来日する美しきファドの新星
ライスから紹介されたジョアナ・アメンドエイラをはじめ、いまのポルトガルのファド・シーンには新しい世代の歌手たちがたくさん登場してシーンを盛り上げています。偉大な女性歌手アマリア・ロドリゲスが亡くなった1999年以降、ポルトガルを代表する音楽ファド・シーンは大きく変わりました。
そんな新世代ファドにおいて、大きく注目されている女性歌手がアナ・モウラ。そんな彼女が今回新作を発表し、さらに10月にははじめての来日を果たしてくれることになりました。
アナ・モウラは1979年生まれ。ハイティーンになった彼女はバンドを組みロックやポップスを歌っていたそうですが、子供のころから親しんでいたのはファドで、20歳を過ぎてからはリスボンのファド・ハウス(生のファドを聞かせるお店)に出演してファドの修行に励むようになりました。
そんな彼女に目をつけたのが、新世代ファドを代表するプロデューサー/作曲家/ギタリストのジョルジ・フェルナンドです。アナ・モウラは彼の手でレコーディング・アーティストに成長。2003年にデビューを果たしてから今日まで、この新作を含めて3枚のアルバムを発表しています。
そしてその新作が、間違いなくこれまでの最高傑作。こんなすばらしい作品をひっさげての来日ですから、まさにグッド・タイミングです。
もちろん伴奏は正統派ファド。ポルトガル・ギター、ギター、そしてダブル・ベースといった伝統的なアンサンブルをバックに、アナ・モウラはコブシをたっぷり効かせた歌声を楽しませます。楽曲の多くは、プロデューサーでもあるジョルジ・フェルナンドによる新作ですが、伝統ファドに比べるとどこかポップで親しみやすいセンスも感じさせるのがこの人の特長。そんなジョルジさんならではの旋律をサラリと歌いこなせるのは、アナ・モウラがもともとロックやポップなどを歌っていたからかもしれません。
伝統派ジョアナ・アメンドエイラに比べると、少しだけポップな香りを感じさせるアナ・モウラ。そういう意味では、これからファドを聞いてみようという初心者のファンにもお勧めしやすいかも。いよいよ秋が深まる10月の発売ですので、今年の秋もファドにじっくり浸ってみてください。
なお初々しい歌声がすばらしいファースト・アルバム(2003年作)と、女性らしいしっとり味が出はじめた2作目(2005年作)も、来日を記念して同時発売されます。