらくノエールの音楽を聞くことがないことを知っているからだ。
 思い出してみれば、アルセニオだって、カルメン・ミランダだって、ニーニャ・デ・ロス・ペイネスだって、当社でアルバムを作ってしまってからは、一度も耳にしたことがない。アルバムを作る前にあれだけ集中的に聞いてしまうと、しばらく聞きたくなくなるものなのだろう。
 さらにぼくの場合、自分でプロデュースしたアルバムも、CDが出来あがってしまったら、しばらくは耳にしない。それから寝かすこと、平均5年。時に10年くらいは冷静に聞けないのだから、困ったものだ。1991年に作ったワルジーナの『ラトゥ・ジャワ』をすばらしいアルバムだと思えたのは、つい最近のこと。イギリスで発売するために聞き返した時だった。実はRIKKIのアルバムは、作ってからまだ5年しかたっていないので、アタマからじっくり聞き返したことがない。こちらを好きになれるのは、あと2〜3年後だろうか。
 というわけで、次にノエールを聞くのは、ノエールが生誕100年を迎えた頃(2010年)だろうか。その時には新たにボックス・セットとかが出て、また違った聞き方をさせてもらえるかもしれない。そうなることを、いまから期待することにしよう。

 

1月15日(木)
 
 今日は朝からリスト原稿。たまっているサンプルを少し耳にしてみたが、思い出してみれば、ノエール・ローザ以外の音楽を聞くのは連休以来。久しぶりに違う音楽を聞くと、どれも新鮮に聞こえて良いアルバムに思えてしまうから困ったものだ。こういう時にアルバムの採点でもしたら、どれも8点以上がついてしまいそう…。
 そして午後は、再びノエール・ローザ。選曲はもう済んだので、今日は5年前に書いた解説をチェックして、部分的に新たに書き直すことにした。部分的に、なんて書いたけど、実際はほとんどの部分に手を加えることに。というのも、新しく知った事実は加えないといけないし、当時の間違いも正さないといけない。5年前の原稿の良かった部分は生かそうと最初は思ったのだが、自分の書いた原稿に対してそんな客観的な行為をできるわけはない。結局はどんどん手を加えることになってしまった次第だ。

 昼間にリスト作成のために違う音楽を聞いたので、夜もゆっくりサンプル以外のアルバムを聞くことに。今日耳にしたのは、ファドの古い時代の録音だ。ずいぶん前にヘリテージから5枚くらいCDが出たが、それらを聞き返したくなってきた。久しぶりに聞いてみたら、同じポルトガル語なのに、いままで聞いていたノエールのそれとはまったく違う言語に聞こえたのに、ビックリ。でも、ファドもファドで、やっぱり楽しい。リラックスして聞いていると、すぐに夜がふけてしまう。
 なんてこと書くと、わかる人にはわかってしまうんでしょうね。そうなんです。ノエールは終えて、もう心はそろそろアマリア・ロドリゲスのアルバムを作るモードに入ってしまっているんですね。さあて、こちらはどんな作品になるのでしょうか。

 

1月14日(水)
 
 今日も朝からノエール・ローザ。昨日は『ヴィラの詩人』の改訂版の選曲を仕上げたので、今日は『ノエール・ローザの時代』の選曲を検討することにした。こちらも、はじめて当社からアルバムが出たのは1999年のこと。その時の選曲を再検討しようとしているわけだけど、こちらの方だって、当時真剣に選曲しているわけだから、直す部分がそうはあるわけはない。結局、5曲ほど差し替えたが、これも音の良い盤が手に入ったからという程度の理由で、アルバムの意図そのものが大きく変わることはなかった。
 ただ、あの時といまとでは、音の方はずいぶん変わるのではないかと思う。というのも、5年前にはまだノイズ・リダクションのソフトにあまり良いものがなかった。良いものが出来たのは、当社がプロ・トゥールズを導入した3年前くらい。だから3年前までのマスタリングとその後のそれとでは、どうしても音に格段の違いができてしまうのだ。ノイズ・リダクションに良いものがないということは、ノイズの多い音域を大きく切らないといけないということを意味する。そうなると、SPの音の本当に良い部分も一緒に切ってしまうことになる。それをしないですむいまのノイズ・リダクションの発明には感謝しないといけない。

 

1月13日(火)

 3日間、じっくりノエール・ローザを聞いた上で、今日から改訂版2枚の選曲に取り組む。前回発売した時には『ヴィラの詩人』の方にノエールの自作自演をまとめ、もう一枚の『ノエール・ローザの時代』の方に他の歌手たちによって歌われたノエール作品を収録した。今回も基本的にその路線を踏襲することに決定。
 そこで改めて前回のアルバムを聞いてみたのだが、さすがに真剣な選曲だったようで、優れた曲のほとんど収録されていた。少なくとも『ヴィラの詩人』の方は、あまり大きな変更はなく、4曲増やして、1曲削ってまとめることで決定。これでシンガーソングライターとしてのノエール・ローザに関しては、ほぼ完璧なアルバムが出来たと思う。マスタリングもこれからやり直すので、音も以前より格段に良くなることだろう。ブラジル音楽に関心を持つ人なら、絶対に一度は耳にするのがノエールだから、こういう決定版があるとお役に立てるのではないかと思う。
 さあ、明日ももう一日早起きして、今度は『ノエール・ローザの時代』を仕上げることにしよう。

 

1月12日(月)

 朝から名古屋に出張。夕方に帰宅。今日もカバンにはノエール・ローザの伝記本と、14枚組ボックス(とウォークマン)が。新幹線でも伝記本を読みながら、早世したサンバ詩人の歌声を楽しんだ。思い出してみれば、ここ3日間、ノエール・ローザしか聞いていない。

 

1月11日(日)

 今日もひたすらノエール・ローザ。今度はSPを含むアナログ音源を中心にもう一度持っている音源をじっくり聞き返す。昨日気がついたことがもうひとつ。ノエールの14枚組は、タイヘンな労作だが、残念なことに音はあまり良くない。カチカチのサウンドで、アナログ音源を楽しんできた人には、かなり耳障りだ。昨日はCD14枚を聞いてかなり疲れを感じたが、今日はアナログばかりを聞いていたので、あまり疲労感はない。当社で出すCDは、こういった温かさを出来るだけ残したいと改めて思う。

 

1月10日(土)

 ライスから出ていたノエール・ローザ関係の改訂版を2枚出すことになったので、今日からその作業が本格化。今日はさっそく、朝からノエール・ローザ関係の音源にドップリ浸る一日になった。
 数年前にブラジルで出た14枚組ボックスは、まだ封を切っていなかったので、取り合えずあたまから最後までじっくり聞いてみる。それとアナログ音源の音の違いを聞き比べたりもしたが、やっぱりアナログ盤の方が耳に優しいサウンドでリラックスできる。最後にSPを引っ張り出して聞いたが、やっぱりこれが最高。ノエール関係のSPを入手したのは、もう20年近く前だが、それ以来、こうしてたまに聞くたびに感動させられているのだから、本当に長い付き合いだ。
 ちなみに、ノエール関係の復刻音源はアナログ時代にもけっこうたくさん出ていて、内容のすぐれた曲についてはかなり早い時期から復刻されていた。だから、14枚組ではじめて復刻された中に驚くほどすばらしいものがあったわけではない。ぼくがあのボックスが出てすぐに聞こうとしなかったのはそのせいだ。
 ただ、それはそうなんだけど、それでも実働たった6年で300曲近くの作品を残し、しかもこれだけのクォリティの高さを保ったノエールの偉大さは、14枚組で一気に聞くと強烈に理解できる。26歳で亡くなったノエールの人生は、普通の人の10倍以上の密度だった。取り合えず、今日はそのことを大いに実感させられた。

 

1月9日(金)

 なんでこんなに忙しいのだろう。本当に疲れきった一日だった。
 朝から英文解説の校正。途中から手伝ってくれているふたりがやってきて、校正の確認。さらに夕方からは決算書類の準備。税理士さんが明日の朝来る予定なので、それまで仕上げておかないといけないから、大慌てだ。校正もまだ完全には終わっていないから、明日税理士さんが帰った後はこれに集中しないとけないだろう。おまけに解説原稿も書かないといけないものがたくさんあるから、その後も休めない。この3連休は、完全に仕事漬けになりそうだ。

 忙しいおかげで、タバコのことは、ほとんど忘れて一日を過ごす。もう禁断症状はまったくない。外を歩いていてタバコを吸っている人に会ったときにイヤな気分になるだけだ。

 さすがに年末年始ということで、バック注文が多い一週間だった。入荷は少ないのに、在庫から出てゆくものが多く、けっこうな出荷量になった。おかげで今日は、トルコと英ラス、仏メロディーなどに今年の初注文。この調子だと、来週からは各国から続々と初荷が入ってくることだろう。たぶん再来週くらいには通常のペースに戻りそうな感じ。ぼくの方もそれまでに余計な仕事を片付けて、通常のペースを取り戻さないといけない。

 さあ、明日も5時起き。今晩も早めに食事を済ませて、早く寝ることにしよう。

 

1月8日(木)

 今日はリスト原稿の制作日。考えてみれば、当社がリスト作成を休むのはお正月だけ。年に55回も作っているわけだが、先週がそのお休み週だったので、久しぶりに2週間ぶりのリスト作成になった。だからなのだろうか、今日はどうも手際が悪い。ポルトガル語や英語などのインフォの量は、いつもとさほど変わらないのに、なぜか読むのに時間がかかってしまう。2週間前と今日と、一番違うのはタバコをやめたことだが、ひょっとしてまだ禁断症状が影響しているのだろうか。

 リスト作成がちょうど終わりに差し掛かった頃に、中村とうようさんからお電話。昨日こちらで校正したとうようさんの解説原稿を再校正していただいたのだが、そこで出た疑問箇所について話し合った。
 今回のライス・レコードUKの最初のリリースで、もっとも大事な仕事のひとつが、とうようさんによる編集盤を、あの中村とうよう節の解説原稿のニュアンスをできるだけ伝えた翻訳をつけて発売することだ。日本が誇るワールド・ミュージックの評論家をヨーロッパに紹介することは、チローロのドラミングのすばらしさをヨーロッパ人に知ってもらうのと同じくらい大切なことだと思っている。それだけに、できるだけそのニュアンスを損なわない翻訳にしたいと思うのだが、これがなかなかに難しい。もう少し時間がかかりそうだ。

 実は、難しいのはぼくが書いたアルセニオの解説の翻訳も同様。こちらは明日の朝から校正作業をやることになっている。それまでに準備をしないといけないから、明日は4時起きが必至だろうな。今日はお酒を飲まず、早く寝ることにしよう。

 

1月7日(水)

 禁煙7日め。友人のいうことは本当だ。たしかに一週間も経過すると、ずいぶん楽になってくる。まだ目の前でタバコを吸われるとツラいだろうけど、オデコがジンジンしたりする禁断症状はおさまった。以前は朝起きたらまず牛乳を温めて、タバコを吸いながらミルク・コーヒーかミルク・ティーを飲んでいたのだけど、タバコをやめてからはコーヒーや紅茶も一緒にやめていた。それを今日から再開。取り合えず紅茶を飲んでみたけど、別にタバコを欲しくはならなかった。禁煙してから一緒にやめていたお酒も、今晩から再開したが、やはり少しくらい飲む分にはタバコを欲しくならない。まだ、酔っ払ってしまったら、どうなるかわからないけど…。

 タバコの禁断症状がなくなってきて、やっと仕事にも集中できるようになってきた。今日は今年にはいってはじめてまともに仕事している感じ。朝から解説原稿の校正。午後からは、イギリスからやってきている友人二人と一緒に英文原稿の校正をやった。

 なんで英文原稿の校正をしているのかというと、なんとサンビーニャのアルバムがイギリスでも出ることになったからだ。しかも、これまでみたいにライセンスとかではない。ぼく自身の会社である<ライス・レコードUK>からの発売だ。
 これまで秘密にしていたけど、実は昨年からサンビーニャの兄弟会社<ライス・レコードUK>の設立の準備をしていた。拠点はもちろんロンドンだ。目的は、サンビーニャでこれまでリリースしてきたぼくのプロデュース作品などを、ヨーロッパでリリースすること。そうなんです。サンビーニャも、いよいよヨーロッパ進出をスタートなのです。
 昨年中にようやく会社の登録も終わり、口座も開いた。そして昨年の12月から、来月中旬に発売される最初の4作品の制作を開始することにした。とりあえず、ワルジーナの『ラトゥ・ジャワ』、RIKKIの『ミス・ユー・アマミ』、アルセニオ・ロドリゲスの『ソン・モントゥーノの王様』、チローロの『ベスト・オヴ・チローロ』を発売する。<ライス・レコード>というからには、まずはアジアの音楽を紹介したいし、同時に日本でも大好評の復刻シリーズも紹介したい。しばらくはこの2本立てで行くつもりだ。

 イギリスに会社を作ろうと思ったのは、もちろん自分が手がけてきた音源をできるだけ良い形で出したいからだが、それ以上に、これまで誰もやったことのない仕事だということも大きいのではないかと思う。これまでも、ぼくが作ってきたサンバなどのアルバムがアメリカやヨーロッパで出たことはあった。でも、そんなのは稀な例で、日本を拠点に音楽制作をしているワールド・ミュージックのインディ・レーベルで、外国に進出したレーベルなんてないどころか、日本制作音源が外国で発売された例だって、ほとんどないと言っていい(これはワールド・ミュージックに限ったことではないが)。
 これは前から不満に思っていたのだが、日本のワールド・ミュージックのレーベルの多くは、ディストリビュートが主な仕事で、基本的には人が作った商品を売るだけが仕事になっている。だからウォーメックスなどに行っても、日本人はただ他の国の会社の商品を輸入したりライセンスしたりするだけで、逆に彼らに売るための商品を持っていっている人はまずいない。ディストリビュートの仕事がイヤだというわけではないし、ぼく自身はその仕事も誇りを持ってやっているが、でもやっぱり、そんな一方通行の関係だけではツマラナイように思う。買うだけでなく、売りたい。人の作った作品を心を込めてディストリビュートする一方で、自分の作ったものも世界にちゃんと紹介したい。俺たち日本人にだってワールド・ミュージックを作れることを知らせたい。そう思ったら、自分で会社を作りたくて仕方なくなってしまったわけだ。
 
 会社はまだまだヨチヨチ歩き。どうなるかわからない部分も大きいけど、とにかく頑張ってみようと思っている。イギリスやヨーロッパでどんなリアクションがあるかも、楽しみだ。面白い話があったら、このページでも紹介します。

 

1月6日(火)

 禁煙6日め。友人の話によると、禁煙で大事なのは最初の1週間。1週間持てば、なんとかなるそうなので、あと今日と明日、しっかり辛抱すれば、なんとかなるのだろう。とにかく頑張ろう。
 昨日も銀行に向かう途中の路上でタバコを吸う人たちと出くわしてイヤな気分になったので、今日はできるだけ外出しないことに。ただ、昨日とは別の銀行に融資の相談に行かないといけないので、その時はできるだけ人の通らなそうな道を選んで歩いていった。もうすっかりタバコ恐怖症。しばらくはタバコを吸う人とは会えません。

 昌くんがサンバスンダの解説原稿を昨晩完成。今朝チェックさせてもらった。今週は宮川くんもセルジオ・メンデスの解説を完成させる予定なので、そちらもチェックするのが楽しみだ。ぼくの方は、ラフ・ガイドを2〜3枚と、コンジュント・コイザス・ノッサスあたりは今週中に書き上げたいところ。すべて昨年中に手をつけてはいるのだけど、年始に禁煙したおかげでイライラ状態が続き、全然進んでいない。明日の朝あたりは頑張りたいところだ。

 決算月ということもあって、整理しないといけない雑務が多い。午後はほとんどそれに集中。何かに集中しているとタバコのことを忘れられるのが嬉しい。あれっ、昨日もこんなこと書いたっけ?

 

1月5日(月)

 さあ、いよいよ2004年のサンビーニャ始動の日。朝から天気もいいし、最高の気分で仕事をはじめることができた。心なしか、タバコを吸わないことに少し慣れてきた感じ。まだオデコあたりが少しジンジンするけど、昨日ほどは気にならなくなった。

 今日は外国送金の日。混んでいるだろうなと覚悟して銀行に言ったら、案の定。こんなに人の多い銀行をはじめて見たほどだ。まさか外為の窓口は混んでないだろうと思ったら、とんでもない、いろいろな国からやってきた外国人たちが故郷にお金を送ろうと、窓口の近くにひしめきあっていた。男性のほとんどは中東っぽい人たち。女性はルーマニアかロシアあたりの出身だろうか。みんな現金を手に握り締めて、すごく真剣な表情だ。これだけ外国人がまとめて送金する日も珍しいのだろう、窓口のおねえさんが非常に疲れた表情をしていたのが印象に残った。

 会社の方は、先月分の請求書作りと、決算のための棚卸し。在庫は、結局昨年の5割増くらいになったようだ。年末に少し捨てたけど、全体からすればほんの一部。リリース点数が多いと、どうしても大きな在庫を抱えざるをえない。今年はもう少し減らしたいところだが、取り扱うジャンルが多くなればなるほど増えるわけだから、仕方ないところだろう。
 なんてことを考えていたら、今週発売のサンバスンダがさっそく入荷。今年の入荷一号は、インドネシアの荷物だった。

 銀行から帰ったあとは、決算のための帳簿整理。そしてノエール・ローザの音源チェックなど、午後8時くらいまでバタバタと過ごす。忙しいとタバコのことを忘れられるのがいい。

 

1月4日(日)

 とうとうお正月休みの最終日。禁煙も4日めに突入した。さすがに2日続いて寝れなかった後のせいか、昨晩は10時くらいには布団にバッタリ。今年はじめて熟睡できた。今朝はイライラもずいぶん収まった感じ。午後くらいからは原稿を書いてみようかという気分になってきたくらいだ。まだオデコのあたりはジンジンするけど、これも昨日よりも少しは収まった感じだ。
 お正月から毎日天気が良いのが救い。今日も近くの公園に散歩に出かけた。明日から学校のせいだろうか、今日は子供たちは遊んでなかったし、タバコをふかすオヤジもいなかった。持って行った本を少し読んでいたら、意外なほど本に集中できる自分に気がついた。思えば、家ではタバコを吸っていたぼくも、公園などを散歩する時には元からタバコを持って出なかった。だから外ではタバコは欲しくならないのだ。
 結局、喫煙もクセみたいなもので、吸わない生活のパターンが慣れてしまえば、どうってことないのだろう。なあんて、頭ではわかっているんだけど、いまの時点では、まだまだ正直ツラい。つい口元が寂しくなってしまう。

 ツラいけど、そればかりは言っていられない。明日から仕事がはじまってしまう。早く起きられるように、今日も早く寝ることにしよう。ちゃんと寝られると良いのだが…。

 

1月3日(土)

 禁煙3日め。昨日より少し楽になったが、それでもまだまだイライラは続く。パソコンに向かっても書き物仕事はまったく進まず、まだ日記くらいしか書けていない。

 禁煙パイプとか飴とか薬とか、禁煙するための道具が薬局でたくさん売られているのは知っているが、禁煙するにあたって、ぼくはそんなものを使う気になれなかった。とにかくタバコをやめて、ひたすら我慢する、それだけだ。病気じゃないんだから、薬局のお世話になる必要なんかないし、だいたいそんなものを買うお金がもったいない。これくらいのことを我慢できないようじゃ、何をやっても上手くゆくわけがない…。

 今回タバコをやめようと思ったのは、ぼくも今年で45歳になるし、そろそろ節度というものを考えないといけない年だと思ったからだ。タバコも好きだし、お酒も好きだが、それらを全部やっていたのでは、もう体力が続かない。だとしたら、やめられるものからやめてゆくしかない。そうでもしないと、昨年以上に多くの仕事をこなすなんて、絶対に不可能だと思ったのだ。
 禁煙をするのは、お正月くらいしかチャンスがないとも思った。原稿も書けず、イライラしながら生活するなんて余裕は、普段はありえないし、それになにより、お正月に決心したことなら、他のとき以上に我慢できるだろうと考えたからだ。本当はお正月にたくさんの仕事をこなして1月中旬に休みを取ろうと思っていたが、その時に禁煙をしようと思っても、たぶん無理なんじゃないかと思う。タバコを吸わない人には、禁煙なんていつでもできそうに思われそうだが、ものすごく高いモチヴェーションが必要なのだ。年の初めが、それに匹敵するのは、誕生日くらい。それ以外ではとても決心が固められるものじゃない。

 

1月2日(金)

 禁煙2日め。昨晩はほとんど眠れないで過ごした。タバコをやめたことのある人はわかると思うけど、禁煙をはじめてすぐの時は、ほんとうに最悪だ。一日中イライラしているし、どうしても何かに集中することができない。パソコンに向かっても原稿なんて書いていられないし、それどころか眠ることにすら集中できない…。気晴らしに外出しても、人がタバコを吸っているのを見るとイライラする。結局、人のいないところを散歩しようとするわけだけど、田舎に住んでいるならともかく、このあたりで人に会わないところなんて、あるわけがない。いまも近くの公園で、タバコを美味しそうに吸っているおじさんを見て、頭に来て帰ってきたところだ。
 タバコをやめてみるとよくわかるのが、タバコを吸う人間のマナーの悪さだ。子供がたくさん遊んでいる公園でタバコを吸うなんて、誰が考えても良くないのに、平気でやっている。さっきお昼ご飯を食べにいったお蕎麦屋さんでも、人が蕎麦を食べているすぐ横でプカプカはじめたオヤジがいたので、そこでは大声で怒鳴りつけてやった。誰だって飯を食っているすぐ横でタバコを吸われたらイヤだろう。交差点で赤信号待ちになると、必ず誰かタバコに火をつけるし、喫茶店なんてタバコの煙だらけだ。もう、本当にイライラする。しばらくコーヒーなんて、飲む気になりそうもない。

 原稿書きはどうしても集中できないので、ノエール・ローザのボックス・セットを引っ張り出して、かけてみる。ただ、ここでもタバコをことを思い出して、いまいち音楽に集中できない。アタマがジンジンして感じられるのは、ニコチン中毒を抜け出そうと身体が戦っているせいなのだろうか。この調子じゃ、今晩も眠れそうもない。

 

1月1日(木)

 明けましておめでとうございます。
 本年も昨年と同様、どうぞよろしくお願いいたします。

 一年で一番好きな日がお正月、ということは、以前もこの欄で書いた。一年で一番気が引き締まる日だからだ。一年の計は元旦にあり、というけど、ぼくも本当にそう思う。だから、お正月の朝はいつも早く起きて、お墓参りをしながら、今年の目標を亡くなった父やご先祖様たちに報告する。それが毎年のぼくのお正月の日課だ。
 亡き父と約束した今年の目標は、わざわざ人にいうものじゃないから、ここでは書かない。ただ、ひとつだけ、自分にプレッシャーをかけるつもりで書いておこうと思うことがある。それは、今日をもって禁煙することだ。すでに今朝から実行しているんだけど、思った以上にツラい。ツラいけど、頑張りとおすには人に宣言した方がいいと思って、いま日記に書いてしまった。 

 大晦日からお正月にかけては、例年通り実家で母と一緒に過ごし、お墓参りを済ませてから、夜に帰宅。さっそく、家の中にあったタバコの残りと灰皿とライターをすべて処分。禁煙体制はこれで整った。あとはひたすら我慢するだけだ。

 

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