12月31日(水) いよいよ2003年の最後の日。長かったような気もするし、アッという間に終わってしまったような気もする。来年はどんな年になるかわからないけど、サンビーニャは自分のペースを崩すことなく、独自の商品を作ってゆくことにしよう。 改めて、2003年は大変お世話になりました。2004年も、どうぞよろしくお願いいたします。 今年最後に聞いたCDはノエール・ローザのボックス。そしてノエール関係のSPとLP。 夜には、久しぶりに実家へ。 |
12月30日(火) いよいよ今年もあと2日。と言っても、ぼくの生活はあまり変わりなく、午前中は相変わらず原稿書き。そして午後は部屋整理の続きだ。来年に向けての仕事もはじめようと思ったけど、そこまで時間がなく、ノエール・ローザの伝記本を少し読みはじめたくらい。 これはノエール・ローザの生誕80周年を記念して1990年に出た本。書いたのはカルロス・ジジエールとジョアン・マッシモ。ともにぼくもブラジルで何度も会ったことがある友人たちだ。500ページを超える大著だが、この本を書くに当たって、カルロス・ジジエール(通称カオーラ)は、さまざまな人に会って、ノエールに関するあらゆる資料を集めたのだそうだ。イズマエール・シルヴァやカルトーラにもあったし、ノエールの奥さんだったリンダウラにも会った。そうそう、そのリンダウラとのインタビューでは、好奇心からなんとノエールのおチンチンのサイズまで聞いてまい、ヒドく怒られたのだそうだ。 そんなカオーラがエンリッキ・カゼスたちと組んでいたグループ、コンジュント・コイザス・ノッサスの1984年録音がブラジルで復刻された。ノエールの未発表作品まで取り上げた、すばらしい研究発表レコードだ。ただ、単なるお勉強ではなく、ノエール・ローザのことを心の底から大好きだということが伝わる、微笑ましいアルバムでもある。ぼくは大好きだ。このアルバムは来年早々にサンビーニャから登場する予定なので、お楽しみに。 夜は今年最後の忘年会をタワー新宿の篠原さんと。もちろん来年に向けの作戦会議です。 |
12月29日(月) 昨日についで訃報。ボクシングの白井義男が26日に亡くなった。80歳だった。 ぼくが読んだいくつかの新聞によると、戦後やってきたアメリカ人のコーチに出会ったことで本格的にテクニックを磨き、従来の殴られたら殴り返す玉砕型を脱皮して、はじめてボクシングらしいボクシングをやったのが白井だったようだ。そして彼はアメリカ人から世界フライ級のチャンピオンを奪い取った。白井を教えたコーチもさぞ嬉しかったことだろう。 白井は、力道山などと並んで戦後の日本に勇気を与えた人物うんぬんと伝えることが多いけど、そんな旧式の精神論より、彼のボクシング・スタイルを冷静に分析評価したこういう記事に、いまを感じる。 実はぼくはボクシングが大好き。サッカーの次くらいに大好きで、テレビ中継がある時はできるだけ見ている。若い頃は後楽園ホールに通って、4回戦から見たこともあった。子供の頃に見た大場政夫とタイのチャチャイ・チオノイの試合(大場の最後の試合)は、いまも忘れられない。 もうひとり、今度は個人的にもお会いしたことのある人の訃報。フィリピン出身で日本で活躍されたジャズ・クラリネット奏者レイモンド・コンデさんが、23日に亡くなったという記事も、今朝の新聞で見た。覚えている方もいるかもしれないけど、ぼくはレイモンドさんに『レコード・コレクターズ』の連載のためにインタビューしたことがある。享年87歳。戦前においてアジアで最高に洗練されたジャズ感覚を持っていたのがフィリピンだが、そのフィリピンからやってきた音楽家が、日本のポピュラー音楽の発展に大きな貢献を残したことを、ぼくらは忘れていはいけない。心からのご冥福をお祈りします。 実は昨晩、あらまさの後も朝まで飲んでしまった。だから起きたのはお昼過ぎ。年末年始のお休みにやりたい仕事はいっぱいあったのだが、一日くらいはこういう日があってもいいでしょう、という気分になっちゃったわけです。そんなわけで、今日は解説原稿はお休み。午後からは部屋の片付けの続きをした。棚を整理していたら、ずいぶん前に買っていたのに聞く時間がなかったルイ・アームストロングのホット・ファイヴ/ホット・セヴン時代(最初期)のコンプリート・ボックスを発見。それをBGMにしながら、いちおう本やCDをすべてを棚に収めて、残りの余計なものは明日のゴミに出すことに。ルイ・アームストロングはやっぱりこの時代が最高だと、改めて納得。 夜は焼酎のお湯割を飲みながら、ゆっくりとCDを楽しむ。何度か流し聞きしていたギギの新作を、はじめてじっくり聞く。その後はエチオピークの17集。さらにマリア・テレーザ。ランディ・ニューマン。竹内まりや…。久しぶりに仕事を離れて、ただ楽しむためにゆっくり音楽を聞けた。 |
12月28日(日) 朝起きて新聞を開いてビックリ。マリキータこと帆足まりこさんが27日に亡くなっていた。享年71歳だったのだそうだ。 マリキータさんがS盤アワーのDJを長年やっていたことをご存知なのは、ぼくよりずっと年配の人だろう。ぼくが知っているのは、1970年からご主人のジローさんと<マリキータ&ジロー>というデュエットを組み、ラテン音楽の分野で活躍されていたことだ。また、ぼくが音楽雑誌に原稿を書きはじめた20数年前だっただろうか、マリキータさんたちが作っていた機関紙に原稿を書かせていただいたことがあり、その時にはご自宅にお邪魔した。その頃からはコンサートなどの主催の仕事もやられていたようで、特にブラジルのショーロのグループまで招聘した時には驚かされた。ぼくはそれ以降仕事で関わることはなかったので、コンサート会場などでお会いした時に挨拶するくらいで、すっかり縁が遠くなってしまったが、ラテン世界の幅広いアーティストを熱心に紹介するお仕事ぶりはいつも気になっていた。心からご冥福をお祈りしたい。 もう会社は休みに入っているが、ぼくの方は通常通りの仕事。午前中には解説原稿を1本仕上げて、午後からは大掃除。自宅に仕事関係のものがかなりたまってしまい、今日中にはとても片付けられそうもないが、とにかくできるところまでやって、夜は浅草のあらまさに出向いた。いつも通り、魚料理をたっぷり食べながら、日本酒を飲む。今日も素敵な女性が同席。彼女とよく会うのは、音楽の話はまったくしないですむからだ。仕事を忘れることができる。今日もとても楽しい夜だった。 |
12月27日(土) 昨日はあまり豪快に飲んだわけではないけど、最近は午前さまなんて珍しいせいか、さすがにちょっと二日酔い。朝は目覚めが悪かった。でも、目覚めが悪いなんていってられない。今日はサンビーニャの年内最終営業日。本来なら大掃除くらいで終わりにしたいところだったが、なんと最後になってブラジルからの荷物がもう一便届いてしまった。入荷したのは、モスカの新作など、いまの売れ筋商品のバック注文分。これでお正月明けから2週間くらいは十分在庫で対応できそうだから、ひと安心なんだけど。 ぼくの方は会計の書類とニラメッコ。前も書いたように、当社は12月決算という世にも珍しい会社なので、過剰在庫の処分は年内に終わらせないといけない。今年のサンビーニャは、儲かりもせず、損もせずという感じだけど、在庫はずいぶん増えたので、少し処分しといた方がいいのだろう。これだけ多ジャンル多品目を取り扱っていると、わけがわからない状態で注文するものもあるので、どうしても不良在庫ができてしまう。もったいないけど、今年は500枚か1000枚くらいを捨てることになりそうだ。 そうそう、明日はライスの年内最後の新譜『イースト2ウェスト〜エスノ・エレクトロニック・テイルス・フロム・イスタンブール』の発売日。多くのお店には今日あたりから並んでいるはずなので、どうぞよろしくお願いいたします。トルコのダブルムーンと正式契約後初のアルバムだから、売れてくれるとありがたい。そして来年の第一弾は、1月11日のサンバスンダ(インドネシア)。今度はベスト盤だ。また来年は、1月にノエール・ローザ関係の改訂版2枚が登場する予定。その後も意欲作が目白押しなので、楽しみにしていてください。 という感じで、毎日駄文を書きつらねてきたが、明日から1月4日まではサンビーニャはお休み。ぼくのコンピュータからは更新できないので、日記は明日の分から1月4日分までを、1月5日にまとめてアップします。 それでは、みなさん、良いお年を。 今年は大変お世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。 |
12月26日(金) 今日はスターンズとワールド・ミュージック・ネットワークが入荷。ユッスー・ンドゥールの新作も入ってきました。さっそく聞いてみたけど、たしかにこれまでのユッスーからは考えられない内容。ファンの方々がビックリされているのもわかる気がする。まだ1度しか聞いてないから、コメントは差し控えるけど、一部のお店には土曜日あたりから並ぶはず。気になる方は早めにチェックしてみてください。 思えばユッスーの前作の日本盤が出たのが今年になってから。さらにDVD2種(うち一枚は日本盤)が出て、年末に新作だから、今年はユッスー関係の話題が豊富な一年だった。しかも、内容はどれも異色作。きっとユッスーのこんな活動ぶりが、ワールド・ミュージックがターニング・ポイントを迎えたことを象徴しているのだろう。来年がどんな年になるのか、ユッスーの新作を聞きながら考えたいところだ。 当社の年内の最終営業は明日なんだけど、忘年会は今日やることにした。忘年会と言っても、盛大なものになるわけはなく、当社の3人と山内雄喜さん、山内さんのお弟子さんたち、さらにアトンのお二人などが揃って、ささやかながらの慰労会という感じだ。アトンの小島さんも、今日はいつもより控えめ。あまり酔っ払う人もなく、最後にタイ・ラーメンを食べて午前1時にお開きになった。 |
12月25日(木) 今年最後のリストを作成。ただ、さすがに年末ということで新譜のリリースは少なく、いつもに比べたら寂しいリストになった。しかも、タイミングが悪いことに、ちょうど刷り終わったところで、ブラジルからサンプルが数枚到着。さらに英スターンズとワールド・ミュージック・ネットワークの新入荷商品が明日届くことになったらしい。それらの紹介は、残念だけど来年回しになってしまう。 ブラジルではアリ・バローゾの生誕100年を記念して、3枚組2セットのボックス・アルバムが発売されたようだ。バローゾといえば「ブラジルの水彩画」が世界的に有名だが、独特のポップ感覚を持った人で、ぼくはブラジルが生んだ最高の作曲家だと思っている。ノエール・ローザは伝説にはなったが、音楽的な貢献度ではむしろバローゾの方が上だろう。その主要作品をSP時代のオリジナル録音で楽しめるのだから、ファンとしては嬉しい。いまから聞くのが楽しみだ。 それにしてもブラジル人って不思議に几帳面だなあと思うのは、こういう何周年記念のトリビュート・プロジェクトに対してすごく熱心なところだ。バローゾは生誕100周年だけど、ヴィニシウス・ジ・モラエスの関係者たちはあと10年待てなかったのか、つい最近、生誕90周年アルバムを出している。そうそう、数年前のピシンギーニャ生誕100周年はけっこう盛大に祝われたようで、あの年から彼の誕生日は<ショーロの日>と命名された。 21世紀の最初の10年で、各国のポピュラー音楽が本格的に始動した時代に活躍した音楽家たちが次々と生誕100周年を迎えることになる。その中で、どの国のどの音楽家が正当な評価を得ることができるのか、注意深く見守りるのも面白い。その国の人々が、自国の音楽の歴史に対してどういう気持ちをもっているのか、ひとつの尺度になるだろう。 さて、来年は誰が100周年なのでしょう。 |
12月24日(水) また朝にトラブル発生。今日到着の予定だったブラジルからの荷物が、通関で予定以上に時間がかかってしまったらしく、まだ成田にあるとか。通関が終わったのが昨夜の8時だったのだそうだ。きっとクリスマス・プレゼントなどが多くて、税関に荷物がたまってしまったのだろう。でも、この荷物にはお店に年内納品をお約束したCDが多く入っているので、明日配送というわけにはゆかない。そこで仕方なく、特別に運送屋さんをチャーターして運んでもらうことにした。別料金がかかってしまうのはツラいけど、約束は約束。守らないといけない。今年はこういうことが何度あっただろうか。 というわけで、クリスマス・イブとか言って浮かれてる世間と、サンビーニャは別世界。今日も大忙しの一日だった。事務所の方は、遅れてやってきたブラジル盤の出荷。ぼくの方は昼間は解説書き。さらに夕方には年内に終わらせないといけない会社の事務仕事のための打ち合わせに出かけた。当社からはほど近い大宮駅前の喫茶店で打ち合わせしてのだが、話がだいたい終わったところで回りを見渡してみると、近くには若いカップルたちが、いかにもクリスマス・プレゼントという感じで、楽しそうに過ごしている。駅前のイルミネーションも今日は豪華だ。そんな中でまだ仕事をしている自分に、少しだけ寂しくなった。まあ、ぼくももう44歳。クリスマスにケーキ食べたいとは思わないけど。 そのせいだろうか、少しくらいはクリスマス気分を味わいたくなって、夜は山下達郎の例のアルバムを聞く。今年はクリスマス・アルバムを一枚も買わなかったが、こうも忙しいと何枚もアルバムを聞く時間はないので、ちょうどよかったかもしれない。先週買った白ワインをあけて、達郎さんの次は奥方の竹内まりやさんの新作を。さらにマリア・テレーザの新作を聞いたら眠たくなってきた。 さあ、明日は今年最後のリスト作成だ。 |
12月23日(火) 会計関係の雑務がいちおう終了。午後からは解説原稿書きとリストのための新作チェック。ただ、やはり体調がいまいちで、いつもよりもかなりペースが遅い。風邪は治ったようだが、しばらしく休んでないし、やっぱり疲れているのだろう。夕方には、仕事をあきらめ、気分転換に昨日タワー・レコード渋谷店で買ったCDをチェック。夜まであれこれCDを聞きまくる。 実は最近こっそりエチオピアという国に興味を持っていて、先週池袋に出た時にも本をいくつか買い込んだ。ぼくが気になっているのは、国の成り立ちとかで、音楽の方はあまり聞いていなかったが、昨日はこのあたりも少し購入。遅ればせながら聞いたギギも良いし、エチオピークの第17集も面白い。そして今日メールが入ってきたラフ・ガイド・シリーズの来年の予定にも、エチオピアものが入っているのでビックリ。どうもエチオピア音楽って、世界的に注目度が高まっているようだ。 世界でももっとも不思議な歴史を持つ国がエチオピア。音楽の方もそれと同じくらい異色だが、なんだか最近になって、その異色さの意味を本格的に知りたくなってきたりした。ただいま勉強中。ラフ・ガイド・シリーズのアルバムが出た時にでも、解説原稿で何か面白いことが書けたらいいのだが…。 明日は早く起きて解説原稿に集中しよう。ラスト・スパートだ。 |
12月22日(月) 早く起きて雑務を終わらせて、渋谷へ。ちょうど来日中のシティ・ヌールハリザがNHKのラジオ番組に出るというので、会いに行くことにした。シティに会うのも久しぶりなので楽しみだったけど、それより大事なのは一緒に来日しているスリア・レコードのタン社長との打ち合わせ。ずっと考えていた来年のプロジェクトに関して、タン社長とスケジュールの確認をした。 このプロジェクトについては、まだまだ秘密。本格的に動きはじめたらこのページでお伝えすることにしよう。 それより面白かったのは、Dさんとか、Oさんとか、シティに会いたいおじさんたちがスタジオに駆けつけて、サインをもらったり、一緒に写真をとったり、大騒ぎだったこと。Oさんなんて、会社休んで来ちゃったんだから、スゴい。ラジオの収録よりも、記念撮影が一番盛り上がっていました(笑)。 そのOさんと、新宿で一杯。鳥花の鳥刺しは、いつ食べても美味しいし、麦焼酎『中々』とのコンビネーションが抜群だ。昨日よりも体調は良いみたいで、話が盛り上がる。 |
12月21日(日) 昨日に続いて、今日も良い天気。日がくれたら寒くなるに決まっているので、暖かいうちに買い物をすませることに。1週間分の食料を買い込んで、今日の晩御飯のおかずを考える。本当は鍋を食べたかったけど、ひとりで食べても寂しいので、おでんを作ることにした。ただ、おでんは少しばかり作っても上手くないし、1回作ると3日分くらい出来ちゃうのか困りもの。明日も明後日も食べないといけない。やっぱり飽きちゃうかなあ…。 午後から解説原稿書き。でも、昨日に続いて、今日もペースが遅い。世間では風邪が流行っているようだけど、ぼくも風邪気味のようだ。 |
12月20日(土) 昨晩はさすがに疲れていたので、夜9時に就寝。しっかり熟睡して、朝から解説原稿書きをスタートさせた。ただ、いつもははかどる休日の原稿書きなのだが、今日はどうもペースが遅い。身体がダルく感じるのは、疲れているのだろうか。 夕方は久しぶりに家庭料理のお店へ。でも、なぜかお酒が美味しく感じられないので、今日は早めに帰宅して寝ることにした。 |
12月19日(金)番外編 2003年ベスト10 BY 田中勝則(オフィス・サンビーニャ) 竹内まりや/ロングタイム・フェイバリッツ(ムーン) ハワイアーナ ボサ・ノーヴァ・スイート(アトン) GNAWA DIFFUSION/SOUK SYSTEM(WARNER) MARIA TERESA/O MAR...(LE CHANT DU MONDE) FESTIVAL IN HAVANA(MILESTONE) ケケレ/コンゴ・ライフ(ライス) ミュニール・ヌーレッティン・セルチューク/トルコ声楽の至宝(ライス) キューバ音楽の真実(ライス) エンリッキ・カゼス・アプレゼンタ・ショーロ歴史物語(ライス) ニーニャ・デ・ロス・ペイネス/フラメンコの女王(ライス) FOREST BEATに今年のベスト10を発表する、なんてことを飲み会で約束してしまったらしく、仕方ないから選ぶことに。音楽評論家をやっていた時代は、常に年末のベスト10がアタマにあったから、面白いアルバムを聞くたびにリストに入れていたが、いまはそんなことはまったく考えていない。おかげで選出にあたってはけっこう悩んだ。 悩んだ一番の理由は、自社商品をどこまで入れるか、ということ。結局、前半の5枚が他社商品、後半の5枚がサンビーニャ商品になったけど、他社ものだけで選んだら、もっと変わったものが入って、見ている側からすれば面白いベスト10になったかもしれない。ただ、自社商品とくらべてどっちを聞いたかと言われると、やっぱり聞いた回数では、自社商品のが多い。というわけで、まあ半分ずつくらいがいいのだろうとした次第。 竹内まりやとハワイアーナは、今年のぼくの最高の癒し系。両方とも、仕事に疲れた時に自宅で静かに聞いた。実は竹内まりやは、最近出たばかりのベスト盤『インプレッションズ』も毎日聞いているが、ここではその前に出て、やはり聞きまくった力作の最新録音を入れた。またハワイアーナは、当社でもアルバムを出している山内雄喜さんのプロジェクトだが、山内さんがこんなアルバムを作れるとは、ぼくも思わなかったので、入選。最初は驚きつつ、だんだんと愛聴させていただいた。年末にやっと買ったポルトガルのマリア・テレーザも、コンゴのケケレも、やはり癒し系だし、今年のぼくはいつも疲れていたのかもしれない。 今年、一番体力を使ったのは、ライスの復刻シリーズの制作。特に『キューバ音楽の真実』とミゲリート・バルデース『アフロ・キューバンの魔術師』は、中村とうようさんの選曲/解説。せっかくとうようさんがやってくれる仕事なので、しっかりしたものと作りたいと思い、ぼくも裏方として頑張った。疲れたと言っても、これは心地よい疲れ。アルバムが世に出た時には、本当に嬉しい気分を味合わせてもらった。 それくらべたら、自分でやったニーニャやショーロ歴史物語、トリオ・マタモロスなどは、気軽に作れた方かもしれない。ただ、ショーロの歴史ものは世界初だし、ニーニャのアルバムだって、解説も含めて、フラメンコ専門家には絶対に真似のできない、ぼくならではの内容になったと自負している。機会があったら、濱田滋郎先生の感想もお聞きしたいものだ。 今年の大ビックリ大賞は、なんと言ってもハニーン。あれがなかったら、サンビーニャのアラブ音楽シリーズも生まれなかったかもしれない。ここでは入選できなかったけど、ぼくにアラブ音楽をもう一度聞こうと思わせてくれたアルバムだけに、忘れられない。おかげで今年は、いままでの人生で一番アラブ系の音楽を聞いた年だった。そうしたら、イラク情勢がますます気になってきた。 グナーワ・デフュージョンはやはり極上の内容。モロッコ音楽はこれからも目が離せない。また、ポルトガルのマリア・テレーザとギリシャのヨルゴス・ダラーラスは、年末になってエル・スールで買った。ダラーラスは落ちてしまったけど、癒し系を求めるぼくらからマリア・テレーザになってしまっただけで、内容そのものはダラーラスの方が上かもしれない。 また当社でぼくが編集をしたアルバムを出しているセプテート・ナシォナールのリーダー、イグナシオ・ピニェイロが1950年代に作った名盤『フェスティヴァル・イン・ハヴァナ』と同様、本当はサンビーニャで出したいくらい、すばらしい内容だ。これらを日本盤を出そうという会社があったら、これまでの禁を破って、ぼくが解説を書かせてもらってもいいとすら思った。 タワー渋谷店の小樋山さんの話によると、来年はトルコが来るのだとか。当社としては嬉しい話だけど、あまりアテにしてもしょうがないので、過大な期待は抱いていない。当社は、これまでと同様、どんな音楽が来ても、自分のペースを守るつもり。自分が本当に良いと思う音楽を収録した自社制作盤を、今年以上に多く出してゆきたいと思っている。また来年は、久しぶりに自分のプロデュース盤も作るつもり。こちらも期待してください。 2004年もサンビーニャをよろしくお願いします。 番外編でした。 |
12月19日(金) 昨夜はエル・スールで原田さんと打ち合わせ。少しだけ飲んで、終電で帰るつもりだったのに、結局朝まで飲むことになってしまった。原田さん、ぎっくり首?で大変そうだったのに、飲み出したら痛くなくなったのだとか。本当に大丈夫だったのか、ちょっと心配です。ぼくの方も朝まで飲むなんて日常的にやってないので、後半は眠たいのなんの…。始発に乗ったのに、寝てしまって乗り越してしまい、戻った電車でもまた寝て、乗り越して、結局帰宅したのは朝の8時。それから2時間だけ寝て、10時には起きて仕事をはじめた(実はある人からの電話で起こされました)。 昨日の原田さんとの話は、再び今年の総括。当社で発売している商品を一番多品目に渡って売ってくださっているのがエル・スールさん。当然、当社の商品についても聞きたいことは多いし、話しはじめると長くなる。また当然、当社以外の会社から出て内容が良かったものも原田さんはよくご存知なので、それらのチェックもさせてもらった。2003年は、あまり収穫のなかった年かと思っていたが、どっこい、頑張って良いアルバムを出している会社は、まだまだたくさんある。持っていなかったもののいくつかを、さっそく購入させていただいた。 お店の商品を見ていて気がついたことがひとつ。当社が数年前にやりはじめたオビ付き商品を、いくつかの会社がマネしていることだ。キング・インターナショナルまで似たようなことをやっているのだから、ビックリだ。ひとつの方法が成功すればみんながマネするのは仕方ない。それがあまりに多くなってきたら、当社もまた新しい方法を考えるだけだ。来年あたりが、そんな新しい方法を考える年になるのかもしれない。 朝まで飲んでいたのだから、今日は仕事の能率が上がるわけがない。起きてから、解説原稿をやったりしたが、ペースはかなり遅い。事務所には、トラブル続きで遅れまくったブラジル盤がやっと到着。出荷できることになった。もう次の荷物が月曜日に来てしまうというのに。困ったものだ。 昨日エル・スールで買ったマリア・テレーザが、良い。夕方から、こればかりを聞き返すことに。まさにファドに対する新しいアプローチ。それを力まず、自然体で試みているところに感心した。実はこのところ、こっそり聞いているのが、ポルトガル音楽だっただけに、この出会いは嬉しい。今年はニーニャ・デ・ロス・ペイネスを制作したこともあって、スペイン音楽をたくさん聞いた年だったが、来年はお隣のポルトガル音楽について考えることになりそう。イベリア半島の音楽は、20年以上前から聞いているのに、まだまだわからないことが多い。興味がつきない。 |
12月18日(木) 今日も早起き。朝から経理関係の書類の整理。それからリスト原稿の続きを書いて、さらに解説原稿へ。今日はトルコ盤がまとめて入ってくるので、入荷するデニズ・ゼキのアルバム解説を書いておかないと。今週もあと今日と明日だけなので、焦ってしまう。明日は久しぶりに休むつもりでいたけど、まだやり残したことが多いので、たぶんダメだろう。土日も仕事だし、ひょっとして年末まで休めないのかも。 ジャマイカ音楽のポートレイツというDVDを見る。リストで紹介するためだが、これがめっこう面白くて、結局最後まで見てしまった。レゲエの歴史を紹介したフランスのテレビ番組をDVD化した1本で、ちょっと教養番組っぽかったりするが、それでも貴重映像がいっぱい入っていて、つい引き込まれてしまう。62年にスカで踊るジミー・クリフなんて、スゴい映像も含まれているのだから、侮れない。 ここで思い出したことがひとつ。ぼくがレゲエを熱心に聞いたのは1970年代後半。当時ぼくはまだハイティーンだった。世界デビューしたボブ・マーリーが話題になりはじめ、なぜかジミー・クリフがいきなり来日。輸入盤店にはイギリス盤にまじって、ジャマイカ盤も少し入りはじめた頃だ。ぼくは渋谷公会堂にクリフの公演を見に行った。あれは1976年だ。その時にはすでにマーリーもクリフもLPを持っていたし、渋谷シスコでジャマイカ盤のカウント・オッシーを買った記憶もあるから、いま思えばマセた17歳だったと思う。 で、ここでよく考えてみたのだが、レゲエに関心があったのはこの時点まで。ということは、大人になってから、この音楽をまともに聞いていなかったことになるから困ったものだ。レゲエなんて、すっかりわかった気になっていたが、これじゃ全然アテにならない…。 しかし、ぼくは多感な高校時代に、すごく幸せな思いをしてきたと、つくづく思う。だって、クリフは見たし、エリゼッチ・カルドーゾの初来日公演(これも76年)も見たし、ファニア・オールスターズだって横浜で見た(やっぱり76年!)。ついでにライトニン・ホプキンスの公演だって見た。さらにボブ・マーリーの中野サンプラザ公演なんて、前から3列めで見ているし、ライ・クーダーだって、ニール・ヤングだって、初来日から見ている…。 こんなに幅広い音楽を高校生のガキが知っていたのは、『ミュージック・マガジン』のおかげだろうけど、それでも信じられないのは、そんなにも熱心に雑誌を読み、レコードを買い、コンサートに行っていた自分自身だ。当時ぼくは陸上部に所属して長距離をやっていたから、毎日夕方まで練習して、ヘトヘトになって帰宅していたはずだ。日曜日だって試合があったから、そうは休めなかっただろう。そんな中で、いつ雑誌を読み、レコードを聞き、コンサートに駆けつけていたのだろう…。きっと寝る間を惜しんで、たまには学校サボッて、必死に音楽と接していたのだと思う。だとしたら、いまよりもずっと忙しい音楽生活を送っていたのかもしれない。 もうひとつ、どうしてもよくわからないのが、どうやってレコードやコンサート・チケットを買っていたのかということだ。ぼくと同世代の人だったらわかると思うけど、当時は余程のお金持ちは別にして、親がたくさん小遣いをくれる時代ではなかった。でも、当時のジャマイカ盤なんて、そんなに安かったとは思えない…。きっともう忘れているだけで、どこかでこっそり悪いことをしていたのだろうか…。 聞いたレコードや見れたコンサートのことはこと細かく覚えているのに、都合の悪いことはまったく記憶にない。人間というのは、都合よくできているものです。 なあんて、今日はレゲエなんて音楽に久しぶりに接したせいで、思い出話ばかり。つまらないことを書いてしまってすみませんでした。これから、もう一仕事して、夜はエル・スールに行って原田さんと打ち合わせの予定。もう少し、頑張ろう。 |
12月17日(水) 今日も朝からブラジル盤のトラブル。6個口しか出なかったブラジル盤が、日本に来る途中、アメリカの荷物乗せかえで再び5個と1個に分かれてしまったらしい。なんとか明日には持ってきてもらえるようだが、こんなことが続くと困ってしまう。ブラジルからの輸送方法を開拓した、なんて昨日の日記に書いたけど、それだってたまには機能しないこともある。まあ、これがブラジル。すべてがスムーズにゆくようなら、もう王手会社がブラジル盤輸入に手を出しているわけで、こういうことが起こて面倒くさい国相手だからこそ、うちみたいな零細企業でも頑張れるのです。そう考えると、ブラジルにはこのままでいてもらった方が良いということになるわけだが…。ああ、胃が痛い…。 そんなわけで、明日やるべき仕事を今日のうちにある程度片付けておかないといけなくなったので、とりあえず全員でリスト原稿の準備。今回は、いつもはぼくが担当していた仕事のうち、ライス盤のリスト原稿を昌くん、サンビーニャ盤のひとつを宮川くんに書いてもらった。ともにリストだけでなく、アルバム解説も書くようなので、楽しみだ。ちなみに宮川くんはこれが解説デビューになる。セルジオ・メンデスのベスト編集盤がサンビーニャ印でお店に出たら、チェックしてあげてください。なあんて、まだ書く前からこんなことをお知らせちゃったら、本人にプレッシャーがかかっちゃうかな。 ぼくの方は朝からひたすら解説書き。そして残りのリスト原稿。これが終わったら、来年出るアイテムの校正の残りもやらないといけない。今日も相変わらず大忙しです。 |
12月16日(火) 朝からトラブル発生。金曜日にリオを出たはずの荷物が、サンパウロで止まってしまった。理由を調べたら、本当は8個口だったのに、リオで6個しかピックアップされなかったのだとか。信じられないミスだけど、そういうことが起こりうるのがブラジルだ。起きてしまったら、仕方がない。あとは飛ばなかった2個に重要な商品が入ってなかったことを願うばかりだ。 当社がブラジル盤の輸入をはじめたのは会社がはじまった6年前。でも、最初の頃はお店からほとんど注文をいただけなかった。理由はひとつ。商品が入ってくるのが、他の業者さんよりずっと遅かったからだ。それをなんとか対等に、あるいはより早くできるようになったのは、3年前くらいだろうか。実は当社のブラジルにおける取り引き先は、最初からCD輸出会社ではなかった。ぼく自身が会社の設立に立会い、素人がゼロから学習した。それだけにスムーズに仕事ができるまでには時間がかかったわけだが、でも逆にいまとなっては、他人が作ったシステムの上で仕事をしているわけではないだけに、さまざまな面で順応性が高いなど、利点もある。インディ系レーベルも他社より数多く取り扱えるようになったし、毎週荷物を飛ばしてもコスト的に問題がない方法も開拓した。毎週入荷があれば、バック注文に対する対応も早い。当社がお店から注文をいただけるようになったのは、そんな状況が整ってからだ。 とかなんとか言いながらも、今日のようなミスが起きるのだから、どこかに気の緩みがあるのだろう。ブラジル音楽の日本における需要は、昨年よりも下がってきているようだが、それでもまだまだファンは多い。今後もより良い方法を常に考えて、いま以上にスムーズに供給にお応えできるようにしたい。 今日はそんなトラブルもあったが、他の仕事は順調。朝のうちに経理仕事を終わらせて、午後には税理士さんに手渡し。さらに解説も1本書いて、来年リリースの商品の校正もやった。事務所の方には、来週リリースのダブルムーンの商品が到着。あとはサラーム海上さんの解説原稿を待つだけだ。海上さんは木曜日の早い時間までに仕上げてくれるそうなので、楽しみにしています。 |